“意図的”な演出も… 衝撃的な“作画崩壊”がいまだに語り継がれるアニメ3選
マグミクス / 2024年9月17日 19時55分
■途中まで美麗作画だったのに、なぜ?
アニメにおいてキャラクターの顔や動きが大きく崩れた際には、「作画崩壊」と呼ばれるのがお決まりです。最近はあまり見かけることがないものの、ちょっと歴史をさかのぼればアニメファンの間で物議を醸した作品がいくらでも出てきます。
●『ふしぎの海のナディア』
1990年よりNHKで放送された『ふしぎの海のナディア』は、「ブルーウォーター」と呼ばれる不思議な宝石を持つ少女「ナディア」と、発明好きの少年「ジャン」による冒険を描いたアニメです。
制作を手がけたのは『新世紀エヴァンゲリオン』などで有名な「ガイナックス」で、庵野秀明監督の出世作としても知られています。さらにキャラクターデザインに貞本義行さん、演出・絵コンテには樋口真嗣さんや窪岡俊之さん、増尾昭一さんといったそうそうたる顔ぶれがそろっていました。
そのようなスタッフ陣の功績もあり、当初は美麗な作画によって話題を呼びました。しかし途中から雲行きが怪しくなり、第23話より始まる「島編」から著しい作画崩壊が目立つようになります。
なぜそんな落差が生まれたかというと、「島編」の作画を海外に外注したところ、その仕上がりがあまりにも酷かったことが原因だといわれています。ただ、物語の最終章にあたる第35話から最終話までの部分、通称「N-ノーチラス号編」に入ると、再び作画のクオリティはグッと良くなります。
結果的に『ふしぎの海のナディア』は名作アニメとして名を残すことになりましたが、いまだに作画崩壊の代名詞として脳裏に刻み込まれている人も多いのではないでしょうか。
●『創聖のアクエリオン』
大人気ロボットアニメ「アクエリオン」シリーズの第1作『創聖のアクエリオン』にも、作画崩壊で有名な回がありました。それは第19話「けがれなき悪戯」です。
主人公の「アポロ」、「シルヴィア」、「紅麗花」といった3人のアクエリオンのパイロットたちは、敵の作戦によって奇妙な世界に飛ばされます。そこはゆるっとした単調な線、淡い色彩で構成されたシンプルな世界でした。おまけにアポロたちも、モブキャラのような顔になってしまいます。あまりの衝撃に、放送当時は賛否両論が巻き起こりました。
しかし実際にはスケジュールの遅れなどが理由の作画崩壊ではなく、意図的な演出だったそうです。当時のスタッフブログでは、第19話に「人がどれだけ視覚情報に頼っているか」といったメッセージが込められていたことが明かされていました。
確かに手抜きのような作画ではありましたが、アニメーションの動きという点では非常にヌルヌルと動いており、逆に手間がかかっているのではないかとも思えてきます。非常に印象的な回だったことは間違いないでしょう。
■伝説となった「ヤシガニ事件」
『ロスト・ユニバース DVD-BOX』(キングレコード) (C)神坂一・義仲翔子/富士見書房・テレビ東京・テレビ東京メディアネット
●『ロスト・ユニバース』
作画崩壊といえば、1998年に放送されたアニメ『ロスト・ユニバース』も忘れてはなりません。同作は「スレイヤーズ」シリーズで知られる神坂一先生のSFライトノベルをアニメ化したもので、宇宙を舞台に主人公「ケイン」と仲間たちの冒険が描かれていきます。
賛否を呼んだのは、第4話「ヤシガニ屠る」でした。この回ではキャラが紙芝居のような大雑把な動きをしており、ときには2~3枚の絵を繰り返し表示しているだけであろう不自然なシーンも多く差し込まれていました。誰が見てもハッキリと分かるほどの作画崩壊が起きていたのです。
原因としては予算の不足やスケジュールのひっ迫など、さまざまな理由があったらしいのですが、結果的にこの作画崩壊は大きな波紋を呼びました。アニメ専門チャンネルなどで再放送されるときには、リテイクされたバージョンが使われています。
ちなみに当時はインターネット黎明期で、アニメファンが掲示板などで作品を語り合うことが一般的になりつつありました。そうした背景もあってたちまち情報が広まり、アニメファンの間で作画崩壊が「ヤシガニ」と呼ばれるようになったのです。
令和のアニメではお目にかかる機会が減っている作画崩壊ですが、それはそれでちょっと寂しい気もしてしまいます。ある意味、後世へと大切に語り継ぐべき「愛すべき文化」なのかもしれませんね。
(ハララ書房)
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