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『ガンダム』ドアンのザクは投棄してよかったの? 実はこれがGJだったといえるワケ

マグミクス / 2024年7月2日 6時25分

『ガンダム』ドアンのザクは投棄してよかったの? 実はこれがGJだったといえるワケ

■本当にザクIIの投棄は正しい行動だったのか

 TVアニメ『機動戦士ガンダム』の第15話に登場した「ククルス・ドアン」というジオン軍の脱走兵のことを覚えているでしょうか。2022年に、この第15話のエピソードをモチーフにしたアニメ映画『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』が公開されたことで、記憶に新しい人もいることでしょう。

 その映画版もTV版も共通して、ドアンの「ザクII」はアムロによって海へ投棄され、そして物語は幕となります。しかしアレって、本当に投げ捨ててしまってよかったのでしょうか。

 簡単に第15話「ククルス・ドアンの島」を振り返ると、主人公の「アムロ・レイ」はある島で、少女の「ロラン」および3人の子供たちと一緒に暮らしているジオン軍の脱走兵「ドアン」に遭遇、そこへジオン軍が襲来し、ドアンの戦いを目の当たりにする、というお話でした。

 地球連邦軍のアムロと元ジオン軍のドアンが心を通わせる場面や「ザクII」同士の戦いは、個人的にも強く印象に残っています。

 しかし、当時この第15話を視聴した後に、ひとつだけ疑問の残ったシーンが、上述したザクIIの海洋投棄です。終盤でアムロは、ジオン軍の追っ手を危惧するドアンに対し、「あなたの体に染みついている戦いの臭いが追跡者を引きつける」「それを消させてください」といい、自身が操縦する「ガンダム」で彼のザクIIを海へ放り投げたのでした。

 物語においては、ドアンはアムロを責めることなく、子供たちに「あのお兄ちゃんがやったことはとても良いこと」と伝えていることから、ドアン自身も納得の顛末だったことがうかがえます。しかし、ここで「またジオン軍の追っ手がやってきたらどうするの?」と危惧した視聴者は、筆者だけではないでしょう。

 果たして、アムロの取った行動は正しかったと言えるのでしょうか。

 第15話における状況を整頓してみましょう。アムロはドアンたちがいる島にやってきた時、ドアンのザクIIを見て「ここはジオンが完全に制圧しているところじゃないはず」と発言しています。

 また、物語冒頭でガンダムの空中ドッキング訓練を行っていたアムロが、連邦機の救難信号に対応するため、そのままコアファイター単機で島へ向かうという一連のシーンには、「ホワイトベース」のブリッジを含め、敵を警戒した様子は感じられませんでした。よって島周辺は、ジオンの制空権下ではなかったことがうかがえます。

 そして、ドアンの「いずれジオンの連中がここを見つけ、私を攻撃してくるだろう」というセリフや、島の暮らしぶり、島の様子から察するに、ドアンに勢力圏や制空権といった全体の戦況を知る手段はないと考えるのが妥当です。またこのセリフは、そうした情勢を知らないがゆえの、ジオンの追手を警戒してのセリフと理解することができるでしょう。

■ジオン軍はドアンなんて眼中になかった?

映画版『ククルス・ドアンの島』の舞台である島のモデル、北大西洋カナリア諸島のアレグランサ島 (画像:Daniel Schutze, Public domain, via Wikimedia Commons)

 そうしたなか、ジオン軍の偵察機「ルッグン」に「ザクII」がぶら下がってやってきて、前ぶれも警告もなく、下着姿のアムロと子供たちに攻撃を仕掛けます。

 この状況を整理すると、つまり彼らは前もって、下着姿の少年と幼い子供たちが敵性勢力であると認識していたことになります。元々が無人島であることとあわせ、これには「ドアンとそのザクの所在をジオン軍が把握していて、一味と見て攻撃してきた」「そもそもアムロがこの島にやってくるきっかけとなった、連邦軍機のSOSをジオン軍も受信し、連邦の者という認識のもと攻撃してきた」という、ふたつの可能性が考えられるでしょう。

