『レイアース』新作アニメが「原作に忠実」ならばいろいろ気になる「懸念点」とは
マグミクス / 2024年7月6日 6時25分
■27年ぶりの新作となる『魔法騎士レイアース』
『魔法騎士レイアース』、とても懐かしく、思い出が深いタイトルです。その、1994年に放送されたTVアニメのリメイクが発表されました。当時としてはまだ珍しい女の子たちだけの冒険やロボットへの搭乗、そして究極のどんでん返しといえる展開が、多くの人に新鮮な驚きと深い驚愕を与えた作品です。果たしてどのようなリメイクが行われるのでしょうか。
近年では『スーパーロボット大戦 T』に参戦し再び脚光を浴びたのも記憶に新しい本作、当時は「魔神」がなかなか出ないなーと、心の片隅で思いながらも光、海、風のファンタジックな冒険を楽しんでいたことを思い出します。
CLAMPによる原作マンガは、1993年から1995年にかけて月刊少女マンガ誌「なかよし」(講談社)で連載されており、ちょうど連載期間が被っていた『美少女戦士セーラームーン』(著:武内直子)と共に、楽しみにしていた読者も多かったのではないでしょうか。両作品とも男性人気が高かったため、今よりもオタクに対する視線の厳しい時代に勇気を出して「なかよし」を購入していた男性も大勢いたことを思い出します。
田村直美さんが歌い上げたTVアニメ前期オープニングテーマ「ゆずれない願い」はシングルCD120万枚以上を売り上げるヒット曲となり、NHK「紅白歌合戦」にも出場を果たしました。また音楽監修は「ドラゴンクエスト」シリーズの故 すぎやまこういち氏が務めており、そのように音楽面にも非常に力の入った作品でした。
しかし気になるのが、「果たしてどの程度まで原作準拠にするのか」という問題です。以前のアニメ化ではオリジナル部分が存在しており、原作では最後まで生存していた「プレセア」が、アニメでは早々に死亡し、後に双子の妹であるオリジナルキャラクター「シエラ」が登場しました。なお、声優はどちらも篠原恵美さんが担当しています。
原作者である大川七瀬さんもオリジナル展開を問題視したのか、19話以降は最終話まで自ら脚本を担当しています。当時の激務のなかでさらに脚本を手掛けた、大川さんの凄みを感じるエピソードです。
■旧来ファンが懸念する「クルマの名前」
2022年刊行の原作新装版、カバーイラストは新規描き下ろし。「CLAMP PREMIUM COLLECTION 魔法騎士レイアース」第1巻 (C)CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD./講談社
当時と比較すると現代は、原作に忠実なアニメを求められる傾向が強くなっています。発表されたリメイクアニメは、おそらくは可能な限り原作マンガを再現した作品になるのでしょう。ただし、それにはいくつか乗り越えなければいけない壁が存在しているのもまた事実です。
『レイアース』ファンの方ならご存じかと思いますが、キャラクターなどの名前の多くは当時の乗用車の名前(ペットネーム)を使用しています。つまり、商標登録されている名前ばかりなのです。
一例を挙げると、「レイアース」世界の名前である「セフィーロ」は、日産自動車株式会社が商標を保有しています。その範囲は家庭用テレビゲームやおもちゃなどを含む多岐に渡っており、当然、そうした商品を発売する場合は無断で使うことができません。挨拶をして仁義を通し、場合によりある程度の金銭のやり取りなども行なわれることでしょう。今のご時世であれば、これを機に魔神をイメージした新車も……といいたいところですが、残念なことにクルマの「セフィーロ」は2003年、惜しまれながら販売終了となりました。
これに限らず、2024年7月現在、作中に登場していた「クルマの名前」を冠する自動車、要するに名前の元ネタとなるクルマは、すべてが販売終了となっています。「ファーレン」の移動要塞「童夢」のみ、元ネタであるレーシングカーの設計製造で知られる自動車関連会社が存続中という状況です。30年という時間はそれだけ長く、日本のクルマの新陳代謝は早いということでしょう。
試しに中古車の販売サイトで2000年に生産終了した「プレセア」を検索してみましたが、見つかりませんでした。すでに中古車両としても消えてしまったようです。とはいえ商標は存続中なので、やはり仁義は通す必要があるでしょう。
このほか、最初に「光」たち3人が出会う場所は東京タワーでいいのか、という問題もあります。現在は、より巨大な東京スカイツリーがあるからです。ただしスカイツリーは著作権、商標権によって保護されており、無断使用はNGとなっています。制作陣がどう対応するのかも興味深いところです。
かつてのTVアニメ『魔法騎士レイアース』が終了してから29年が経ちました。後番組である『名探偵コナン』がいまだ放送中ということは驚くべきことながら、『レイアース』の復活もまた嬉しい驚きです。果たして令和の『レイアース』はどのような作品となるのか、今から楽しみで仕方ありません。
(早川清一朗)
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