直系後継機「ザクIII」はどこまで進化した? MS史の位置づけは「ザクII未満」?
マグミクス / 2024年8月2日 6時55分
■軍の象徴として開発された「ザクIII」
TVアニメ『機動戦士ガンダム』に登場したジオン軍のモビルスーツ(MS)といえば、「ザクII」がその代名詞でしょう。汎用性に優れ、地球連邦軍とジオン軍による戦いを描いた「一年戦争」においては、あらゆる場面で見せ場がありました。
そして「ガンダム」シリーズはTVアニメ、劇場版と展開し、物語を紡ぐとともに、さまざまな形でザクIIの系譜も受け継がれることになります。『機動戦士Zガンダム』では、地球連邦軍と旧ジオン軍の技術を融合して開発された「ハイザック」、ザクIIのパーツが流用された「ドラッツェ」、そして、『機動戦士ガンダムZZ』に登場した「ザクIII」など、枚挙に暇がありません。
特にザクIIIは、ザクの名前を引き継いだ正当な後継機であり、紆余曲折を経て迎えたザクIIの進化形態ともいえます。そもそもザクIIIは、「アクシズ」(ネオ・ジオン)によって「ジオンの象徴たるザク」というテーマのもとに開発された機体です。
開発にあたって、ザクIIの弱点であった装甲をボリュームアップし、武装面は「頭部ビーム・キャノン」、腰部フロントアーマーに内蔵する「ビーム・サーベル兼用のビーム・キャノン」が備わっており、当時の最新技術がふんだんに盛り込まれています。
汎用性の高さも追及していたため、「ビーム・ライフル」などの各種装備は他の機体と共有する形を取りました。その結果、地球連邦軍によるハイザックの性能を遥かに凌駕するほどの機体になったのです。
これは、旧ジオン軍と地球連邦軍の技術という、いわば技術のハイブリッドたるハイザックに対抗するべく、ジオンの系譜であるアクシズが「己の力だけで新たなザクを作る」という強い信念のもとに成し得た偉業といっていいでしょう。
その後、極限にチューンナップされて「強化人間専用機」となったのが「ザクIII改」です。頭部ビーム砲は取り除かれた代わりに「30mmバルカン」を搭載し、さらに専用設計されたビーム・ライフルも開発されました。ザクIIIよりも性能が格段にパワーアップしたものの一般のパイロットには操縦が難しく、結果的に強化人間である「マシュマー・セロ」の専用機として運用されました。
またザクIIIの頭部にあった3本のブレード・アンテナは、改修によって1本になったうえに、グレーを基調としたカラーリングがグリーン系の塗装に変わったため、ザクIII改の方がザクIIのイメージに近くなっています。搭乗者は選ぶものの、高性能を得た同機は「歴代ザク最強」といわれるMSまでに進化したのです。
ちなみに『機動戦士ガンダムUC』の「ラプラス事件」から数か月後のことを描きアニメ化などもされたWEB小説『機動戦士ガンダム Twilight AXIS』(著:中村浩二郎/ストーリー構成・デザイン協力:Ark Performance)には、新生ネオ・ジオンの総帥だった「シャア・アズナブル」大佐の搭乗を前提に開発された赤色のザクIIIが登場しました。しかし、シャアは第二次ネオ・ジオン戦争によって行方不明になったためその搭乗はかなわず、一方で偶然が重なりシャア専属のテストパイロットだった「ダントン・ハイレッグ」が搭乗しています。
■ザクIIほどのコスパは発揮できなかった?
ダントン・ハイレッグが搭乗した「ザクIII改」。画像は「HGUC 1/144 ザクIII改(Twilight AXIS Ver.)」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ
ザクIIの主力兵装といえば、「ザク・マシンガン」や「ヒート・ホーク」「ザク・バズーカ」などで、そのどれもが地球連邦軍の開発した最初のMSである「ガンダム」の、固い装甲を打ち破るには足りない威力でした。
その点、ザクIIIの場合は上述したように、ビーム・サーベル、ビーム・キャノン、ビーム・ライフルといった高火力のビーム兵器を扱えるようになり、当然ながらザクIIとは比べものにならないほどの攻撃力を獲得しました。また『MS図鑑 ザク』(双葉社)に掲載された数値によれば、ザクIIのジェネレーター出力は976kw、スラスター推力が4万3300kgに対し、ザクIIIのジェネレーター出力は2150kw、スラスター推力が17万2600kgと、いずれもケタ違いの進化を遂げています。
ここまで進化したザクIIIの、『機動戦士ガンダムZZ』での戦績を見ると、歴戦のパイロット「ラカン・ダカラン」が搭乗したザクIIIは、主人公の「ジュドー・アーシタ」が駆る「ZZガンダム」と戦うも、一騎打ちの末に敗れ、撤退を余儀なくされています。ZZガンダムも大出力、大火力で知られるMSで、また、いくらラカンが実力者でも、ニュータイプであるジュドーには敵わなかったのでした。
その進化形たる「ザクIII改」は、「グレミー・トト」が「ハマーン・カーン」に反旗を翻したことで起きたネオ・ジオンの内戦において、これに搭乗したマシュマーが、相対したラカン率いる部隊によって戦死しています。一年戦争時に多方面で運用されたザクIIとは違い、「歴代ザク最強」といわれたザクIII改は、同じ組織内で潰されるという悲しい結末を迎えるのでした。
なお、ザクIIは量産機という一面があるなか、ザクIIIも高い汎用性を目指したものの、量産化は「ドーベン・ウルフ」に譲る結果となっています。
MSの歴史のなかで、ザクIIIは間違いなく高性能の機体でしたが、高い汎用性で量産化されたザクIIの功績から見ると、ザクIIの正当後継機という名にはそぐわない、影を潜める位置づけとなってしまったと言わざるを得ないでしょう。
ちなみに、「月刊ガンダムエース」(KADOKAWA)で連載中のマンガ『機動戦士ムーンガンダム』(ストーリー:福井晴敏/マンガ:虎哉孝征/メカニックデザイン:形部一平/原案:矢立肇、富野由悠季)には、ドーベン・ウルフと次世代主力機争いで破れたザクIIIの欠点を見直して改良を重ねた「ザクIV」というMSが登場しています。
(LUIS FIELD)
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