ゲームの「攻略本」が衰退したワケ いまは「ファンブック」的な本が増えている?
マグミクス / 2024年7月5日 21時25分
![ゲームの「攻略本」が衰退したワケ いまは「ファンブック」的な本が増えている?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_241186_0-small.jpg)
■攻略本が必須だった昔と今の違い
今でも書店に行くとゲームの攻略本を目にしますが、昔ほどの勢いはありません。なにせレトロゲームの攻略本はベストセラーになるほどだったのですから。
1985年発売の『スーパーマリオブラザーズ 完全攻略本』(徳間書店)は非常に売れ、当時の書籍ランキングのトップをとっています。ほかにもゲームの攻略本が売上トップにランクインすることがしばしあったほど、昔は攻略本の需要自体が大きかったのです。
前述のように今でもゲームの攻略本はありますが、さすがにそこまで勢いはなく、大作ゲームで発売される程度です。また、攻略本ではないもののファンブックならば発売されるケースもあります。
かつてはベストセラーだった攻略本はなぜ変わってしまったのか。
大きな要因として、まずは「レトロゲームには攻略情報が必要だった」ことが挙げられます。
昔のゲームは容量が少なく、それをいかに長く遊ばせるかが重要でした。数千円払って購入したゲームソフトをすぐにプレイし終えてしまっては、物足りなさが残るものです。しかし、たとえばアクションゲームでは大量のステージを入れることは現実的ではない。となると、難しくする必要があります。
もともとアーケードゲームの文脈(なるべくコインをたくさん入れてもらう)もあり、レトロゲームのアクションゲームは難しいものでした。『スーパーマリオブラザーズ』も今遊んでみるとかなり難しく、『トランスフォーマー コンボイの謎』にいたっては、初見プレイ時にはゲーム開始直後に殺されるような内容になっています。
もちろん、レトロゲームが難しいのはゲーム開発のノウハウが少なかったというのもあります。たとえば開発陣がテストプレイを繰り返すうちに慣れてしまい高難易度化に気づかないなど、調整もまだ洗練されていなかったといえるでしょう。やはり、基本的には「何度も挑戦してようやくクリアできる」ような作りになっていました。
なかには普通にプレイしてはクリア不可能なゲームもありました。『たけしの挑戦状』はあまりにも理不尽でしたし、『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』の謎解きも攻略方法を知っていなければエンディングを迎えるのは容易ではなかったでしょう。
こうなると、自然とゲーム雑誌や攻略本の情報が必要になってくるわけです。いわばゲームの参考書のようなもので、ゲーム自体がブームになったのもあり、それに伴って売れていました。
■今の時代、攻略本の需要は?
個人的に好きな攻略本『サガフロンティア 裏解体新書』。攻略情報のみならず、小説やコラムなどが載っていた。この書籍に載っていた小説は、後にリマスター版でゲームに逆輸入される(筆者撮影)
もうひとつの大きな理由は、やはり「インターネットの発達」でしょう。これは攻略本の性質を大きく変えました。
読者の皆さんも、ゲームの情報を知りたいときには攻略本を買うようなことはせず、インターネットで調べてしまうでしょう。実際、たいていのゲームはそれで事足りますし、マイナーなインディーゲームでも英語圏では情報が掲載されているほどです。
現在は企業が攻略サイトを運営しているほか、有志が集まって攻略情報を集めるWikiも存在していますし、数こそ減ったものの個人サイトが攻略情報を掲載していることもあります。そう、インターネットの出現により、お金をかけずとも攻略情報を見られるようになったのです。
さらにこれら攻略サイトは、紙の本と違って更新が可能です。仮に間違いがあったとしても訂正可能なうえ、ゲームのアップデートにも対応できます。もはや紙の攻略本には立つ瀬がありません。
ましてや攻略本の場合、ゲームメーカーのチェックが入ります。載せて欲しくない情報はカットされますが、インターネットを調べればゲームの解析情報も見つけることができてしまうため、もはや攻略としては情報的な優位もありません。
また、ゲームそのものも変化しました。昔のゲームは攻略情報が必要でしたが、親切な現代のゲームであれば特に何も調べずにエンディングまでたどり着けます。むしろ、誰でもクリアできることを美徳としているような作品すらあるのです。
あるいは自由度が高いオープンワールドRPGのようなゲームの場合、攻略情報はむしろノイズになります。プレイヤーが好きなように好きな場所へ行けばいいわけで、攻略本を見て効率的にプレイすることとは正反対な遊びなのです。
既存の攻略本にメリットがあるとすれば、オフィシャルアートやクリエイターインタビューを載せて、「ファンブック」のような作りにできることでしょう。もちろん、インタビューなどの情報はインターネット上に載せることも可能ではありますが、ファンブックとして扱えばきちんとした商品にもなるうえ、ファンアイテムにもなるメリットが出てきます。
ゆえに攻略本は衰退の一歩をたどり、ファンブック的なものが増えていると考えられます。たとえば直近であれば、2024年6月には『エルデンリング』のファンブックが発売され、『スプラトゥーン』は作品が出るたびにアートブックが出版されています。
このように攻略本は時代の流れに押されてしまっていますが、それでも魅力的なものでした。普通では見ることのできない没データが攻略本に載っていたり、ゲーム内ではただのテキストでしかない「エッチなみずぎ」(『ドラゴンクエスト』)のイラストを見ることができました。あるいは、『マザー2 ひみつのたからばこ』のように物語仕立てになっている凝った作品もあったのです。
一方で「この先は自分の目でたしかめてくれ!」と最後の重要な部分だけ攻略が載っていなくて憤慨したり、「源氏の小手」が盗めないのに盗めると書いていたり(「ファイナルファンタジータクティクス大全」)もしました。しかし、そうした体験も全部込みで、攻略本は強烈な思い出として皆の心に残っているのです。
(すすだま)
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