昭和の少女マンガはファッションリーダーだった? 人気作家が描いた「モード」な服装
マグミクス / 2020年3月8日 14時10分
■牧美也子先生「普遍的なファッション心がけていた」
かつて、少女マンガはそのストーリーのみならず、作中で描かれる多彩なファッションでも読者を魅了していました。少女マンガに詳しい芸人の別冊なかむらりょうこさんが、2020年2月14日(金)に発売された『かわいい!少女マンガ・ファッションブック 昭和少女にモードを教えた4人の作家』(立東舎)を読み解きつつ解説します。
* * *
立東舎さんは、手塚治虫作品を初出時版で刊行したり、1960年代後半よりバレエマンガのシリーズを描いていた谷ゆき子先生の『バレエ星』や『まりもの星』を、ヒロインが毎号絶体絶命のピンチに陥るツッコミどころに焦点を当て“超展開バレエ漫画”と銘打って復刻版を次々に刊行。その面白さと絵の美しさのギャップに、再ブームを起こしました。
今回刊行された『少女マンガ・ファッションブック』は、その谷ゆき子先生を含め、1960年代を中心に活躍された4人の作家による160点以上にのぼる「ファッション画」が掲載されています。
「昭和レトロ」であり、「あこがれ」であり、「ハイセンスでモード」な少女たちの服の着こなし。少女漫画家でありながら、昭和少女のファッションリーダーであった作家さんたちは、何を描いてきたのでしょうか。
『少女マンガ・ファッションブック』は、作家さんたちの少女マンガ作品や雑誌から「ファッション画」を抽出したもので、最新のインタビューも収録しています。オールカラーで、美しい線がそのまま残ったイラストたちは輝きを失わず、ポップに目に飛び込んできます。
そしてそのオシャレさは、タイトルから想像する“少女マンガファッション”を軽々と超えてきます。どの作家さんが描いたものも、「今シーズンのハイブランドが発表したファッションなんだよ」と言われても頷いてしまうほど、とっても「モード」なのです。
牧美也子先生の描く、真っ赤なAラインのコートの少女たち、白黒チェックのセットアップを着る知的な少女。毎月「りぼん」にて、主人公が着ていた洋服が当たる懸賞という、羨ましい限りの企画が行われていた牧先生のインタビューでは、「普遍的なファッション」を心がけていたと語っています。
また対照的に「お話そのものがゴージャスなので」と話されるわたなべまさこ先生の描く少女たちは、つばの大きな帽子や、胸元のフリル、ファーの小物などが多用され、北島洋子先生の描く女の子は、元気さと自立心を持ったカラフルファッション。「素材は頭に置いて描いて」いたと語られていますが、その色彩と質感に感動します。
1999年に亡くなられた谷ゆき子先生は今回インタビューが叶わなかったとありますが、描かれる少女とそのファッションは、女性がなりたい姿そのものです。
これらはファッションブランドのデザイン画としてではなく、あくまでも少女マンガのなかで描かれていたものであることに改めて驚いてしまいます。
■現代の少女漫画は、読者のファッションリーダーになり得る?
わたなべまさこ先生の作品はゴージャスなお話が多く、描くファッションも華やかだった。『かわいい!少女マンガ・ファッションブック 昭和少女にモードを教えた4人の作家』(立東舎)より
『少女マンガ・ファッションブック』には、編集の倉持佳代子さんと、ファッションのスペシャリスト筒井直子さんとの対談「ファッションと少女マンガ、その関係?昭和少女を取り巻くファッション事情とは?」も掲載され、時代とともにファッションと少女マンガがどのように移り変わっていったかも知ることができます。
そして、ファッションは平成、令和と続いてきた現在の少女マンガのなかでも重要な役割を担っています。
現代の少女マンガでは、飛び抜けた才能があるわけでも、クラスで一番可愛いわけでもない、等身大の自分に重ねられる主人公像が描かれることが多く、「モード」な服装は描かれません。代わりに、自分でも手が届くかもしれない、「少しおしゃれをした日の自分」がそこには描かれています。
ただ、年上のお姉さんたちが恋愛している様子を将来の自分と重ねて見る「りぼん」「ちゃお」「なかよし」といった、おそらく子供が人生で初めて手に取る少女マンガ誌では、ファッショナブルな少女たちの私服が見受けられます。
少女マンガからファッション誌へ、という年代とともに起こる推移と、物語を最も伝えるのに適したものが、現代の少女マンガにおけるファッションの立ち位置なのかもしれません。
「ファッション画集」としても、「イラスト集」としても、「読み物」としても楽しめる『少女マンガ・ファッションブック』は、懐かしい付録として切って遊べる「着せ替え人形カード」までついてきます。この美しい書物にハサミを入れるのはなかなか勇気がいりますね……。
作家の先生たちが持つ才能と技量にただただ感銘を受ける1冊、とってもオススメです。
(別冊なかむらりょうこ)
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