ジブリの初恋泥棒「ハク」と「ハウル」 なぜ世界中で愛されるのでしょうか?
マグミクス / 2024年8月2日 20時55分
■ハクとハウルの魅力とは?
日本のみならず、世界中から愛されるスタジオジブリ作品では、何度見ても感動してしまうシーンやセリフ、見ているだけでよだれがたれる美味しそうな料理描写、背景を通して訴えて来るメッセージ性、心に響く名曲の数々など、いろいろな要素で私たちの心を動かしてきました。
そのなかでも今回取り上げたいのが、魅力的なキャラクターたちです。挙げるとキリがありませんが、女性たちの「初恋泥棒」といえば、「ジブリおかっぱ二大巨頭」との声もあがる『千と千尋の神隠し』の「ハク」と、『ハウルの動く城』の「ハウル」ではないでしょうか。
2024年5月に発売された仏女性ファッション誌「Marie Claire」の台湾版に、スタジオジブリ作品に登場する「初恋の男性キャラクター」トップ10が掲載され、1位はハウル、2位にはハクがランクインしています。
今回は、なぜこんなにもハクとハウルが人気なのか、その魅力を深堀します。
●「壁ドン」を2001年に生み出していた? ハク様
2001年公開の『千と千尋の神隠し』に登場したハクは、神々の世界に迷い込んでしまった主人公「千尋」が元の世界に戻る手助けをしてくれた少年です。
知らない場所に連れてこられ、両親が豚になり、だんだんと夜も更け、見たことのない化け物たちも現れ、さらには自分の体が消滅しそうに……。心細く恐ろしい状況のなか、さっそうと現れたのが美男子のハク様でした。しかもその際、千尋をかばう形で「壁ドン」しています。
まさか「壁ドン」が流行語大賞へノミネートされる10年以上前から実践していたとは……さすがハク様です。このシーン、当時12歳だった筆者もドキドキして見ていた記憶があるため、ハク様は言わずもがな「初恋泥棒」「胸キュンの先駆者」といえるでしょう。
さらに、このときハク様は千尋に「そなたの味方だ」と発言しています。頼れるものが何もない状況での彼の存在、この言葉は、千尋にとって何よりも救いになったことでしょう。そうかと思えば、2度目に会ったときの冷たい表情と「ハク様と呼べ」という命令口調のギャップに驚きます。
そして、さらにその後は千尋へ「元気が出るおまじない」をかけたおにぎりを渡してくれました。このように、駆け引き上手なハク様に振り回されたファンも多かったことでしょう。
ほかにも千尋が油屋を出て銭婆のもとに向かった際、坊が連れ去られたと怒り狂う湯婆婆に「坊を連れ戻してきます。その代わり、千と両親を人間の世界へ戻してやってください」と交渉するシーンもありました。これに対し、湯婆婆が「その後あたしに八つ裂きにされてもいいんかい!?」という脅しにも屈せず千尋を守ろうとします。ここまで一途な彼を好きにならない人がいるでしょうか? いや、いないでしょう。
■イケメンなのにヘタレ…それが愛おしい!ハウル
見た目は王子様なのに、実はヘタレ? 母性本能をくすぐるハウル 画像は『ハウルの動く城』場面カット (C)2004 Studio Ghibli・NDDMT
ハウルは2004年公開の映画『ハウルの動く城』に登場する、魔法使いの美青年です。こちらも主人公を手助けする立場にあり、「荒地の魔女」の呪いで90歳の老婆にされてしまった「ソフィー」を最初は嫌々ながら自宅の城に居着かせ、最終的には彼女を守ろうと奮闘します。
肩にかかる長さのサラサラの長髪、中世的で甘いマスク、美しいブルーの瞳、スラリとしたスタイルと、その姿は魔法使いというより「王子様」です。スタジオジブリを代表するイケメンと言っても過言ではないハウルですが、王子様のような容姿とは裏腹に、実はとても臆病で繊細な性格をしており、想定外なことが起こると泣きわめき暴れるような一面も持っていました。
「美しくあること」に重きを置いており、そのこだわりは髪の色にまで至ります。そのため、ソフィーが勝手に掃除してしまったせいで髪色がオレンジや黒へと変化したときの落ち込みようったら……。頭をかかえてうずくまり、全身からドロドロとした緑の液体を出します。
さらに、師匠である「サリマン」に呼び出しをくらった際、ソフィーに「ソフィーが行けばいいんだ! 僕のお母さんと言うことで」と代わりに行かせるヘタレっぷりを発揮しました。それでも、なんだか放っておけない雰囲気をかもし出し、女性の母性本能をくすぐります。
ヘタレな一面ばかり紹介しましたが、一方で、かっこいい部分も持ち合わせていました。ソフィーと関わることによって心を成長させたハウルは、突如として始まった戦争のなかで「ようやく守らなければならない者ができたんだ。君だ」とソフィーに告げ、空襲へ向かいます。臆病者で大事なことから逃げ続けていたハウルが、大切な人を守るために逃げないことを決めた瞬間でした。
* * *
正反対ながらも、違った魅力を持つふたりは何度見ても、何歳になっても「あぁ、ステキだな……」と思わせてくれます。もうすでにふたりのとりこになっている人は多いと思いますが、繰り返し作品を観て、もう一度魅力を再確認してみてはいかがでしょうか。
(米田果織)
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