漫画『ファミコンロッキー』に少年は…『スパルタンX』のウソ技を真に受け続けた結果
マグミクス / 2020年3月12日 8時10分
■『スパルタンX』のウソ技を真に受け続けた少年
1985年に発売されたファミコン版『イー・アル・カンフー』と『スパルタンX』はマンガ雑誌「コロコロコミック」での特集やマンガ『ファミコンロッキー』(著:あさいもとゆき)への登場により、少年たちの注目を浴びました。『スパルタンX』を24周しようとしてあえなく挫折したライターの早川清一朗さんが当時の記憶を語ります。
* * *
1980年代半ばのファミコン少年たちがゲームの情報を仕入れるために頼りにしていたのが、小学館の「コロコロコミック」でした。巻頭では写真付きでたくさんの新作ゲームが特集されており、ファミコン少年である轟勇気が主人公のマンガ『ファミコンロッキー』も熱狂的な人気を集めていたのです。
『ファミコンロッキー』では毎回ファミコンのゲームを使用した白熱したバトルが繰り広げられ、最後は追い詰められた勇気が一発逆転の隠し要素を見つけ出して勝利するという展開がたびたび見られました。これはこれでとても楽しませてもらえたのですが、この時代、少年たちは他にファミコンの情報源をほとんど持っていませんでした。
結果として、マンガの内容を真に受けてしまったファミコン少年が大量に誕生してしまうのです。もちろん筆者もそのうちのひとりでした。
まず筆者が目指そうとしたのが、『スパルタンX』の24周クリアでした。『スパルタンX』は主人公の「トーマス」がさらわれた恋人「シルビア」を救うために全5階の建物に乗り込み、各階層で待ち受ける無数のザコ敵とボスを倒していくゲームです。5階のボスを倒すと一応エンディングを迎え、そのまま難易度があがった2周目へと突入します。『ファミコンロッキー』では24周すると実は敵だった「シルビア」が襲いかかってくるストーリーだったため、何度もチャレンジしたのですが、たいていは3周目か4周目でゲームオーバーになってしまい、24周まで到達した『ファミコンロッキー』への憧れはさらに強くなりました。
マンガの内容がウソだったのを知ったのは、ずいぶん後のことでした。
■『イー・アル・カンフー』の裏技は成功、と思いきや?
あさいもとゆき先生『ファミコンロッキー』 現在は「マンガ図書館Z」で読める
『バンゲリングベイ』など他のゲームでも『ファミコンロッキー』の再現はできず「さすがにこのマンガの内容は嘘なんじゃないだろうか」と思い始めた筆者でしたが、それでも懲りずに『イー・アル・カンフー』でも再現を試みます。この当時、ファミコンのカセットは簡単には買えない貴重品だったので、徹底的に遊びつくさなければ気が済まなかったのです。
ちなみに『イー・アル・カンフー』はコナミから発売された対戦格闘ゲームで、悪行を重ねるチャーハン一族を倒すため、拳士リーが5階建てのメンマの塔に乗り込み敵の武術家たちと戦うゲームです。
対戦格闘とはいっても近年のゲームとは異なり、人対人の対戦はできませんでしたが、2002年に「ゲームボーイアドバンス」で発売された『コナミアーケードゲームコレクション』に収録されたタイトルでは可能となっています。
さて、まず筆者が試したのは、上から吊り下げられている背景の飾りをヌンチャクにするという裏技でしたが、当然のごとくそんな仕様は存在していませんでした。
次に試したのは敵の頭上で飛び蹴りを続ける「必殺飛翔脚」です。結果から言うと、これは一応できました。筆者のパターンではまずとにかく一発攻撃を当てて、そこから素早く少し近づき垂直ジャンプからのキックを当て続けるというやり方でした。相手を倒すまで連続で当てられたので、成功と言ってもいいかもしれません。『ファミコンロッキー』の技が現実に飛び出てきた瞬間です。ただ、友達の家で再現しようとしたらできなかったこともあるのでなんでだろうと思っていたのですが、前期ロットだけに実装されていたやり方だったようですね。できなかった時、結構恥ずかしかったなあ……。今となっては懐かしい思い出です。
それにしてもなぜ1985年に少しタイプは違うとはいえ、同じ中国武術を扱った、塔を登るゲームが発売されたのか。当時は気にしていませんでしたが、ブルース・リーの『死亡遊戯』が元ネタなのでしょうね。『スパルタンX』はジャッキー・チェン主演の同名の映画もありますが、やはり『死亡遊戯』要素が強いように思えます。
『コロコロコミック』『ファミコンロッキー』『裏技』『ブルース・リー』……こうして単語を並べるだけで涙が出そうになってきます。もしタイムマシンがあったなら、無邪気にいろいろなものに熱中できた時代に戻りたい。筆者はたまにそんな空想をしています。
(早川清一朗)
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