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「えっ、富野作品だよ?」信じられないほど大団円『戦闘メカ ザブングル』の最終回

マグミクス / 2024年8月31日 6時45分

「えっ、富野作品だよ?」信じられないほど大団円『戦闘メカ ザブングル』の最終回

■顔は「ドマンジュウ」なのにカッコよく見える異色の主人公

『無敵超人ザンボット3』の容赦ないシリアス展開や、『伝説巨神イデオン』の人類全滅エンドなど、富野由悠季監督といえばショッキングな展開を得意としており、ファンの間では「皆殺しの富野」の異名でも知られています。しかしそうした方向性とは真逆のアニメもいくつか手掛けていました。

 とくに有名なのが1982年に放送された『戦闘メカ ザブングル』で、その牧歌的な内容から「黒富野」ならぬ「白富野」の最高傑作として知られています。

 同作はまず、主人公のキャラクターデザインからしてひと味違います。その少年「ジロン・アモス」は、まんじゅうのようなまん丸の顔に、団子のような丸い鼻が特徴的です。言ってしまえば主人公らしからぬ顔立ちで、作中では「ドマンジュウ」などと揶揄(やゆ)されていました。

 ただ、その類まれな行動力とリーダーシップ、そして仲間たちへの優しさから、作中のヒロインたちはこぞって彼に夢中になります。視聴者のなかにも、物語が進むにつれて「ドマンジュウ」であるはずのジロンがカッコよく見えた……という人は多いのではないでしょうか。

 またストーリーに関しても『機動戦士ガンダム』や『伝説巨神イデオン』とは異なり、宇宙戦争を主題としたスペースオペラではありません。

 物語の舞台となるのは、広大な荒野が広がる「惑星ゾラ」です。漆黒の宇宙ではなく、茶色い土煙が舞う地上が主戦場となっており、まるで西部劇のようなイメージでした。

 そして「惑星ゾラ」にはまともな警察機構がなく、殺人や窃盗などどんな罪であっても3日間逃げ切れば許される「三日の掟」という時効システムが根付いていました。主人公のジロンはこの「三日の掟」に逆らい、両親の仇である「ティンプ・シャローン」を追いかけ続けています。

 彼の復讐劇を軸としながら、バイタリティにあふれた人びとの力強い生きざまを描いていくのが同作の大まかなストーリー展開です。そしてその最終回も富野作品にしては珍しく、大団円と呼べるものでした。

■劇場版ではさらなるハッピーエンドへ

1983年7月に公開された劇場版『ザブングルグラフィティ』キービジュアル (C)創通・サンライズ

 作品中盤、ジロンはティンプが「イノセント」と呼ばれる支配階級の人びとと裏でつながっていたこと、そしてイノセントのNo.2である「カシム・キング」という男が一般市民の敵であることを知ります。ここからジロンたちとカシム一派の戦いが始まり、最終回にあたる第50話「みんな走れ!」で、ついに長きにわたる戦いに決着がつきました。

 ジロンたちの勢いに追い詰められたカシムは、味方だったはずの部下やティンプからも見捨てられ、とうとう後がなくなってしまいます。半ばヤケクソで残りのミサイルを一斉発射するものの、その爆発によって倒れてきた大型ミサイルの下敷きになり、呆気ない最期を迎えるのでした。

 カシム一派の野望が崩れ去り、ジロンの仲間たちが勝利の宴を始めるなか、ひとり自責の念に駆られている人物がいました。ヒロインのひとりである「エルチ・カーゴ」です。

 というのもエルチはカシムに洗脳されていたとはいえ、一時的にジロンたちを殺そうとしていました。またカシムとの最終決戦では、ミサイルから彼女を守るべく、仲間のひとりである「ファットマン・ビック」が犠牲となっています。

 エルチはその悔恨から仲間たちの元を去ろうとしましたが、最終的にジロンの優しさに負け、戻ることを決心しました。しかも戻った先には、死んだと思われていたファットマンの姿もあり、物語はまごうことなきハッピーエンドで幕を閉じるのです。

 ちなみに1983年に公開されたTVシリーズの総集編である劇場作品『ザブングルグラフィティ』は、さらにハッピーな展開を迎えていました。まずカシム一派との戦いのなかで失明したエルチは、劇場版では視力を取り戻すことが示唆されています。加えてTV本編では命を落とした「アーサー・ランク」も生き残っており、物語の最終盤でちゃっかりオイシイところをかっさらっていました。

 富野監督が手がけた作品にしては極端に平和的で、絵に描いたようなハッピーエンドを迎える本作『戦闘メカ ザブングル』について、いまなおネット上では、「富野監督の作品にしては奇跡の明るさ」「最終回は特に清々しい演出の連続で爽快だった」「とにかくキャラがみんなエネルギッシュで良い」などと語り草となっています。

「白富野」の作品であっても、刺激的なストーリーであることは「黒富野」と変わりません。放送から40年以上が経った今、振り返っても、富野監督の才能には驚かされます。

(ハララ書房)

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