1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. 面白ネタ

『タイガーマスク』衝撃の最終回  アニメと原作マンガで異なる悲劇性

マグミクス / 2024年8月21日 21時25分

『タイガーマスク』衝撃の最終回  アニメと原作マンガで異なる悲劇性

■恵まれない子供たちのために闘う覆面レスラー

「虎だ! お前は虎になるのだ!」

 そんなハードボイルド調のナレーションで始まったのが、TVアニメ『タイガーマスク』の主題歌「行け!タイガーマスク」でした。主人公の伊達直人の少年期を描いたエンディング曲「みなし児のバラード」とともに、鮮明に覚えているファンは多いのではないでしょうか。

 TVアニメ『タイガーマスク』は、1969年~1971年に日本テレビ系で、全105話が放映されました。児童養護施設「ちびっこハウス」出身の伊達直人が、覆面レスラー「タイガーマスク」として活躍し、ファイトマネーは恵まれない子供たちのために使うという物語です。

 おりしも、新日本プロレスの真夏の祭典「G1 CLIMAX 34」の最終戦が2024年8月18日に行われ、You Tube番組『NJPWWORLD NOW!』などでハイライトシーンが配信されています。プロレスファンが熱くなるこの時期、『タイガーマスク』のふたつの最終回を振り返ります。

■タイガーの窮地を救った、謎の覆面レスラー

 プロレスの世界を舞台にした『タイガーマスク』には、伊達直人ことタイガーマスクが、次々とユニークな覆面レスラーたちと対戦する面白さがありました。なかでも有名なのが、シリーズ前半の山場となった「覆面ワールドリーグ戦」です。裏切り者のタイガーマスクをリング上で処刑するため、悪役レスラー養成期間「虎の穴」は選りすぐりの刺客を大挙出場させました。反則OKで、レフリーは「虎の穴」極東地区マネージャーであるミスターXが務めるという恐ろしいリーグ戦です。

 怪力自慢の「ザ・ライオンマン」、怪しい粉薬を包帯に仕込んだ「エジプト・ミイラ」、目がつぶれるほどの強い光を放つ「ゴールデンマスク」、覆面内に重そうな鉄球を隠した「ミスターNO」など、強烈なビジュアルの怪奇派レスラーたちが、タイガーマスクに襲い掛かります。ちなみに各レスラーのアイデアは、マンガ原作者の梶原一騎氏ではなく、作画担当の辻なおき氏が考えたそうです。

 そんな「虎の穴」の個性派レスラーたちを上回るインパクトを放ったのが、謎の覆面レスラー「グレート・ゼブラ」でした。タイガーマスクのピンチを見かねて、タッグパートナーに名乗り出た長身のレスラーです。

 それまで孤独に闘ってきたタイガーマスクにとって、最強の助っ人レスラーとなったグレート・ゼブラの正体は、ジャイアント馬場さんでした。体型を見れば、一目瞭然でしょう。しかし、タイガーマスク以外、誰もその正体を見破ることはできなかったのです。ミスターXの眼は、かなりの節穴です。

■TVアニメと思えないほど陰惨だった最終回

原作マンガ『タイガーマスク』第1巻(講談社)

 1981年にはアントニオ猪木選手率いる「新日本プロレス」のリングに、アニメさながらの四次元殺法を繰り出す「タイガーマスク」が現れ、大ブームを巻き起こしました。梶原一騎作品には、現実と虚構(フィクション)が交差する面白さがありました。一方、TVアニメと原作マンガの『タイガーマスク』は、それぞれ異なるフィクションならではの衝撃的な最終回となっていました。

 TVアニメ版の最終回「去りゆく虎」は、「虎の穴」のボスである「タイガー・ザ・グレート」との一騎打ちでした。技、力、反則の3つの要素を極めたタイガー・ザ・グレートは圧倒的な強さを誇り、フェアプレーに徹するタイガーマスクは劣勢を強いられます。

 タイガー・ザ・グレートの凶器攻撃によって、タイガーマスクの覆面は破れ、伊達直人としての素顔がテレビカメラの前で明かされるのでした。ついに顔バレしてしまい、タイガーマスク、いや伊達直人は泣きながら笑います。そして「虎の穴」で仕込まれた反則技の数々を見舞い、タイガー・ザ・グレートを血祭りにするのでした。夜7時というゴールデンタイムの放送とは思えないほど、陰惨な試合展開となっていきます。

 伊達直人はタイガー・ザ・グレートには勝ったものの、「ちびっこハウス」の子供たちがテレビ観戦している前で、反則技を使ったことを恥じ、そのまま海外へと旅立っていきます。「ちびっこハウス」でただひとり、タイガーマスクの正体を知っていた若月ルリ子さんにさえ、ひと言もなく去っていきます。ヒーローものとしては、とても苦い終わり方でした。

■『あしたのジョー』とは対照的な結末

 さらに悲劇的だったのは、原作マンガの最終回でした。TVアニメ版と違い、タイガーマスクが最後に闘う相手は、実在のプロレスラーであるドリー・ファンク・ジュニアでした。正統派レスラーとして認められたタイガーマスクは、ドリーが保持していた世界王座への挑戦が叶います。第1戦はドリーの反則行為でタイガーマスクが勝利したものの、反則ではベルトは移動せず、第2戦に命運が掛かることになります。

 試合会場に向かう途中、伊達直人はトラックに轢かれそうな男の子に気づき、自分の身を犠牲にして男の子を救います。死の間際、伊達直人は上着のポケットにタイガーマスクの覆面を入れていたことを思い出し、近くのドブ川に覆面を捨て、そこで息が絶えるのでした。ルリ子さんにも正体を伝えないままの、あっけない最期でした。

 原作マンガを読んだときは、あまりのバッドエンドに言葉を失ってしまいました。しかし、大人になって改めて読み返してみると、人知れず誰かの役に立ちたいという生き方を主人公が最後まで貫いたことに胸を打たれます。伊達直人にとっては、チャンピオンベルトよりも名前も知らぬ男の子の命のほうが大切だったのです。

 同じく梶原一騎原作である『あしたのジョー』の感動的な最終回に比べ、ドブ川のほとりで絶命した『タイガーマスク』は超バッドエンディングに思えますが、伊達直人本人は自分の生き方に悔いはなかったはずです。梶原一騎作品らしさが、『あしたのジョー』以上に感じられる最終回だったのではないでしょうか。

(長野辰次)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください