「ファイヤープロレスリング」PCエンジンからプレステまで語り尽くせぬ「名勝負数え歌」
マグミクス / 2020年3月27日 18時40分
■プロレスマニアも納得のクオリティと設定
2020年3月19日(木)、PCエンジンの名作ゲームを収録した「PCエンジンmini」が発売されました。PCエンジンのソフトで忘れられない1本を個人的に選ぶとしたら、筆者の頭の中にまず思い浮かぶのが、『ファイヤープロレスリング』です。
それまで、家庭用ゲーム機対応のプロレスゲームといえば、セガSG-1000用の『チャンピオン・プロレス』(1985年)や、ファミコン用の『タッグチームプロレスリング』(1986年発売)、そして懐かしの任天堂ディスクシステムの『プロレス』(1986年発売)などがありましたが、レスラーが選択不能だったり、タッグマッチのみだったりと、現実世界のプロレスと大きくかけ離れた設定にやや不満点があったのも正直なところです。
そんなプロレスゲーム黎明期を経て、1989年にPCエンジン向けに発売された『ファイヤープロレスリング コンビネーションタッグ』の登場は、まさに夢のような出来事でした。登場するレスラーのバリエーションもかなり豊富です。
アントニオ猪木(以下、プロレスラーの敬称略)をモデルとした“ビクトリー武蔵”と、前田日明をモデルにした“冴刃明”の“キングファイターズ”や、全日本プロレスの“鶴龍コンビ”をモチーフとした“トミー・ボンバー”と“サンダー・龍”の“爆雷砲”、ハンセン&ブロディをモデルにした“スター・バイソン”と“ビッグ・ザ・グレート・ブル”の“バイオレンス・モンスターズ”などが登場キャラとして名を連ねており、レインメーカーのマネージャー役だった時代の「外道さん」風に言えば「レェェェベルが違う」クオリティとなっています。
当時のプロレスマニア目線でいえば、「1986年2・6(プロレスマニア的には日付はニイテンロクと読みます)の両国国技館での猪木対藤原喜明戦の後、猪木にハイキックをブチ込んだUWFの前田の事件からも“キングファイターズ”はあり得ない」という部分など、ツッコミどころもあったのですが、ともかく、それまでの「プロレスゲーム」に比べると「ファイプロ」はマニア垂涎の出来でした。
レスラーが組み合い「腰をカックンと落とした」タイミングで技を仕掛けるというシステムも、それまでの「ボタン連打系」のゲームと違いますし、「小技ボタン」で相手を弱らせてから「大技」を連発してフィニッシュ、というのもプロレス的な試合運びを再現できるものとなっています。
■現実のプロレス界とリンクした、ストーリーモードが熱い
ストーリーモードを搭載した、プレイステーション用の『ファイヤープロレスリングG』(スパイク)
「ファイプロ」シリーズはその後、ゲームボーイ用の『プロレス』、PCエンジン用の『2ndバウト』を経て、スーパーファミコン用の『スーパーファイヤープロレスリング』が1991年に登場。ダメージを受けたレスラーの頭の上に星が出る「ピヨピヨ状態」や「Xボタンでのダッシュ」が追加され、登場レスラーも隠し要素を入れると24名まで増加。このソフトから追加された「道場モード」で“若元一徹”先生に「ダメだ!」と叱咤されながら技を鍛え上げたのも懐かしい思い出です。
その後、「ファイプロ」シリーズはPCエンジン用の3作目にあたる『ファイヤープロレスリング3 レジェンドバウト』やスーファミの『スーパーファイヤープロレスリング2』、『ファイプロ女子 ALL STAR DREAMSLAM』に続き、プレイステーション用第1弾としてシリーズ初のフルポリゴン作、『ファイヤープロレスリング アイアンスラム’96』も発売(どちらかといえば『キング・オブ・コロシアム』の元祖と呼びたい同作を「ファイプロ』シリーズに数えることには正直抵抗があるのですが)。“名勝負数え歌”のごとく多くのソフトが発売されました。
シリーズ作のなかで忘れられない要素は、スーパーファミコン用の『スーパーファイヤープロレスリングSPECIAL』(1994年、以下SPECIAL)やプレステ用の『ファイヤープロレスリングG』(1999年発売、以下ファイプロG)に収録された「ストーリーモード」です。
今でこそ新日本プロレスを中心に、プロレス人気が再燃していますが、この「ストーリーモード」が追加された90年代半ばから2000年にかけての時代は、UWFが3派(後のパンクラスも合わせると4派)に分裂し、「UFC」や「プライド」が台頭し総合格闘技が盛り上がりを見せた時期です。
そんな時代を反映してか、『SPECIAL』のストーリーはかなりドンヨリとしたものになっているのですが、ファンの間ではこのソフトを最高傑作とする人も多いようです。筆者としては「若元道場」での記者からのインタビューによって「VIEW JAPAN」や「OLIVE JAPAN」のメジャー団体や格闘技志向の「UWH」、インディー団体の「新生IW」やアメリカなどさまざまなルートに分岐する『ファイプロG』のシナリオの方が好みなのですが、いずれにしても「UWH」と“冴刃明”に対する制作者サイドの過剰な愛が爆発した内容です。
現実世界の1988年に『新生UWF』が旗揚げされ、ガチガチの“U信者”だった大学時代の筆者(渡辺まこと)も、当然格闘技路線を選び、かなりハマってプレイした記憶があります。
ここまで書いてもまだまだ語りつくせない「ファイプロ」シリーズですが、その魅力はやはり「現実のプロレスの世界」とリンクしているがゆえ。なかなか筆が止まらないのもプロレスマニアの性(さが)と、お許しいただければ幸いです。
(渡辺まこと)
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