巨大艦艇も自由自在! 「ノイマン」「マックス」…リアルにもいた「規格外の男たち」
マグミクス / 2024年8月7日 7時25分
■操艦のウデだけで主要キャラたちをジャイアントキリング!
アニメや特撮作品では、ロボットや戦闘機を操縦するパイロットが主人公に据えられがちです。主人公パイロットは大概、天才的な操縦技量を持つ人物として設定されている一方、主人公の「帰る場所」である宇宙戦艦などの母艦において、艦の指揮を執る艦長や、操艦する操舵手にも、天才的な技量を持つ人物が存在します。
そのひとりが「ガンダムSEED」シリーズに登場する「アーノルド・ノイマン」でしょう。
「ガンダムSEED」シリーズには「コーディネーター」と呼ばれる、遺伝子調整によってあらかじめ強靱な肉体と優秀な頭脳を持った新人類が登場するなか、ノイマンは「ナチュラル」と呼ばれる普通の人間です。にもかかわらずノイマンは劇中で巨大な宇宙戦艦を手足のように操る「変態機動」を披露しています。
TVシリーズに登場するノイマンは強襲機動特装艦「アークエンジェル」の操艦を担当しています。設定資料を見る限り、「アークエンジェル」は特別、運動性の高い艦ではなさそうですが、TVシリーズ1作目『機動戦士ガンダムSEED』では海中の敵を主砲で攻撃するため、全長420mの「アークエンジェル」を大気圏内で、「バレルロール」と呼ばれる、横転と機首上げを同時に行う機動に成功しています。
映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の劇中後半で、ノイマンはわけあって世界平和監視機構「コンパス」が建造した、最新鋭強襲揚陸艦「ミレニアム」に乗り換えることになりました。その乗り換えて間もない「ミレニアム」でノイマンは、敵陣営が放った超大型ビーム砲「レクイエム」のビームの直撃を回避するため、水平飛行中に進行方向と高度を変えずに、機体姿勢を急激にピッチアップして迎角を90度近くまで持ち上げる「コブラ機動」を実施、これによりビームを回避するという離れ業を演じています。
劇中でこれだけの活躍を見せているノイマンの人気はうなぎ上りで、2024年3月に公式WEBサイトが行なったシリーズ通じての人気投票では、メインキャラを抑えて7位にランクインしました。また2024年末に発売予定である『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』のブルーレイディスクには、特典として彼を主役とする『ノイマンの航海日誌』なるドラマCDが付属することが明らかになっています。
■あの天才パイロットは操艦させてもガチ変態(褒め言葉)!
若き日のマックス(左)、嫁は異星人。「マクロス男子2 スタンドミラー/超時空要塞マクロス」(バンダイ) (C)1982 BIGWEST
ガンダムシリーズと共に多数の宇宙艦艇が登場する「マクロス」シリーズは、「マクロス」の名を関する母艦がロボット状の強攻型に変形できるためか、その強攻型で「変態機動」を披露した操舵手/艦長は、「ガンダム」シリーズに比べて多く見られます。一方、通常の艦艇形態での「変態機動」の披露は、『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』に登場した「マックス」こと「マクシミリアン・ジーナス」など、あまり多くはないという印象です。
同作におけるマックスは、全長800m級の「マクロス・ギガシオン」を駆って、あたかも戦闘機のように峡谷地帯を自由自在に飛び回り、被弾した主人公らを救出するという離れ業を演じています。
作中にマックスがマクロス・ギガシオンを操艦している描写はないのですが、『マクロスΔ』の登場人物で、マックスにとっては孫娘にあたる「ミラージュ・ファリーナ・ジーナス」に「あの飛び方は…まさか」と看破されているあたりからして、マックスが操艦していたものと思われます。
劇中で常人離れした操艦技量を発揮した(と思しき)マックスは、シリーズ1作目の『超時空要塞マクロス』で登場した時点からヴァリアブル・ファイター(可変戦闘機)の天才パイロットいう設定でしたし、『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』の劇中後半でも、73歳(!)にしてヴァリアブル・ファイターに搭乗して無双してしまう、ちょっとおかしい(=規格外の)人物なので、操艦技術の高さについてはあまりクローズアップされていないきらいがあります。
■現実にもいた規格外の操艦巧者は「話を聞けば聞くほどおかしい(褒め言葉)」!
旧日本海軍の戦艦「大和」 (画像:アメリカ海軍)
現実では、大気圏内外を自由自在に飛び回る艦艇が実用化されていないため、艦を戦闘機のように自由自在に操る操舵手/艦長も実在はしない一方、海面を航行する艦艇には、これを文字通り自由自在に操った艦長/操舵手が実在します。そのひとりが旧日本海軍の森下信衞海軍少将です。
森下海軍少将は第二艦隊参謀長として戦艦「大和」の沖縄特攻に参加し、生還した人物として知られています。その第二艦隊参謀長に任じられる前は、「大和」の第5代艦長を務めていました。
森下少将は操艦の名人として知られる、常人離れしたエピソードに彩られた人物です。たとえば1944年6月には、アメリカ海軍の潜水艦の発射した魚雷を回避するために艦隊の陣形が乱れたのを見て取ると、自ら舵輪(操艦装置)を握って、僚艦「武蔵」との衝突を回避しています。
同年10月に勃発したレイテ沖海戦にも、森下少将は「大和」艦長として参加しています。この海戦ではアメリカ海軍の航空機が投じた魚雷や爆弾が猛威を振るい、旧日本海軍は「武蔵」をはじめ多数の艦艇を失いました。そうしたなか、森下少将は巧みな操艦で命中弾を3発にとどめ、「大和」を生還させています。
現代の基準ではコンプライアンス的にダメなのでしょうが、この時の森下少将は防弾チョッキも着用せず、しかも咥えタバコで指揮を執るという、アニメのキャラクターもかくや、というふるまいを見せたと伝えられています。
前述したように、大気圏内外を自由自在に飛び回る艦艇は実用化されておらず、本当に実用化されるのかも未知数ですが、もし実用化されれば、森下少将のような人物が、「リアルノイマン」「リアルマックス」になる……のかもしれません。
(竹内修)
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