 ではなぜルッグンは、わざわざザクIIをぶら下げてやってきたのでしょうか。前者の場合、特に説明は不要でしょう。後者の場合は、島に連邦の戦力があると想定したジオン軍が、戦闘になることを見越していたから、と説明できます。

 ここで、ドアンの「いずれジオンの連中がここを見つけ、私を攻撃してくるだろう」という発言を改めて振り返ると、つまりそれまでジオンの手の者が島にやってきてはいないと見ることができるでしょう。作中においてドアンは、レーダーのようなものを駆使して警戒している描写もあるため、偵察機の1機でも飛んできたことがあるのであれば、そのようなセリフは出てこないはずです。

 ここまでをまとめると、やはりルッグンとザクIIの襲撃は、連邦軍機のSOSを受けてやってきたと見るほうが妥当ではないでしょうか。そうすると、つまりジオン軍は、これまでドアンとそのザクIIの所在を把握していなかったということになるでしょう。

 ではジオン軍に、ドアンやそのザクIIとの戦闘を経て、その所在を把握した可能性はあるのでしょうか。

 これについては、上述したように、襲撃した島に連邦の戦力があったと想定していたとしても、ドアンのザクIIの存在に関しては予期せぬ事態だったはずです。また交戦しただけで、パイロットがドアンであることや、ドアンが持ち出したザクIIであることを把握するのは困難でしょう。さらに連邦機とともに襲ってきたので、ジオンのパイロット側からすれば「連邦が鹵獲(ろかく)したザクII」と判断するのが妥当です。仮に「ドアンが持ち出したザクII」と把握し、ドアンたちに撃破されるまでの間に報告していたとしても、ジオン軍は連邦軍が鹵獲した機体と判断するでしょう。

 よってこの後、ジオン軍が島にやってくる可能性については、「極めて低い」と考えられます。「ジオンの勢力圏下ではない」ことに加え、「連邦機が救難信号を出す」といったことから、島やその周辺に連邦軍の拠点があるとも考えられません。

 さらに数週間後には一大反抗作戦「オデッサ作戦」が始まるため、そのあととなると、もはや戦略的に重要とも思えない島に用はないでしょう。こうしたことから、ドアンは「ジオンの追跡から逃れることができた」と考えられます。

 一方で、連邦軍は敵性戦力ではないとしても、自身の掌握下にない兵器であるザクIIの所在を把握したことになります。もしアムロがドアンのザクIIを放置したとすれば、いずれ連邦から何かしらの手が回る可能性が高いでしょう。アムロがそこまで考えてザクIIを海に投げ飛ばしたのか否かは分かりませんが、どちらにせよ投棄したのは、賢明な判断といえるのではないでしょうか。

 第15話はこのあたりで幕となります。その後のドアンのことを少し考えてみましょう。

 ドアンは「ジオン軍の脱走兵」ではあるものの、連邦軍がこれについて何かしら問うことはできないでしょうし、いざとなれば「亡命」という手段もあるはずです。よって、一年戦争後の「ジオン共和国」における「軍」がどのような体制であろうとも、「脱走兵」という罪についてはこれ以上、追求されることはなさそうです。

 一方で「脱走兵」であるがゆえに、懸念される点もあります。それはアムロが島に向かうきっかけとなった、救援信号を発した連邦軍の軍人ふたりのことです。

 恐らく戦闘に発展したことで、ドアンは彼らを生かしたまま、戦闘機のシートに縛りつけたと見られます。その後、ふたりの軍人は死んだようにも見受けられました。「戦争における戦闘行為」なのか、脱走兵であるため「私闘」になるのか、後者であれば罪に問われるかもしれません。

 ただ、最後の大団円な様子から、もしかすると、連邦軍の軍人ふたりは無事だった可能性もあります。子供たちの親を殺してしまった贖罪を背負ったドアンのことを考えれば、お咎めなく彼の人生を全うしてほしいと、いちファンとして思うばかりです。

(LUIS FIELD)

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