パクリじゃなくて愛!観ていてやたら「ジブリ」を思い出す海外実写映画
マグミクス / 2024年8月9日 20時25分
■監督が影響を公言するパターンも
「金曜ロードショー」で2024年8月23日に『となりのトトロ』、8月30日に『天空の城ラピュタ』がノーカットで放送されます。これらスタジオジブリ作品の国民的な人気は言うにおよばず、世界中のあらゆる世代に親しまれ、クリエイターにも大きな影響を与え続けてきました。
アニメ作品はもちろん、海外の実写映画でも、ジブリおよび宮崎駿監督作からの影響を伺わせる作品があります。ここではSNSで「ジブリっぽい」と語られ、実際に観ると単なる模倣などではない、クリエイターが独自の魅力を突き詰め、かつリスペクトも存分に伝わる4作品を振り返りましょう。
●『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』(2008年)
『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』は2004年の『ヘルボーイ』の続編ではありますが、そちらを観ていなくても楽しめる、アメリカンコミック原作のヒーロー映画です。何より注目は、監督と脚本を手がけたのが、後に『パシフィック・リム』を手がけて怪獣映画、特撮ファンたちを大熱狂させた、ギレルモ・デル・トロ氏だということでしょう。
ギレルモ監督自身の作家性であるゴシックなホラーテイストも交えつつ、圧倒的なビジュアルの世界観も表現されており、まさに全編「眼福」という言葉がふさわしい、素晴らしい作品になっています。そして、同作は公開当時から「ジブリ」を連想する人が多かったようです。
日本のアニメにも造詣が深いギレルモ監督は、2023年のトロント国際映画祭で宮崎監督について、「アニメーション界で最も偉大な監督」とコメントするほどのジブリ好きとして知られており、『パンズ・ラビリンス』などの過去作でもジブリらしさを感じる描写がありました。
『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』で何よりジブリを思わせるのは、「巨大な樹の怪物」でしょう。その造形やスケール感や動きは『もののけ姫』のダイダラボッチを思わせますし、ある場面での「緑が広がる」光景の美しさは筆舌に尽くしがたく、『もののけ姫』のクライマックスを実写で観られたような感動があります。
さらに、ジブリ作品ではありませんが、終盤の「歯車の上での闘い」は明らかに宮崎駿監督作『ルパン三世 カリオストロの城』のオマージュです。大きな歯車が噛み合い動き出す様を実写で見られること自体が面白く、アニメ的な舞台で生身の人間が演じてこそのアクションが繰り広げられ、新感覚のハラハラ感を楽しめるはずです。
●『移動都市/モータル・エンジン』(2018年)
フィリップ・リーヴ氏の小説『移動都市』を原作とした『移動都市/モータル・エンジン』は、そのタイトル通り「都市が動く」描写が何よりも魅力的で、その設定からして『ハウルの動く城』を連想した方も多かったでしょう。巨大な建造物の機械的なガチャガチャした動きや、退廃的かつ幻想的な風景にはロマンが詰まっており、ここまで「実際にある」と思える世界観を作り出したことに驚嘆します。
また、出会ったばかりの男女がともに冒険に旅立つ流れや空中都市「エアヘイヴン」の描写からは、『天空の城ラピュタ』を思い浮かべる人も多いことでしょう。女の子のほうがクールなキャラクターで男の子を守護するような立ち回りは『進撃の巨人』の「ミカサ」も連想させ、吹き替え版だと実際にミカサ役の石川由依さんが声を担当しています。
SFアドベンチャー作品としての見せ場も満載で、冒頭の移動都市同士による「追いかけっこ」からガッツリと心をつかまれますし、終盤には『スター・ウォーズ』シリーズのような空中戦までもがある、エンタメ特盛大サービスな内容となっていました。残念ながら興行的には失敗し批評的にも伸び悩んだ不遇の作品で、再評価されることを願っています。
●『レミニセンス』(2021年)
『レミニセンス』はドラマ『ウエストワールド』で高い評価を得たリサ・ジョイ氏が監督、脚本を務めた作品で、彼女の夫で製作を務めたのは『ダークナイト』や『インターステラー』で共同脚本を手がけていたジョナサン・ノーラン氏です。パッと見のイメージから、そのジョナサンの兄であるクリストファー・ノーラン監督の『インセプション』を連想する人も多いでしょうが、本編の印象はやや異なります。
同作は「記憶を追体験させる仕事をしている男が、謎めいた美女への恋を通り越して、危うい執着をしてしまう」という物語でした。SFアクションであると同時に、ラブストーリーとしての比重も大きい作品であり、アルフレッド・ヒッチコック監督の『めまい』のほか、黒澤明監督の『羅生門』にも影響を受けている、「自分以外の認識」描くことで観客をいい意味で惑わせるタイプのミステリーでもあるのです。
さらなる魅力は「水没しかけている街」という世界観で、イタリアの水の都ヴェネツィアを思わせます。また、劇中では「海面上の線路を列車が進んでいく」場面もあり、ジョイ監督はそれが『千と千尋の神隠し』へのオマージュであることを明言しているのです。
公開中の『デッドプール&ウルヴァリン』と同様に、ヒュー・ジャックマン氏が人生がうまくいかない哀しい男を熱演しており、その退廃的な世界観にマッチしたセンチメンタリズムに、いい意味で「浸る」ことができるでしょう。
●『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021年)
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』は『アイアンマン』から始まるヒーロー映画シリーズ「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」の第25作目です。しかしながら他作品との物語のつながりは少なく、予備知識がなくても問題なく楽しめるでしょう。公開当時から「MCUの単独ヒーロー映画のなかでNo.1」といった高評価が相次ぎ、特に序盤の「バス内部でのアクション」は絶賛されています。
世界観やキャラクターにアジア圏へのリスペクトが存分にある作品で、こちらも『千と千尋の神隠し』を連想する方がたくさんいました。「油屋」を思わせる建物、洞窟に入った後に不思議な世界が広がる様、「ハク」を思わせる巨大な龍「グレート・プロテクター」も出てきました。『千と千尋の神隠し』に似ていながらも、やはりクリエイター独自の美学とこだわりを感じさせる、他のヒーロー映画とは一線を画すビジュアルに惚れ込んだ人は数多いでしょう。
ほかにも『ドラゴンボール』的な「空中をぶっ飛ぶ」アクションが展開しており、実際にデスティン・ダニエル・クレットン監督は幼少期にアニメ『ドラゴンボールZ』を見て育っていたそうで、他にも日本のアニメやマンガのリスペクトをそこかしこに感じられます。コロナ禍での公開だったこともありMCUのなかでは目立たない印象もありますが、もっと多くの人に観られることを期待しています。
(ヒナタカ)
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