「日本リスペクト」すごすぎ!な『ベイマックス』だが 当時の宣伝と「ラスト改変」への批判とは
マグミクス / 2024年9月6日 20時10分
■原作は「ヒーローもの」だった
2024年9月6日の「金曜ロードショー」では、『ベイマックス』が放送されます。本作でまず重要なのは、「日本へのリスペクト」でしょう。公開当時も話題になった、「日本愛」について振り返ります。
●サンフランシスコと東京を融合させた世界観の素晴らしさ
日本へのリスペクトがはっきり見えるのは、まず「ロボットもの」であることです。主人公の少年「ヒロ」の部屋の壁には『鉄人28号』のように見える時計が掲げられていますし、ケアロボットの「ベイマックス」が繰り出す「ロケットパンチ」は、言わずもがな『マジンガーZ』が元ネタでしょう。
さらに、架空都市「サンフランソウキョウ」の作り込みが重要です。名前の通り、アメリカの西海岸、カリフォルニア州の北部の都市サンフランシスコと、東京が融合したような都市となっており、ゴールデンゲートブリッジらしい巨大な橋がある一方で、「鳥居」や「鯉のぼり」などの日本的文化が当たりに存在します。それぞれをくどくどと言葉で説明したりせず、「そこにある」と思える、説得力のある世界が構築されているのです。
また、ハリウッドの実写映画では、よく「トンデモ日本」と呼ばれる、ズレた文化や変なカタカナの使われ方がされる場合もありますが、本作の看板や装飾品からそうした違和感を得ることはほとんどありません。日本をリスペクトするに当たって、しっかりディテールを詰めて、チェックをしている証拠でしょう。
●日本のポスターや予告編には批判の声もあったものの結果的には好評の意見が多め
そうした作品内の日本へのリスペクトが素晴らしい一方で、日本国内における作品の「宣伝」には疑問の声もありました。
『ベイマックス』は、実は「スパイダーマン」や「アイアンマン」でもおなじみの、「マーベル」社のアメリカンコミックを原作とした(インスパイアされた)映画です。原作も映画も原題は『BIG HERO 6』であり、海外では「ヒーロー映画らしい」ポスターも多く展開していました。
一方で、『BIG HERO 6』がもともとかなりマイナーな作品であったことと、日本ではかわいい見た目のケアロボットの「癒やし」の要素を推すためなのか、タイトルは『ベイマックス』へと変更され、さらにポスターは「夕焼けを背景にした」ビジュアルかつ、「“優しさ”で世界を救えるか?」をキャッチコピーとして添えた、「感動路線」のポスターとなっていたのです。
そのため「本当はヒーロー映画なのに、予告編やポスターがハートウォーミング方向へとミスリーディングされている」という批判もあったのですが、本編で「ロボットの交流を通じて、兄を失った少年の心を癒やす、感動のドラマがつむがれている」のも事実です。そのため、「別に間違っていない」「痛快なヒーローアクション映画でびっくり!」「いい意味で裏切られた」「タイトルも『ベイマックス』で良い!」など、宣伝に好意的な意見も多く見られました。
※以下からは映画『ベイマックス』本編のラストシーンのネタバレに触れています。ご注意下さい。
●ファンからも強く批判を受けたラストの演出の変更
しかし、本作を愛してやまない人からも、公開当時から強い批判を受けていた点があります。それは『BIG HERO 6』が『ベイマックス』へとタイトル変更されていたことに伴って、ラストの演出が変更されていることです。
日本のソフトや配信で観られる日本語吹き替え版では、最後にヒロが「ベイマックスとともに!」と言って、『ベイマックス』のタイトルロゴが表示されます。しかも、字幕版では、そのヒロの最後のセリフが「削除」されており、『BAYMAX』のタイトルロゴが表示されます。
実は、もともとの原語でのヒロの最後のセリフは「Who are we?(僕らは誰かって?)」であり、その「回答」として最後に原題の『BIG HERO 6』のロゴが大きく出る演出になっていました。つまりは「BIG HERO 6というヒーローチームが誕生した!」ことを示すエンディングでもあったのです。
このタイトル変更にともなう演出により、映画のメッセージも変わってしまっている、「改悪」だと公開当時に物議を醸しました。現在でも、もともとの「Who are we?」というセリフの後に『BIG HERO 6』のロゴが大きく出る演出を観るには、海外版のソフトを買うしかありません。
吹き替え版ではまだ「ベイマックスとともに!」という新たな解釈が付け加えられている、そのタイトルに見合った結末になっているという好意的な意見もありますが、字幕版で「ただ最後のセリフを消して最後のロゴを変えるだけ」という対応には強い批判の意見が見受けられました。
いずれにせよ、作品の売り方(宣伝)のためとはいえ、「作品のラストの演出を変えてしまうことはいかがなものか」と、噴出した批判から改めて考える意義はあるでしょう。せっかくの日本へのリスペクトにあふれた作品なのですから、その対象となる人(日本人)のためにも、納得できる届け方をしてほしいと願います。
※タイトルを修正しました(2024年9月6日20時45分)
(ヒナタカ)
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