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昔のモビルスーツ引っ張り出すって胸熱だけど非現実的じゃない? リアル兵器の場合は

マグミクス / 2024年8月30日 6時45分

昔のモビルスーツ引っ張り出すって胸熱だけど非現実的じゃない? リアル兵器の場合は

■「ご長寿MS」は実のところ現実的

「宇宙世紀」のガンダムシリーズにおいて、人類はモビルスーツ(MS)という人型機動兵器の開発により、戦争の様相を根本的に変容させました。その起源は、言うまでもなく「一年戦争」(UC0079年)です。この戦争では大規模に投入されたMSが、人類の歴史に深い刻印を残しました。

 一年戦争中、モビルスーツは瞬く間に普及し、宇宙世紀の軍事力の中心的存在となりました。技術は日進月歩、むしろ秒進分歩の勢いで進化し、わずか1年という短期間に強力かつ多機能な新型機が次々と生み出されました。

 しかし興味深いことに、一年戦争後その進歩は明らかに停滞します。最新鋭の機体が華々しく戦場を駆ける一方で、古参のモビルスーツが長期間にわたり現役で運用され続けていることからもその現象は明らかです。

 時系列的に一年戦争以降を描く作品では、しばしば一年戦争時代のMSが登場します。特に「ジム」シリーズはその代表例で、「ジムII」や「ジムIII」といった性能向上型は、一年戦争時代の設計を引き継いでおり、さらには一年戦争当時に生産された機体を近代化改修したものも存在します。

 なかでも長期間にわたって使用されているMSとして、『逆襲のシャア』(UC0093年)と『F91』(UC0123年)で運用された「ジェガン」が挙げられます。少なくとも30年以上使用されていることが確定的であり、さらにアニメ化されていない後の時代を扱った派生作品にも登場しています。

 こうしたMSの長寿命は、おそらく「一年戦争のような全人類を巻き込む大規模な戦争が発生していないため、消耗が少ないこと」、また「MSという兵器がほぼ完成の域に達し、細かなシステムのアップグレードで対応可能であること」が理由と考えられます。

 しかし、MSがこれほど長く使用されても、整備性や安全性に問題はないのでしょうか。現実の兵器と比較してみましょう。

 現実世界でも、戦闘機や戦車は数十年単位で使用されることを前提に開発されています。例えば、航空自衛隊の主力戦闘機F-15「イーグル」は、原型機の初飛行が1972年です。かつて最強の戦闘機と讃えられたF-15も、登場からすでに半世紀以上が経過し、特に「ステルス性」の欠如が大きな弱点となっています。

 F-15は基本設計が古いものの、エンジン推力の向上や搭載電子機器(アビオニクス)のアップグレードにより、最新鋭機に匹敵する能力を部分的に保持しています。また、大型機体による搭載力や航続距離の優位性を活かし、依然として第一線で運用され、新型のF-15EX「イーグルII」の生産も続いています。

 戦車の例ではさらに極端です。2022年のロシアによるウクライナ侵攻では、ロシアはウクライナの必死の抵抗により、数千両ともいわれる大量の戦車を失いました。ロシアの戦車産業はこの損失を補う能力がなく、ソビエト時代に退役し保管されていた車両を修理して戦線に投入しており、その中には1940年代に開発されたT-54さえ含まれています。

 また、1952年に初飛行したB-52「ストラトフォートレス」爆撃機や、1961年に初飛行したCH-47「チヌーク」輸送ヘリコプターはアメリカ軍において100年以上、使用されることがほぼ確実視されています。

 航空機も戦車も、「乗りもの」としての基本機能がほぼ完成されているため、装備のアップグレードや運用方法次第で十分な戦力となり得るのです。これに比べれば、30年程度のジェガンはまだ若い部類だといえるでしょう。

 ただ、『F91』の劇中で時代遅れの機体という扱いはされており、その後いつまで運用されたのかは不明ながら、少なくとも30年後が舞台の『Vガンダム』(UC0153年)ではすっかり姿を消していたようです。したがって、長く見積もっても半世紀程度になりますが、それだけ運用されたなら「ジェガン」も立派なご長寿MSと呼んで差し支えないでしょう。

(関賢太郎)

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