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背景にあの巨匠も? 『タイガーセブン』『風雲ライオン丸』はなぜ特撮のお約束を破ったのか

マグミクス / 2024年7月1日 7時10分

背景にあの巨匠も? 『タイガーセブン』『風雲ライオン丸』はなぜ特撮のお約束を破ったのか

■変身ヒーローの「型」にケンカを売った脚本家?

『風雲ライオン丸』と『鉄人タイガーセブン』といえば、「『戦いになるといつも逃げている』と仲間から非難される」「悪との戦いのなかで子供が巻き添えになる」「主人公が戦いに嫌気がさして逃亡」など、『ウルトラマン』や『仮面ライダー』といった変身ヒーローものの暗黙のルール、「お約束」から外れた作品です。

 その2作のメインライターを務めたのは高際和雄さんで、彼の師匠は『北の国から』『前略おふくろ様』などを手がけた、巨匠脚本家の倉本聰さんでした。『風雲ライオン丸』や『タイガーセブン』のやりきれない展開は、リアルな作風で知られる倉本さんの大きな影響があったようです。

 倉本さんの作風は『北の国から』に代表されるように、決して予定調和に流されず、ときにはキャラクターが苦い挫折を味わい、まるで登場人物が実在しているかのようなリアリティがあります。多くの視聴者の胸に刺さる名作ドラマが生まれたのは、ご存じの通りです。

 高際さんは、倉本さんの口述筆記を担当し、彼の作劇術をごく間近で見ていました。その倉本さんの影響を受けたであろう高際さんは、その手法を特撮ヒーローものに持ち込んだのでしょう。

 書籍「快傑/風雲ライオン丸 ピー・プロ70’sヒーロー列伝2」の高際さんのインタビューによると、彼は子供の頃から街頭テレビの力道山のプロレス生中継で、「放送時間内」に空手チョップで勝負が決まることに疑問に思っていたそうで、それが従来通りではないヒーローの描き方につながったようです。さらに特撮ドラマの「お約束」で触れられない部分を描いた理由に関しても、以下のようにコメントしています。

「意識的に『裏っ側』を引っ張り出そうっていうのがあったんですよ。『なんで約束事で全部チャラにしちゃってんだ?』っていうのがありました。変身ものの『約束事』みたいなものがあるじゃないですか? 『どうして触れないんだろう?』と」

 高際さんの考えに共鳴したのが、『風雲ライオン丸』『鉄人タイガーセブン』のメイン監督だった大塚完爾さんで、「僕の回はあの方がよく書いてくれました。すごく人間ドラマっぽい作品が多かったですね。僕としては子供向け、大人向けという区別はなくて、ドラマを見せるということでは同じなんですよ」(同インタビューより)と語っています。

■お約束を破ったヒーローへの非難

雑誌「北の国から 全話収録 DVDマガジン(1) 2017年 3/14 号」(講談社)

『ウルトラマン』や『仮面ライダー』は、戦闘のなかに子供がいても、巻き添えにならない暗黙のルールがありますが、『風雲ライオン丸』や『鉄人タイガーセブン』の場合、子供も戦闘に巻き込まれて大怪我をしたり、悲惨な最期を遂げたりしています。

 また「ヒーローはけして悪との戦いから逃げない」というルールも破り、ライオン丸やタイガーセブンは、戦いに嫌気がさして途中で戦線離脱しています。

 ほかにも『風雲』では、長年父を探すために旅をしていたヒロイン「志乃」と弟「三吉」の父が敵に寝返り、敵組織の幹部になっていたという『スター・ウォーズ』における「ダース・ベイダー」に先駆けたような、ハードな展開もありました。

 最大のルール破りは、『鉄人タイガーセブン』の第19話「タイガーセブンの唄が聞える」です。これまでの変身ヒーローの主人公は、敵が現れたときに変身するため、姿を消しますが、それを周りの人は誰も気にしないというのがお約束でした。

 しかし、タイガーセブンに変身する主人公「滝川剛」は敵が現れた際に、必ず姿を消しているため、「高井戸グループ」メンバーの「北川」から自分の命惜しさに敵前逃亡をしていると責められます。剛はタイガーセブンの正体が自分とは言えないので、黙って耐えるしかありませんでした。

『風雲』『タイガーセブン』での高際、大塚コンビのラスト数話は、変身ヒーローの予定調和をかなぐり捨てた内容で、特撮ドラマ史に刻まれています。

(LUIS FIELD)

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