TVじゃ放送できねーよ! 改変前が濃厚すぎた天才・石川賢のマンガ版『ゲッターロボ』
マグミクス / 2024年8月8日 18時55分
■大臣暗殺を企んでいた過激派リーダー、ゲッターチームに転職!
数あるスーパーロボット作品のなかでも、異彩を放っているのが『ゲッターロボ』シリーズでしょう。1974年から始まったTVアニメシリーズは、3機の「ゲットマシン」が変形、合体して、空中戦を得意とする「ゲッター1」、ドリルを備えスピードで翻弄する「ゲッター2」、足はキャタピラで海中で怪力を振るう「ゲッター3」の3形態となる新機軸がちびっ子たちを魅了しました。
その影響力のスゴさは、後にどれだけのスーパー合体ロボや、ドリルを持つロボが登場したかを数えれば分かります。『超電磁ロボ コン・バトラーV』や『天元突破グレンラガン』も、『ゲッター』なしには考えにくかったことでしょう。
その一方で、『ゲッター』は最初のTVアニメ以上に「原作版」=マンガ版が存在感を放っています。おもに石川賢先生が手がけた(正確には、『ゲッター』は永井豪先生との共同原作)マンガは、やがて1本の時系列を持つ「ゲッターロボサーガ」へと発展し、『真(チェンジ!!)ゲッターロボ 世界最後の日』などのOVAや、ゲーム『スーパーロボット大戦』シリーズが準拠するところとなっています。
初代『ゲッター』と『ゲッターロボG』までは、おおむねアニメ版と大筋を同じくしています。とはいえ、『ウルトラマンタロウ』のコミカライズを血まみれにした(タロウが怪獣の口を引き裂きます)石川先生が、自らの原作で手加減するはずがありません。
よく話題になるのが、ゲッターチームのひとり「神隼人」がやった「目だ 耳だ 鼻!」でしょう。この世界では、隼人はもともと過激派学生のリーダーであり、大臣の暗殺を企んでいました。それに恐れをなした配下の構成員が逃げようとすると隼人は、ひとりは顔の皮を剥ぎ、もうひとりは目、耳、鼻の順番で「粛正」していきました。
そのような隼人がゲッターチームの仲間になったのも、正義の心に目覚めたというより、「恐竜帝国」というヤバい連中が仲間の学生を食っていたからで、少なくとも最初は「ハチュウ人類に食われたくないから」です。無理やりマシンに乗せられて「なんでおれがこんなことをしなきゃならないんだ!!」と心の底から嫌がっていました。
リーダーの「流竜馬」も、隼人と比べればマトモな人間に見えるかもしれませんが、それは単なる気のせいです。空手家だった父親が日本全土の武道家から道場破り扱いされたことに復讐するため、試合会場へ乗り込んで審判ごと血祭りにあげるという、こちらもなかなかの人格をしています。一応は倫理観らしきものもありますが、一方で野犬の首を容赦なくはねていました。
そもそも彼らをスカウトした「早乙女博士」も、恐竜帝国から人類を守るため、小さな犠牲どころか自分の実の息子(脳を乗っ取られていた)を躊躇なく焼き殺しています。敵を見たら考えるな、すぐ倒せと言い切っていて、竜馬をドン引きさせていました。
もっともTVアニメ版に近くて親しみやすいのが「巴武蔵」でしょう。昨今では見かけなくなった「太めで大食いで気が良い」キャラクターであり、このメンバーのなかでは常識人に見えます。
その武蔵は身体が頑丈ということで、腹に穴を開けられるような過酷な扱いが多く、さらにはTVアニメと同じく最後は死亡してしまいました。
とはいえその最期は、たったひとりでゲッターロボに乗って出撃して恐竜帝国の「メカザウルス」たちを足止めし、ゲッターの腹からゲッターエネルギータンクをえぐり出して無理心中という、壮烈なものです。死亡エンドではあるものの、主役3人のなかで一番優遇された結果、敵を道連れにするというおいしい見せ場を与えられた、という見方ができるでしょう。
なお、石川賢マンガの常として生死の境はユル目のため、後の「ゲッターサーガ」でも常連さんとなっています。
■スケールもエグさもインフレしていく「ゲッターロボサーガ」
同時期に放送していたTVアニメとタイトルは同じながら、中味は全くの別もの。画像は文庫版書影。『コミック文庫 ゲッターロボ號 1』 原作:永井豪/作画:石川賢 (双葉社)
完全続編の『ゲッターロボG』でも、キャラクター設定はリセットされておらず、隼人が過激派リーダーという過去も引き継いでいます。第1話から過激派がパトカーを襲撃しており、従兄弟の「竜二」が隼人をメンバーに連れ戻しに来るという展開でした。
実は、竜二は新たな人類の敵「百鬼帝国」に改造されており、仲間たちもすべて機械の身体に改造済みです。もはや後戻りできなくなった竜二と元の仲間たちが巨大ロボ「魔王鬼」に合体し、「ゲッターロボG」は大苦戦しながらも隼人+「ゲッターライガー」の超スピードでこれを撃破します。初っぱなから主役ロボはボロボロ、後味の悪さも半端ではありません。
ほか、高層ビルでのパーティに招かれたものの敵のわな、閉じ込められた一般客が次々と殺されるなか、ゲットマシンが駆けつけて……という、早すぎた『ダイ・ハード』的な話もありつつ、前作よりも短いために、いきなり最終編「ゲッター最後の戦い!」に突入します。
クライマックスの「超巨大な竜型ロボ『ウザーラ』に乗り、腕組みして登場するゲッタードラゴン」が広く知られますが、そこに至るまでの経緯にはエグいものがあります。
そもそもウザーラは古代アトランティス人の守護神であり、生き残りのアトランティス人はゲッターチームを捕らえて脳を移植しようとします。ところが、そこに百鬼帝国の潜入工作員が殴り込み、アトランティス人は全滅してしまいました。その遺言としてウザーラが竜馬たちに託されたわけですが、結果的に命の恩人となった百鬼の連中を皆殺しにするゲッターチームが素敵です。
その後もまだまだ、「ゲッターサーガ」はつむがれていきました。TVアニメと同時期に連載された石川賢版『ゲッターロボ號』は、展開が全く異なるうえに、主役ロボだった新たな「ゲッターロボ」(玩具版は3機が合体、3形態に変形するスゴさ)は終盤にリストラされて、マンガ版オリジナルの「真ゲッターロボ」が何もかもかっさらっていきます。具体的には火星に、吸収した流竜馬らと一緒に飛んでいってしまいました。
さらに『真ゲッターロボ』や『ゲッターロボ アーク』へと続き、最後の「アーク」は掲載誌の『スーパーロボットマガジン』(双葉社)が廃刊となったため「第1部・完」となり、やがて原作者が逝去されたために未完となっています。
初代が始まってから大風呂敷を広げ続け、一度も閉じることなく銀河を超えて広げていった石川賢先生がもっと長生きされていたなら、人類はとんでもない地平に連れて行ってもらえたと信じて疑いません。
(多根清史)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「規制されてんじゃん」←そりゃあね 映像化が不思議だった過激アニメ
マグミクス / 2024年11月18日 21時15分
-
「文字通りカラダ売った?」「イケボでアウトなセリフが」地上波放送が不思議なアニメ
マグミクス / 2024年11月11日 21時50分
-
シビレるほどの鬱展開がいまに語り継がれるSFアニメ 憂鬱なときはホントに閲覧注意!
マグミクス / 2024年11月2日 8時25分
-
「合体」←何を想像する? 「良い子は観ちゃダメ」な過激描写が記憶に残るロボアニメ
マグミクス / 2024年10月29日 21時15分
-
サンライズ作品『ザンボット3』『ガンダム』『ダイオージャ』の意外な共通点とは?
マグミクス / 2024年10月25日 6時35分
ランキング
-
1とんでもない通帳残高に妻、絶句。家族のために生きてきた65歳元会社員が老後破産まっしぐら…遅くに授かった「ひとり娘」溺愛の果て
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月21日 8時45分
-
2紅白「旧ジャニ出演なし」に騒ぐ人の"大きな誤解" 出演しない理由についての報道の多くがピント外れ
東洋経済オンライン / 2024年11月22日 13時30分
-
3「洗濯離婚」や「エアコン離婚」が起きる納得の理由 熟年離婚の引き金となるのは「ささいなこと」
東洋経済オンライン / 2024年11月22日 16時0分
-
4ファミマの「発熱・保温インナー」はヒートテックより優秀? コンビニマニアが比較してみた
Fav-Log by ITmedia / 2024年11月21日 19時55分
-
5カップヌードル、約1割が“アレ”を入れて食べがちと判明 ギャル曽根も「すごい好き」
Sirabee / 2024年11月19日 4時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください