「ゲッター線」って結局なんやねん? 『ゲッターロボ』最大の謎に迫る!
マグミクス / 2024年8月15日 6時35分
■ゲッター線が進化したポイントとは…
『ゲッターロボ』をはじめとする「ゲッターロボサーガ」で、重要な物語のキーとなっているのが「ゲッター線」です。しかし、現在ではおなじみとなった超常的な能力を持つという設定は、後から追加されたものでした。
シリーズ第1作『ゲッターロボ』では、ゲッター線は「ゲッターロボ」のエネルギーとなる宇宙線の一種と設定されています。アニメ版では、人間にとっては無公害エネルギーですが、爬虫類にとっては有害な物質とされていました。
原作マンガ版などでは過去に宇宙から地球へ降り注いだ際に、恐竜を絶滅させ、代わりに猿を人へと進化させたとされています。こういった因縁から第1作『ゲッターロボ』では、「恐竜帝国」がふたたび大地に君臨するために、ゲッターロボが最大の障害でした。
そのため当初の設定だけでは、簡単にいうと「トカゲ退化サル進化光線」といったものだと、筆者の知人がいったことがあります。つまり、それ以上でも以下でもない架空のエネルギーでしかありません。ところがゲッターロボサーガが形成されるに至って、ゲッター線は飛躍的な進化を遂げました。
それは原作者である石川賢先生自らが描いた『ゲッターロボ號』の中盤以降のことです。前半でアニメ版の敵役だった「プロフェッサー・ランドウ」を倒し、その背後にいた恐竜帝国との戦いが始まった時のことでした。
この恐竜帝国との戦いで必要となったのが、廃墟となった早乙女研究所にある「本当のゲッターロボ」、後に「真ゲッターロボ」と名付けられたゲッターロボです。この真ゲッターの登場により、ゲッター線の設定が大きく変わりました。
それが「生命体の進化を促す、神のような『意思を持つ』エネルギー」という設定です。作中では、人間や機械に至るまでが融合し、死んだ生命すら使役するかのような動きを見せました。「意思を持つ」といいましたが、正確な目的は不明で、その意図も理解できない存在だといえるでしょう。
つまり「よくわからないけど意志を持ったスゴいエネルギー」とでもいえるかもしれません。おそらく正確に把握して、明確な答えを出せる人はいないでしょう。
それゆえにこれ以降のゲッターロボサーガでは、ゲッター線を中心に物語が進んでいくことになります。もっとも原作者である石川先生が鬼籍に入られたことで、作品としては完結しているものの、ゲッター線が何であるのかは永遠の謎となりました。
そしてゲッター線はゲッターロボサーガから飛び出して、さまざまな作品に影響を与える存在となります。もっともその影響を与えられた世界が、ゲーム「スーパーロボット大戦」シリーズでした。
■ゲッター線が起こした奇跡の数々とは
原作のマンガ版はシリーズを重ねどんどんスゴいことに。『オリジナル版 ゲッターロボ 1』 原作:永井豪、石川賢/作画:石川賢 (小学館)
「スパロボ」では原典以上に活躍していたゲッター線、それはなぜでしょうか。
ゲッター線が最初にスパロボでクローズアップされたのが、『第4次スーパーロボット大戦』です。この時、初めて真ゲッターロボが登場しました。その際に原作マンガ版では登場しなかった真ゲッター2の下半身と、真ゲッター3を、石川先生が新たにデザインしています。
この時の真ゲッターロボの設定は、最初のゲッターロボが高出力のゲッター線を浴びることで変異した姿とされていました。つまり、偶然に生まれたゲッターロボというわけです。そしてゲッター線も計り知れない力を持つものの、普通のエネルギーとして扱われていました。
ゲッター線を浴びてパワーアップするという展開はまだあります。『第4次』の移植作となる『スーパーロボット大戦F完結編』では、「マジンガーZ」がこれを浴び、「マジンカイザー」へと強化されました。マジンカイザーはこの『F完結編』で初めて世に出たロボットで、このゲームのために原作者である永井豪先生がデザインしています。
もともと原作者が同じということで、マジンガーとゲッターは近しい存在でした。それゆえにマジンガーへのゲッター線の流用は、それほど違和感がありません。また、この2機の登場が、後にマジンガーとゲッターの新作コンテンツが作られるきっかけとなりました。
もちろん、まったく違う作品に影響を与えたこともあります。そのなかでもファンには有名なのが、『スーパーロボット大戦R』での超展開でしょうか。ここでゲッター線の影響を受けるのが、『機動武闘伝Gガンダム』に登場する「東方不敗マスター・アジア」です。
本作においてマスター・アジアは、一度死んで、「DG細胞」により強制的に復活させられた状態で登場しました。そのDG細胞を復活させた原因がゲッター線だったことから、ゲッター線が意志を持ってマスター・アジア復活に協力するという流れです。このことから、マスター・アジアを「ゲッター線に詫びを入れさせた男」と評する人もいます。
筆者的に一番印象的だったのが、『スーパーロボット大戦DD』での『デビルマン』関係のイベントでしょうか。この時に再現されたのが、原作マンガでも最大級のトラウマといわれるデーモン族「ジンメン」のイベントでした。
ジンメンは人間を食し、食べた人間の顔が甲羅に浮かぶという能力を持っています。しかも、この顔は生前と同じように意識があり、これを人質のように使う戦い方を得意としていました。この能力を使い「デビルマン/不動明」を慕う少女「サッちゃん」を取り込むという悪逆非道なことをしています。
原典のマンガでは、自分はもう死んでいるというサッちゃんの訴えに応じ、取り込まれた人間ごとジンメンを倒すというストーリーでした。この悲劇をスパロボで回避したわけです。そして、これを可能とした要素のひとつがゲッター線でした。
この、知る人にとってはトラウマ級の悲劇を回避したことについて、「スパロボ史上、最大の補正」とまでいうファンもいます。筆者も同様でした。何しろジンメンの登場が決まった時点で、多くの人がプレイすることを躊躇したほどだったからです。しかし予想外のハッピーエンドに、「ゲッター線はスゴい」となったといいます。
ゲッターロボサーガにとどまらず、他の世界にまで影響を及ぼすゲッター線、今年で登場から半世紀を迎えましたが、その偉業はこれからも見ることになるかもしれません。
(加々美利治)
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