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アニメ制作スタッフも唖然…デジタル作品なのに「セル画」がネットオークションに?

マグミクス / 2024年8月5日 8時5分

アニメ制作スタッフも唖然…デジタル作品なのに「セル画」がネットオークションに?

■「違法フェイク」のニセモノセル画にご注意

 アニメーションに興味をお持ちの方であれば、かつて多くの商業アニメーションが、通称「セル」と呼ばれる透明の合成樹脂版に描かれた、少しずつ動く絵を一秒間に何枚もフィルムに撮影することで出来上がっていたことはご存じかと思います。

 そのセルの絵はアニメーターが描いた動画を一枚一枚セル版に写し取り、人が専用の絵の具を筆で塗ったもの。つまり特殊な場合を除き、フィルムのために作られたセルはこの世界に一枚しか存在しません。

 このセル画は、いわば「推し」の生写真、もしくは本人そのものと思うことも出来ます。なにせ、このセルを写したものがTVで放映されているのです。そのため、昔からファンのあいだでは珍重され、人気作品の名シーンなどは、後に驚くほど高額な値段で取引されることもあります。

 しかし2000年代に入ると、TVアニメーションはアナログ方式からデジタル方式に徐々に移行し、フィルム撮影ではなくなっていきました。ということはセル画も必要がなくなります。

 デジタルでは、アニメーターが描いた動画はスキャンされてデジタル画面上で彩色され、レイヤーとして背景等と合成されることで画面が出来ていくのです。

 ですから、デジタルアニメーションでは、もしその中の絵が必要ならばデータの中から必要な画面をプリントアウトすればいいので、セル画のように「オンリーワン」のものは存在しないともいえるでしょう。

 ところがデジタル画像にもかかわらず、何故か「セル画」としてネットオークションに出されているものがあり驚いたことがあります。

 いまになっては真偽の確認が不可能なので作品名は控えますが、およそ30年前の人気ロボットシリーズのエンディングに使われていたデジタル画面が、一枚絵の「エンディングのセル」として、某オークションサイトに掲載されていたのです。

 上記説明のように、デジタル作品に「セル画」は存在しません。ということは、そのセル画は、どこかの誰かが、わざわざトレス彩色して別に作ったものということです。

 セルという素材も専用絵の具も専門的なものですし、作るにはそれなりの技術も必要ですから、あくまでも個人的な推測ですが、業界に関係を持った人が意図的に作ったものでしょう。

 もちろん、正規のルートで市販されているセル画も存在しますし、ちゃんと版権元から許諾をとって新たに作り「複製」と明記して市場に出ているものもあります。デジタル作品でも、同様の手順をきちんと踏んでセル画を作ることもあるでしょう。ニセモノの違法セル画は、アナログ時代から存在しました。しかし、無断で作った複製は当然違法ですし、なにより、あり得ないものを「ほんもの」と称しても、それに価値を感じられるものなのでしょうか。

 自分のお気に入りのキャラクターや画面の絵、ましてやその「生原画」ともいえるセル画を欲しいとファンが思うのは当然のことです。しかし、それにつけ込んで偽造された「ニセモノ」に金銭を払うなんて腹立たしいですよね。

 そんな想いをしないためにも、まずは「基本的に、デジタルアニメにはセルは存在しない」ということもぜひ覚えておいていただけたらと思います。

【著者プロフィール】
風間洋(河原よしえ)
1975年よりアニメ制作会社サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)の『勇者ライディーン』(東北新社)制作スタジオに学生バイトで所属。卒業後、正規スタッフとして『無敵超人ザンボット3』等の設定助手、『最強ロボ ダイオージャ』『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『巨神ゴーグ』等の文芸設定制作、『重戦機エルガイム』では「河原よしえ」名で脚本参加。『機甲戦記ドラグナー』『魔神英雄伝ワタル』『鎧伝 サムライトルーパー』等々の企画開発等に携わる。1989年より著述家として独立。同社作品のノベライズ、オリジナル小説、脚本、ムック関係やコラム等も手掛けている。
2017年からは、認定NPO法人・アニメ特撮アーカイブ機構『ATAC』研究員として、アニメーションのアーカイブ活動にも参加中。

(風間洋(河原よしえ))

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