シュワちゃんの『ターミネーター2』復活上映 T-800は史上最強の「光堕ち」キャラだ!
マグミクス / 2024年8月23日 18時55分
■「少年ジャンプ」黄金世代には、たまらない展開
最強の敵が、最高のパートナーになる。『キン肉マン』や『ドラゴンボール』などの人気マンガが連載された1980年代~90年代の「週刊少年ジャンプ」(集英社)を読んでいた世代にとっては、たまらなくワクワクする展開です。
そんな「週刊少年ジャンプ」黄金時代の読者の嗜好性に、どハマりしたのがジェームズ・キャメロン監督の『T2』こと『ターミネーター2』(1991年)でした。前作『ターミネーター』(1984年)で冷血な殺人マシン「T-800」を演じたアーノルド・シュワルツェネッガーが、7年ぶりとなる続編『T2』では、主人公側の味方となって再登場しました。「闇堕ち」ならぬ「光堕ち」キャラとなったのです。
2024年8月23日(金)から9月5日(木)までの2週間限定で、『T2』は全国の映画館でリバイバル上映されることが決まっています。アクション俳優として大人気を博した、シュワルツェネッガーの代表作『T2』の面白さをクローズアップします。
■T-800を断っていたら、違った未来になった?
前作『ターミネーター』が企画された段階では、のちに『エイリアン2』(1986年)を大ヒットさせるジェームズ・キャメロン監督は無名の存在でした。カナダ出身のキャメロン監督は、初監督作『殺人魚フライングキラー』(1981年)を途中降板させられるという苦い挫折を味わった直後でした。T-800に起用されたシュワルツェネッガーも、主演映画『コナン・ザ・グレート』(1982年)はあったものの、まだ売り出し中の身。元ボディビル世界王者としてのムキムキボディは目を見張りましたが、イロモノ系と思われがちでした。
当初、シュワルツェネッガーは悪役を演じることに抵抗があり、ヒロインのサラ・コナー(リンダ・ハミルトン)を守るカイル役を演じたがっていました。キャメロン監督は昼食会で初めて会ったシュワルツェネッガーの存在感と陽気な人柄に惚れ、改めて出演を要請。シュワルツェネッガーは初登場シーンを全裸で現れるなど迫真の演技を見せ、キャメロン監督の期待に応えました。
もし、このとき、シュワルツェネッガーがT-800役を断っていたら、『ターミネーター』はそれほど話題にならなかったかもしれません。もともと続編の構想はなかったので、『T2』も制作されなかったでしょう。シュワルツェネッガーの鋼のような肉体と、作品の面白さを理解するクレバーさがあったからこそ、制作費640万ドルという低予算映画『ターミネーター』はサプライズヒットになったのです。
オーストリア出身のシュワルツェネッガーはまだ英語が達者ではなく、その点でも無口なT-800に合っていました。『ターミネーター』は大好評を博し、劇中でT-800が口にする「アイル・ビー・バック」の言葉どおり、『T2』では正義のヒーローとして帰還することになったのです。
■淀川長治さんが「シュワちゃん」と命名
『ターミネーター2』で、宿敵となる「T-1000」の圧倒的強さとしぶとさに、当時多くの観客が戦慄した。画像は「ターミネーター2 7"アクションフィギュア T-1000」(NECA)
映画史に残る最強の悪役、T-800をクールに演じきったシュワルツェネッガーの快進撃が始まります。続く主演映画『コマンドー』(1985年)は、武装集団に誘拐された娘(アリッサ・ミラノ)の救出に向かう元特殊部隊の隊長役でした。本来ならシリアスな役どころですが、シュワルツェネッガーはマンガチックにド派手に大暴れします。
さらに『ゴリラ』(1986年)や『バトルランナー』(1987年)とアクション映画に次々と主演。SF映画『プレデター』(1987年)では、人間狩りを楽しむ凶悪宇宙人とのガチンコ対決に挑みました。日本では映画評論家の淀川長治さんが「シュワちゃん」と呼び、宮沢りえさんとCM共演するなど、「シュワちゃん」の人気は日本でも爆発します。
SF大作『トータル・リコール』(1990年)もヒットさせ、アクション大作には欠かせない存在となったシュワちゃんでした。悪役から人気者になった実人生をそのまま取り入れたような形で、『T2』の制作が始まりました。制作費1億200万ドルの超大作です。T-800が戦う新型ターミネーターの「T-1000」(ロバート・パトリック)には最新のCG技術が使われ、爆破シーンなどもスケールアップしています。
■ハリウッドが生んだアメリカンドリーム
予算が大幅にアップしただけではない面白さが、『T2』にはありました。前作から7年の間に、シュワちゃんは多くの作品に出演しました。『ターミネーター』では、SFホラー映画『ウエストワールド』(1973年)のユル・ブリンナーの演技を参考にしたそうですが、コメディ映画『ツインズ』(1988年)などにも主演し、演技の幅をぐ~んと広げていました。
今回のT-800は、サラ・コナーの息子であるジョン・コナー(エドワード・ファーロング)をT-1000から守り抜くというミッションを負います。物語前半は相変わらずぶっきらぼうなT-800ですが、家庭の温かさを知らずに育ったジョンと交流し、見よう見まねで笑うことを覚えます。旧型ロボットながら、孤独な少年のよきパートナーとなり、「父性」を感じさせる温かさも身につけていくのでした。T-800のことが愛おしく思えてくる、ハートウォーミングなロードムービーとなっています。
俳優としてのキャリアのピークを『T2』で迎えたシュワちゃんは、その抜群の知名度を活かして、2003年から2011年までカリフォルニア州知事を務めることになります。キャメロン監督は、『タイタニック』(1997年)や『アバター』(2009年)などの超大作をメガヒットさせました。
ヒット作の宿命で、その後も次々と続編が公開されている「ターミネーター」シリーズですが、『T2』が「最高に面白い!」というファンは多いと思います。『ターミネーター』から『T2』が製作された過程は、ハリウッドが生んだ、まさにアメリカンドリームだと言えるでしょう。
※映画『ターミネーター2』は、Filmarks(フィルマークス)の主催により、2024年8月23日(金)より全国のイオンシネマなど142館で2週間限定上映されます。
(長野辰次)
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