漫画『ゲームセンターあらし』 40年も前に「eスポーツ」描いてた?
マグミクス / 2020年3月10日 15時10分
■再現不可能な必殺技「炎のコマ」「ムーンサルト」…
2000年代から徐々に盛り上がりを見せてきたeスポーツは、2018年にインドネシアのジャカルタで開催されたアジア競技大会でデモンストレーション種目として採用され、2024年パリ・オリンピックでの種目採用も議論されるなど、世界的な注目を集めています。
子供時代にファミコンで遊んでいたアラフォー・アラフィフ世代にとっては、「ゲームがスポーツとして認識されている」というのはピンとこない出来事かも知れませんが、(日本では法律の関係で金額設定に制限があるものの)1億円の年俸を超えるプロゲーマーも活躍しています。
「ゲームでプロになる」といえば、昭和の時代に少年時代を過ごした筆者のような世代では、ハドソンの社員だった「16連射」の高橋名人や、そのライバルの毛利名人が思い浮かびます。そんな昭和世代が「ゲーム・バトル」と聞いて思い起こす作品といえば、「月刊コロコロコミック」(小学館)で1979年から連載され(読み切りは1978年に初掲載)、1982年に日本テレビ系列でアニメ化された『ゲームセンターあらし』(作:すがやみつる)ではないでしょうか?
主人公の石野あらしが、月影一平太や大文字さとるなど、のちに仲間となるライバルをはじめさまざまな相手とゲームバトルを繰り広げていくという内容なのですが、やはりそこは昭和のマンガ。主人公、『あらし』が繰り広げる必殺技の「炎のコマ」や「ムーンサルト」、「エレクトリック・サンダー」や「真空ハリケーン撃ち」など、ツッコミどころ満載な「トンデモ描写」のオンパレードとなっています。
■ゲームの力で地球を守り、そして宇宙へ…?
『ゲームセンターあらし』作者のすがやみつる先生は、パラアスリートと人気漫画家がコラボレーションしたパラスポーツの普及啓発映像『FIND YOUR HERO』(2018年)の制作に参加、ボッチャのイラストを作画している(画像:東京都)
一応、内容としてはファミコンが登場する以前の「スペースインベーダー」や「ギャラクシアン」、「ムーンクレスタ」、「クレイジークライマー」などの昭和のアーケードゲームやカシオの「ゲーム電卓」がバトルの題材として登場するのですが、実はゲーム内容に触れることはほとんどなく、バトルの描写は必殺技の名前を連呼するだけの「リングにかけろ」状態です。
精神エネルギーを使い雷や風を起こす「グレートタイフーン」や、空気中の水分をレンズのようにして太陽の光と熱でゲームマシンを直撃する「レインボーバズーカ」、全宇宙のエネルギーを体に集めて放出する「スーパーノヴァ」など、もはや超能力の領域です。
同作のアニメ版のオープニングでは、水木一郎アニキが「地球の敵~をぶっとばせぇ♪」と熱唱していますが、敵キャラも人間に限らず、クマやホワイトパンサーなどの動物からキングコングのようにデカいゴリラの「キンチャンコング」、そして「暗黒七魔神」との闘いまで、文字どおりゲームバトルが地球を救うための闘いになる場面も。
そして、最終回では未来人の宇宙船に乗って「この宇宙にゲームを通して真の平和と友情を伝えるため」、盟友の「一平太」や「さとる」とともになぜか宇宙へ旅立つというブッ飛んだ結末となっています。
もちろん、現実世界のeスポーツで、コンピューターをバグらせているだけの技である「炎のコマ」や「エレクトリック・サンダー」を使うことは反則でしょうし、「水魚のポーズ」で精神統一している間に負けてしまうことは確実なのですが、そこにビデオゲームを舞台とした熱い闘いが描かれていたことは事実です。世界的にゲームバトルが認知され、日夜さかんに行われている現在の状況は、「昭和のオッサン」である筆者としては、なんとも言えぬ感慨を感じる次第です。
(渡辺まこと)
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