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「綾波派、ちょっと来なさい」愛され無口系ヒロインの系譜と彼女たちの「共通項」は

マグミクス / 2024年9月7日 21時25分

「綾波派、ちょっと来なさい」愛され無口系ヒロインの系譜と彼女たちの「共通項」は

■男性にとって女性は永遠の謎

 アニメの人気ヒロインのなかには、感情表現が乏しい無口なキャラクターが少なくありません。そのようなヒロインに魅力を感じてしまうのはなぜでしょうか。

 さて「無口系ヒロイン」、創作物におけるその源流をたどるとなるとキリがなくなりそうです。よって、「2024年現在のアニメにおける無口系ヒロインの原型」と、少しだけ条件をつけてみると、おそらく『新世紀エヴァンゲリオン』の「綾波レイ」(以下、綾波)の名前が挙がるでしょう。同TVアニメ版以降のアニメやマンガ、ライトノベル作品には、彼女の影響を感じられるキャラクターが数多く登場しました。

 綾波の第一印象は物静かで生活感のない、無機質な少女といったものでしたが、主人公「碇シンジ」との交流が深まるにつれて、少しずつ人間らしさを見せるようになります。普段は控えめな綾波が使徒との戦いで見せる強い覚悟と、健気な自己犠牲に多くのファンが心を奪われました。

 綾波の魅力とは「人形のような少女が運命の少年と出会って意志をもった人間になる」「透明感があって健気で壊れそうな少女に保護欲がかきたてられる」という、王道で分かりやすいものだといえるでしょう。

 しかし彼女の魅力はそれだけではありません。「綾波レイ」というキャラクターの描かれ方に人形愛めいたものが感じられるからです。そこは『新世紀エヴァンゲリオン』最大の謎である「人類補完計画」のシナリオと深い関係があります。

 実は「綾波レイ」は純粋な人間ではなく、大量に製造される「碇シンジの母親のクローン」の一体に「魂」が宿ったものでした。つまりシンジ君は自分の母親の形をした少女に特別な感情を抱いていた、ということになります。また綾波の「肉体」が文字通り人形のように破壊される点も、彼女を語る上で避けて通れません。

 TVアニメ第23話「涙」では、「赤木リツコ」が水槽のなかにある大量の綾波のボディを破壊し、映画『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』では、地球サイズに巨大化した綾波の崩壊していく様子が、グロテスクでありながら非現実的なほど美しく描かれ、一部のファンのトラウマになりました。

 綾波レイという女の子には、単なる「萌え」のひとことでは言い表せない複雑さがあるといえるでしょう。

■数多の「綾波フォロワー」のなかでも別格のふたり

「TVアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』 キャラクターソング Vol.2 長門有希」(ランティス)

『涼宮ハルヒの憂鬱』に登場する「長門有希」(以下、長門)は、メインヒロイン「涼宮ハルヒ」(以下、ハルヒ)が結成した「SOS団」の団員のひとりです。長門は感情表現が乏しく無口な少女で、感情豊かで行動力の塊のようなハルヒとは対称的です。

 そのような長門の正体は、「情報統合思念体(宇宙人)」によって造られた「対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース」です。彼女は「世界を思い通りにゆがめてしまう」力を持つハルヒを観測するために送り込まれたのでした。

 無自覚に世界へ大きな影響を与えてしまうハルヒに振り回される主人公「キョン」は、超常現象が起きるたびに長門に相談し、その「超科学」に頼ります。ハルヒという宇宙の大問題にキョンと長門は協力して対処しているのです。

 ある意味ではキョンとハルヒの関係よりも、キョンと長門の関係のほうが共通目的のあるぶん、濃密かもしれません。ハルヒとは異なるベクトルでヒロインとしての存在感を発揮している長門は、ファンからの篤い支持を受けており、スピンオフマンガ作品『長門有希ちゃんの消失』が連載されるなどしました。

『機動戦艦ナデシコ』で「戦艦ナデシコ」のオペレーターを務める天才少女「ホシノ・ルリ」(以下、ルリ)もまた、無口で感情表現に乏しいタイプのヒロインといえるでしょう。彼女は遺伝子操作で生まれ、天才になるべく特殊な教育環境で育てられたため、感情面で未成熟なのです。

 ルリは11歳でありながら極めて高い知能を持つため、個性豊かな年長のクルーたちの巻き起こす騒ぎを「バカばっか」と、一歩引いた態度で静観していました。しかし多くの苦難を乗り越えることで、やがて戦艦ナデシコのクルーに家族的な感情のつながりを持つようになります。

 TVアニメ終了後の映画『機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness』では、16歳に成長したルリが主役として大活躍しました。

 ここまで見てきたように、無口系ヒロインの多くは特殊な背景を持っているケースが多く、無垢で謎めいた神秘性があります。視聴者の「彼女についてもっと知りたい」という好奇心を刺激するのは、まさにヒロインが必要以上に内面を表現しない(あるいはできない)からでしょう。

 その結果、視聴者はヒロインを理解するため、彼女の微細な表情や言葉の意味に注目します。つまり無口系ヒロインには「視聴者が他のキャラクターに払う以上の注目」が集まる構造があるのです。

 無口系ヒロインが愛され続けるのは「視聴者自身にその内面を想像させる」からでしょう。人は全てが明らかになっているものよりも、隠されているものにこそ、価値を感じるのです。

(レトロ@長谷部 耕平)

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