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『愛の戦士レインボーマン』日本特撮史上、最も過激な悪の組織「死ね死ね団」とは?

マグミクス / 2020年2月26日 17時10分

『愛の戦士レインボーマン』日本特撮史上、最も過激な悪の組織「死ね死ね団」とは?

■インドの山奥で修行した正義の味方

 2020年2月26日(水)は何の日かご存知でしょうか? この日は作家・脚本家・作詞家・政治評論家……とマルチに活躍した故・川内康範氏(1920年~2008年)の生誕100年にあたる日です。川内氏は1958年にTV放送が始まった『月光仮面』の原作者として有名です。『月光仮面』は日本初のヒーロー番組でした。その後も、『七色仮面』『アラーの使者』『ダイヤモンド・アイ』『コンドールマン』など多くのヒーロー番組を生み出しています。なかでも1972年~73年に放映された『愛の戦士レインボーマン』(以下、レインボーマン)は、強烈なインパクトを当時の子供たちに与えました。

「インドの山奥で修行して~♪」と主題歌に歌われたように、『レインボーマン』の主人公ヤマトタケシ(水谷邦久)がインドの山奥で暮らす聖者ダイバ・ダッタ(井上昭文)のもと、過酷な修行を積むことから物語は始まります。もともとはプロレスラーになり、足の不自由な妹・みゆきの手術費を稼ごうと考えていたタケシだったのですが、師匠ダイバ・ダッタの教えに導かれ、人類愛に目覚めることでレインボーマンに変身する能力を身につけるのでした。

 タケシはサンスクリット語のお経を唱えることでレインボーマンに変身し、戦いに疲れるとナルコレプシー的に唐突に眠りに陥るという設定も斬新でしたが、レインボーマン以上に衝撃的だったのは悪の組織「死ね死ね団」です。このアナーキーすぎるネーミングの組織を率いたのは、ロマンスグレイの謎の紳士・ミスターK(平田昭彦)。ミスターKは第二次世界大戦時に家族を日本兵に殺されたことから日本人を憎むようになり、日本人壊滅を企むのでした。「黄色いブタめをやっつけろ」という過激な歌詞の団体歌「死ね死ね団のうた」を持つ、非常に恐ろしいヘイト集団、それが「死ね死ね団」でした。

■日本社会の弱点を突く巧妙な作戦

 ミスターKが考える作戦は、どれもリアリティーのあるものばかりです。まず「キャッツアイ作戦」では、キャッツアイと呼ばれる新しいドラッグを日本で流行させ、日本人全員を狂人にしてしまうことを企みました。タケシもキャッツアイを口にし、一時的に精神錯乱に陥ります。違法ドラッグの恐ろしさを、タケシは身をもって体感するのでした。

 続く「M作戦」はさらに巧妙です。「御多福会」なる新興宗教団体を立ち上げ、集まった信者たちにお守りの代わりに札束を与えたのです。実はこの札束は、「死ね死ね団」が作ったニセ札。日本中に大量のニセ札が出回ったことで、日本経済は破綻の危機に追い込まれます。M作戦のMとはMoney。日本人はお金が大好きなことを見抜いての作戦だったのです。

 さらにミスターKは「モグラート作戦」を実行します。地底戦車モグラートを使って、日本にやってくる石油タンカーや貨物船を次々と爆破していきます。また爆破事件を多発させることで、日本を国際社会から孤立させてしまおうという狙いもありました。エネルギー資源に乏しく、食糧も海外からの輸入に頼っている日本の弱点を見事に突いた作戦でした。

■子供心に焼き付いたセクシーな女性幹部たち

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「死ね死ね団」の魅力は、作戦の狡猾さだけではありません。ミニスカ姿の色っぽい女性幹部たちを、ミスターKはいつも従えていました。アダルトな雰囲気を漂わせるダイアナ(山吹まゆみ)、サイボーグ化された際に黒い涙を流したキャシー(高樹蓉子)、サディスティックな表情が魅力的だったロリータ(皆川妙子)、レインボーマンに倒された他の女性幹部たちの仇を討つために最後まで戦い続けたオルガ(藤山律子)。ミスターKの寵愛を受けようと、女性幹部たちは競い合い、また共闘してレインボーマンに立ち向かうのでした。悪女としての妖しい美しさと哀しみを感じさせた彼女たちも、忘れることができません。

 ミスターKと同様に、原作者である川内氏も謎めいた人物でした。太平洋戦争で亡くなった日本兵の遺骨回収のボランティアを長年行なっていたことから、佐藤栄作内閣をはじめとする日本の歴代政権と親交を持ち、無報酬で政治顧問を引き受けていました。また、1984年に起きた「グリコ・森永事件」の際には、「かい人21面相」を名乗って製菓メーカーを脅迫していた犯人グループに対し、子供たちをおびやかすような卑劣な行為は止めるよう週刊誌上で呼びかけています。

 この時、川内氏は借金して集めた1億2000万円を犯人グループに渡そうとしましたが、「かい人21面相」は「わしら こじきや ない 金 ほしければ 金もちや 会社から なんぼでも とれる」と川内氏からお金を受け取ることを断っています。数々の正義のヒーローを生み出した川内氏が、現実の犯罪者と対峙したことは大変な話題となりました。

■ミスターKとは何者だったのか?

 改めて『レインボーマン』を見返すと、やはりミスターKの存在感が際立っていることが印象に残ります。ミスターKの考案した作戦の数々は、今の日本社会でも充分に通用するものですし、実際に日本は経済不況、エネルギー資源の不足、国際社会からの孤立などの要因が重なり、無謀な太平洋戦争に突入したという経緯があります。

 ミスターKの「K」は、川内氏のイニシャルから付けられたものだと言われています。川内氏はミスターKという悪の仮面を被ることで、日本社会と日本人の弱点を公然と指摘し、二度と戦争が起きないことを願っていたのではないでしょうか。そう考えると、ミスターKが最終回で生き延びた理由も納得できます。日本社会に警告を発し続ける役割を、ミスターKは背負っていたのです。

 日本特撮ドラマ史上もっとも過激な悪の組織「死ね死ね団」は、平和であることに慣れすぎてしまった日本人に対して、逆説的に「生きる」ことの重さ、大切さを説いた存在だったといえそうです。

(長野辰次)

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