おおらかな時代だから許された? 昭和マンガに登場した「ファミコン」のトンデモ設定
マグミクス / 2024年7月2日 21時25分
![おおらかな時代だから許された? 昭和マンガに登場した「ファミコン」のトンデモ設定](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_240992_0-small.jpg)
■常軌を逸したゲームの必殺技や特訓!
「ファミリーコンピュータ」(以下、ファミコン)は1983年に発売され、家庭用ゲーム機として広く普及しました。社会的な大ブームになるほど盛り上がりを見せたファミコンは、マンガ作品にも進出しています。子供たちの関心を引くために、作中にファミコンや実在するソフトが登場することは珍しくなく、主人公が人間離れのワザでゲーム対決を制するというのが定番の流れでした。
ファミコンが登場する有名な作品といえば、1979年から1983年まで「月刊コロコロコミック」(小学館)にて連載された、元祖ゲーム攻略マンガ『ゲームセンターあらし』(作:すがやみつる)は外せないでしょう。主人公「石野あらし」はインベーダーキャップや出っ歯がトレードマークの少年です。天性のゲームの才能があり、次々と登場する強敵と対戦しては勝利します。
ファミコンが発売する前の連載だったため、作中で描かれたのは主にアーケードゲームでした。例えば『スペースインベーダー』や『ムーンクレスタ』、『平安京エイリアン』などが挙げられます。ほかにも、ファミコンでもおなじみの『パックマン』や『ドンキーコング』も登場しました。実在するゲームの登場に、興奮した子供たちも多かったことでしょう。
見どころは、あらしの必殺技です。ゲームの操作でありながら、アクロバットな動きが多いのが特徴です。例えば「月面宙返り」は空中で回転しながらゲーム機のレバーを操作します。「エレクトリックサンダー」という、手のひらをこすり合わせて電気を起こし、ゲーム機を狂わせるという人間の域を超えた必殺技もあります。バトルマンガであり、次から次へと現れる強敵を乗り越えるために、新たに生み出した必殺技を繰り出すのも同作の魅力でした。
回を増すごとに、あらしが戦う相手のスケールが大きくなっていき、最終巻では巨大な「キンチャンコング」、太陽を覆った火山灰、そして、最終話で知能を得た恐竜と対峙します。最終話においては、未来人を助けるために、恐竜とインベーダーでのバトルを繰り広げました。結果的に勝利を収めて、未来人とともにゲームを通して真の平和と友情を伝えるため宇宙に旅立つという、壮大なラストで幕を閉じるのでした。
ほかには、1985年発売のファミコン用レースゲーム『マッハライダー』が登場した『ブラボー! ぼくのファミコン』(作:うえやまとち)という作品もあります。同作は「月刊少年マガジン」(講談社)1986年2月号に、読み切りとして掲載されました。
ストーリーは王道の展開で、『マッハライダー』に出会った主人公が特訓をし、ライバルとの対戦に勝利するという流れです。特徴的だったのは、その特訓方法です。主人公はゲームプレイ中の操作の精度を上げるため、ファミコンのコントローラーの下に「イクラ」をしきつめ、つぶさないで操作できるようにするという常軌を逸した特訓をしていたのです。作者のうえやまとち先生は料理マンガ『クッキングパパ』も手がけているので、食べ物から着想を得たのでしょうか。
■ほぼ『北斗の拳』…ファミコン本体を武器にした主人公
著:あさいもとゆき『ファミコンロッキー』
ファミコンが大ヒットして、多くの子供たちがゲームに熱中するなかで、「裏ワザ」が広まることもありました。単なるバグや、開発者が意図的に盛り込んだ裏ワザもありますが、いわゆる「デマ」だったケースも少なくありません。
1980年代に「月刊コロコロコミック」や「小学5年生」(小学館)で連載されたゲームマンガ『ファミコンロッキー』(作:あさいもとゆき)は、実際には存在しない架空のワザが描かれていました。内容はゲームマンガならではの王道展開で、ファミコンロッキーこと「轟勇気(とどろき ゆうき)」がゲームを通じて強敵たちとバトルを繰り広げます。
架空のワザの例を挙げると、『F1レース』(1984年発売)において、勇気が「ゲーム拳・必殺五十連打」を出したことで、車のスピードが音速を超えました。ほかにも『エキサイトバイク』(1984年発売)では、倒れているバイクを踏み台にしてジャンプします。また、『スパルタンX』(1984年発売)では「24周」クリアすると、恋人の「シルビア」が襲いかかってきたり、『ゼビウス』(1982年発売)で1000万点を超えると敵の大群が登場したりなど、実際には存在しない裏ワザや裏設定がいくつも描かれたのです。
当時の子供たちは、本当にある「裏ワザ」だと信じてしまい、条件達成まで険しい道のりながらも、懸命にプレイし続けたこともあったそうです。
「ファミコン本体」を武器として登場させた『最強挙士伝説 ファミコマンドー竜』(作:安田タツ夫)の存在も忘れられません。1986年発売のマンガ雑誌「ファミコミック」(大陸書房)に掲載された作品です。
物語の舞台は、20XX年の核戦争後の世界で、ファミコンゲームの優劣によって厳しい身分制度がしかれていました。そこに登場するのが、左肩にたくさんのファミコンの本体やコントローラーをぶら下げた「ファミコマンド竜」です。竜は、人びとを支配するラスボス「マッド・グロス」と戦います。この設定にピンときた人もいるかもしれません。『北斗の拳』の設定と酷似しているのです。
竜はグロスとの戦いで、大量のファミコンを投げつける「爆裂ファミコン」、高く飛び上がって蹴りを繰り出す「ファミ魂殺法 牙竜乱激打」といったワザを披露し、勝利します。そして竜は、ファミコンゲームの楽しさを伝えるために旅立っていくのでした。ちなみに、作中にはファミコンのゲームをプレイする描写は一度も出てきません。
この『最強挙士伝説 ファミコマンドー竜』は、TV番組『トリビアの泉』でも取り上げられました。同番組によると、『ファミコマンドー竜』は、作者の安田タツ夫さんに出版社から「ファミコンを素材に使ったマンガを描いてほしい」と頼まれため、描くことになったそうです。やはり当時は、マンガのなかに「ファミコン」を登場させるだけで、子供たちから喜ばれたのでしょう。
(LUIS FIELD)
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