「今なら絶対コンプラに引っかかる」 昭和の「アウト」な過激ギャグマンガ
マグミクス / 2024年7月4日 20時25分
■不適切表現が続出するレジェンド漫画家の作品
今よりも過激な表現に対しておおらかだった昭和の時代には、驚くような作品も多々ありました。なかには内容ゆえに長期連載とはならず、読む機会にも恵まれないものの、読者の心に残り続けている強烈な作品もあるようです。
●『ウンコールワット』
『天才バカボン』や『おそ松くん』などを手がけた赤塚不二夫先生は、過去に「ウンコ」をテーマとする作品を描いていました。その名も『ウンコールワット』というギャグマンガで、「週刊少年ジャンプ」1974年5月13号に、「愛読者賞チャレンジ作品」として掲載されています。
あらすじはウン考学者の「クソ塚不二夫」が、ウンコジャ国の「ウンコールワット遺跡」を発見するという話です。作中には、名画「モナ・リザ」の上に大便を乗せた「レオナルド・ダ・ビチビチ画」、ピカソの「ゲルニカ」をもじって「ピクソ画『ゲリニカ』」といった架空の絵画が登場しました。
さらに作中には自身の作品『おそ松くん』をもじった『クソ松くん』も描かれ、扉絵には「クソウ天外!!大ばクソウ!!読めばウンコもおどりだすギャグソまんが決定版」という意味不明なアオリ文が書かれています。『クソ松くん』もテーマが一貫しており、言葉のなかに「クソ」が入っていたり、「頭にウンコを被らないと警察に捕まる」という設定になっていたりと、過剰なまでの「クソ描写」が登場しました。
ここまで「ウンコ」一本槍の内容は、今読むと逆に新鮮です。
●『イボグリくん』
お尻を突き出した独特のポーズで「死刑」と言うギャグも人気だった『がきデカ』の作者である山上たつひこ先生は、1975年からとにかく卑劣で狂った主人公を描いたギャグマンガ『イボグリくん』を手がけています。
同作は福井英一先生の柔道マンガ『イガグリくん』のパロディものと言われており、主人公の見た目もそっくりかつ両者ともに柔道が得意です。
そのイボグリくんはマンガのなかで、ヒロインやその兄の頭に大きな石を叩きつけたり、道端で会った顔なじみの男性をダイナマイトで殺害したり、女性を睡眠薬で眠らせて暴行してから裸の写真を撮ったり、決闘する相手を拳銃で銃殺したりと、数え切れないほどの残虐な犯罪行為を繰り広げました。
今では大問題になりそうな描写が連続する同作は、ネット上で今も語り草で「人によってはあまりのサイコぶりに引いてしまうと思う」「とにかく鬼畜すぎる」「最低だけどテンポよすぎて笑ってしまう」「劇画調の真面目な感じの絵柄とのギャップがヤバい」といった声があがっています。
●『狂人軍』
『怪物くん』『プロゴルファー猿』『笑ゥせぇるすまん』などで知られる藤子不二雄A先生(本名:安孫子素雄)は、藤本弘先生(後の藤子・F・不二雄)とコンビを組んでいた「藤子不二雄」名義時代の1969年に、『狂人軍』という、とにかく放送禁止用語が出てくる過激なマンガを単独で発表しています。
「少年チャンピオン」(現、週刊少年チャンピオン)で連載されていた『狂人軍』は、「狂った人間」たちによる、ナンセンスなギャグが繰り広げられました。冒頭では「人はみなおおかれすくなかれくるっているのだ(その後、放送禁止用語が入る)」と、「エイブラハム・ベートーベン」という架空の偉人の格言が紹介され、そこからとんでもない物語が始まります。
主人公のサラリーマン「丸目蔵人」は、会社をさぼった日にたまたま見かけた「狂楽園球場」に入り、「狂人軍」の「王選手」が打ったホームランボールが頭に直撃して、いったん死亡します。そして、発狂した状態で蘇生した彼は、死亡診断書を覆したくない医師に殺されそうになっていたところを王選手に救われました。
しかし、蔵人は王選手のホームランのせいで死にかけたことを知ると、感謝もせずに狂人軍への入団および4番を打つことまで要求します。その後の物語では、特に野球と関係ないナンセンスギャグが繰り広げられ、最終14話の「凶人軍」との戦いでは、火炎瓶を使って勝利して物語は終わりを迎えました。
また、発狂していた際の蔵人に服を奪われたことをきっかけに、丸目家に居候するもうひとりの主人公「キチ吉」(狂人軍ではピッチャー)も、犬の真似をして街を歩くなどおかしな言動をするキャラです。放送禁止用語がたびたび出てくるだけでなく、当時のプロ野球の読売巨人軍の選手をもじった名前のキャラも多数登場する攻めた内容ゆえに、現在に至るまで単行本化はされていません。ファンの間では「伝説のギャグマンガ」として語り継がれています。単行本化を望む声も多く、今後の展開が期待されます。
(LUIS FIELD)
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