なんのお約束だ? ロボアニメの雄『ゲッターロボ』も例にもれず悲劇的結末だった!
マグミクス / 2024年9月13日 7時35分
■主人公ロボットがあっけなく爆発炎上!
画期的な3体合体システムを持ち、後の「合体・変型ロボット」の元祖になったのが、永井豪先生、石川賢先生とダイナミックプロ原作のアニメ『ゲッターロボ』です。今年で放送50周年を迎えた本作は熱狂的なファンを持つことでも知られています。
「流竜馬」「神隼人」「巴武蔵」という個性豊かな3人のパイロットが操るゲットマシンが合体、空中用の「ゲッター1」、地上・地中用の「ゲッター2」、海中用の「ゲッター3」に変形し、恐竜帝国のメカザウルス相手に活躍する姿を見て、胸躍らせた子供たちも多かったでしょう。
しかし、1975年5月に放送された最終回「恐竜帝国のほろびる日」は悲壮感あふれるエピソードでした。なんとゲッターロボがまったく活躍しない上、武蔵が「特攻」して戦死してしまうからです。なぜ武蔵は「特攻」しなければならなかったのでしょうか。
最終回以前から、ゲッターロボを擁する早乙女研究所と、帝王ゴール率いる恐竜帝国は、お互いの本拠地壊滅を目指してし烈な戦いを繰り広げていました。なお、帝王ゴールの上役にあたる真の支配者、大魔人ユラーが登場していたので、「帝王」と言いつつもゴールと配下のバット将軍、ガリレィ長官には、どこかブラック企業の中間管理職的な悲壮感が漂っていました。
第50話「帝王ゴール 決死の猛反撃」では、失敗を重ねるゴールに業を煮やしたユラーが、巨大メカザウルス「無敵戦艦ダイ」を貸し与えます。身長38m、重量220tのゲッター1に対して、ダイは全長530m、重量250万t(数字は『ゲッターロボ全書』双葉社より)というとてつもない大きさです。戦車とフィギュアぐらいの差があるゲッター1はまるで歯が立ちません。しかも、集中砲火によってコマンドマシンの「早乙女ミチル」が瀕死の重傷を負ってしまいます。
ここからが最終回です。ゲッターロボはなんとか窮地を逃れますが、ダイは進撃を続け、戦略爆撃機による爆撃で東京を壊滅に追い込みます。早乙女研究所では竜馬がゲッターロボでの出撃を訴えますが、「早乙女博士」は戦力差が大きすぎると却下。武蔵も竜馬に同調しますが、早乙女博士はにべもありません。
「それじゃ、何かね。武蔵くんは特攻隊のように、ゲッターロボで突っ込むべきだと言うのかね?」
「場合によっては仕方がないでしょう!」
このふたりの会話がラストへの伏線になっているのが分かります。そうこうしている間に、無敵戦艦ダイは東京の中心部(「前楽園球場」があった場所)に腰を据え、基地を建設してしまいます。
早乙女博士とゲッターチームは起死回生の策として、対空砲火のない爆撃機の発進ルートに三段ロケット弾をぶちこむ作戦を立てますが、武蔵の操縦ミスによって失敗に終わり、なんとゲットマシンは3台とも爆発炎上してしまいます。『マジンガーZ』も最終回で主役ロボットが大破しますが、こちらはあまりにもあっけない最期でした。なお、武蔵の操縦ミスは第1話でも描かれています(脚本はいずれも上原正三さん)。
■敵に突撃した武蔵の意外な最期の言葉とは
ゲッター3形態への合体変形を完全実現。「ダイナミックチェンジR ゲッターロボ」(FREEing) (C)永井豪・石川賢/ダイナミック企画
竜馬と隼人も重傷を負い、責任を感じる武蔵は「おいら、どうすりゃいいんだ」と泣き崩れます。もはや早乙女研究所でまともに稼働するのはコマンドマシンだけです。早乙女博士はコマンドマシンに高性能ミサイルを積んで自ら出撃しようとしますが、それより先に満身創痍のミチルが出撃しようとしていました。それに気付いた武蔵は、当身をして気を失ったミチルに本心を打ち明けます。
「おいら、ミチルさんが大好きです! だから危険な目に遭わせたくないんです!」
武蔵のミチルへの恋心は『ゲッターロボ』全編にわたって描かれていました。武蔵は攻撃失敗の責任を感じており、かつ戦えるパイロットは自分しかいないという状況、さらにミチルへの恋心によって、無謀な出撃を決心したのです。しかし、武蔵のコマンドマシンはダイの集中砲火を浴びて炎上し、ミサイルが発射できなくなってしまいます。
「ああ、しまった! ミサイルが発射しない! うわぁ、ちきしょおおおおおお!」
こう叫びながら武蔵はダイの中央部に突撃して大爆発を引き起こしました。隣の基地にいたゴールとユラーは炎上しながら暴れるダイに踏み潰されて死亡します。武蔵の犠牲によって恐竜帝国は滅亡したのです。
振り返ってみると、武蔵はけっして「特攻」したわけではないことが分かります。マンガ版のように、ゲッターロボに乗って大暴れしながら壮絶な爆死を遂げたわけでもありません。シリーズを通して活躍した主人公のひとりが戦死するのですから、ヒロイックな言葉のひとつでも言わせたくなりそうですが、武蔵は断末魔の叫びをあげながら不慮の最期を遂げたのです。
「戦争を知る者として、その悲惨さを作品を通じて子供たちに伝える義務がある」と考えていた勝田稔男プロデューサーと、戦前の沖縄で生まれて強い反戦意識を持っていた脚本家の上原さんは、「特攻」を美化したくなかったのかもしれません。『ゲッターロボ大全』(双葉社)の解説は、作品全体に漂う「反戦作品としてのムード」を指摘しています。『ゲッターロボ』は、カッコよく勇ましいだけのロボットアニメではなかったのです。
高い人気を誇った『ゲッターロボ』は『ゲッターロボG』(1975年)へと続き、武蔵の後継者として「車弁慶」が登場しました。映画『グレートマジンガー対ゲッターロボG 空中大激突』(1975年)では、異なる形で武蔵の戦死と新旧ゲッターロボの交代が描かれています。
その後も原作者の石川賢先生をはじめとする多くのクリエイターによって、メディアを超えた壮大な「ゲッターロボサーガ」が紡がれていきました。
(大山くまお)
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