「まさかの監督本人の実話」 内容も手法もトラウマ級、でも必見のアニメ映画
マグミクス / 2024年8月15日 20時25分
■鑑賞する際にはご注意を
国内外で、数多く制作されているアニメ映画のなかには、トラウマに感じてしまうような内容の作品も存在します。単にグロテスク、というだけでなく「精神的にダメージが来る」といった声もあがるアニメ映画のなかには、どのような作品があるのでしょうか。
●『戦場でワルツを』
2009年に日本で公開された『戦場でワルツを』(監督・脚本:アリ・フォルマン)は、イスラエル制作の長編ドキュメンタリーアニメーションです。本作はイスラエル軍に従軍した監督自身の体験を元にしており、1982年のレバノン戦争で起きたある悲惨な出来事について描いています。
イスラエル国防軍の歩兵だった主人公「アリ・フォルマン」は、ある日かつての親友の話から、自分にはレバノン戦争に関しての記憶がいっさい欠落していることに気が付きます。そこで、当時の状況を知るために戦友たちを訪れたフォルマンは、自身の記憶を失った背景に1982年9月に起こったパレスチナ難民虐殺事件「サブラー・シャティーラ事件」が関係していることを知るのです。
本作は切り絵のような独特なタッチで描かれており、終始暗い雰囲気で戦争の悲惨さを視聴者に訴えかけてきます。また、兵士が射殺され血が飛び散るシーンや死体が山積みにされている場面など、見るのがつらくなる描写が多く盛り込まれた作品です。最後の衝撃的な「実写の映像に切り替わる」演出も、話題となりました。
本作は「第66回ゴールデングローブ賞」最優秀外国語映画賞ほか数々の賞に輝き、戦争の悲痛さをリアルに描いたアニメ映画として評論家からも高い評価を得ています。観ればある程度のダメージを食らうことは間違いないですが、ネット上でも「一度は観た方がいい」「フォルマン監督のトラウマ疑似体験映画で、なかなかこんな映画ないよ」と支持されている名作です。
●『整形水』
韓国のマンガ『奇々怪々』内収録の『整形水』(原作:Osd)を原作とした本作は、2021年に日本で公開されたサイコホラー映画です。幼少期から外見に対して強いコンプレックスを持つ主人公「イェジ」は、容姿を思い通りに変えることができる「整形水」を手に入れ、徐々に運命が狂い出します。
イェジは整形水によって美女へと変貌を遂げますが、ある日風呂場でうたた寝して長時間水に使ってしまったせいで、全身が溶け出してしまいました。そしてイェジは、自分の美貌を取り戻すために、人肉が必要となり、殺人にまで手を染めていくのです。
本作は「美」に対する異常な執着心や、顔を変えるために肉を削ぎ落とすグロテスクなシーンなどが見どころのひとつです。また、物語の後半ではイェジを脅かすまさかのキャラが登場し、序盤の物語からは予想できない背筋の凍る展開も目が離せません。
全編3Dアニメーションで描かれる本作は、血みどろのグロいシーンに加え、SNSでの誹謗中傷など、現代社会で起きている問題にも焦点を当てています。PG12指定ながらもかなり過激な描写が多いため、鑑賞の際は注意が必要かもしれません。
■カルトマンガ原作の衝撃アニメ映画
『地下幻燈劇画 少女椿』の原作となった『少女椿』コミックス(青林工藝舎)
●『地下幻燈劇画 少女椿』
丸尾末広先生によるマンガ『少女椿』を原作とした映画『地下幻燈劇画 少女椿』は、児童虐待、エログロ、強姦、動物殺傷など過激な世界観の作品で、1992年に公開されました。映画版は『ドラえもん』や『めぞん一刻』の原画、動画も担当していた原田浩さんが、絵津久秋名義で演出、台本、作画、監督など何役も手掛けて製作されています。
物語は、母親を亡くし孤児となった少女「みどり」が見世物小屋に引き取られるところから始まります。見世物小屋の下働きとしてこき使われる毎日を送るみどりは、さらにそこで芸人仲間から壮絶ないじめを受けるのです。
いじめの内容はかなりショッキングな内容が多く、例えばみどりに生きたままの鶏を食べさせるように強要したり、みどりが大切にしていた子犬を同僚が殺して犬鍋にされてしまったりと、とにかく目を背けたくなるシーンが満載でした。
顔をそむけたくなるような描写が多数あるものの、本作は独特の世界観が高く評価されています。また、紙吹雪やスモークなどを使う特殊な「仕掛け上映」が行われる作品としても有名で、配給担当の密閉映劇霧生館の公式サイトによると、これまで神社の境内やマンションの地下室など、映画館ではない場所でも上映されてきました。
同作は国内外で何度も上映されるも、1999年にスペインの「サンセバスチャン ホラー&ファンタジー映画祭」参加後、成田税関でマスターフィルムが没収されます。その後、製作会社に書類が届き「国内輸入禁止、上映禁止」扱いとなっています。なかなか観ることができないことも相まって、カルト的な人気の作品となりました。
(LUIS FIELD)
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