正しいけどおかしい? 「95年の映画」という体の『バズ・ライトイヤー』が賛否分かれた理由
マグミクス / 2024年9月27日 20時45分
■「こんなのバズじゃない」という厳しい意見も
2024年9月27日の「金曜ロードショー」で、2022年公開のピクサーのアニメ映画『バズ・ライトイヤー』が放送されます。その冒頭のテロップでは、「1995年 アンディは誕生日にバズの人形をもらった」「バズは大好きな映画の主人公」「これはその映画だ」と表示されていました。つまりは、「『トイ・ストーリー』シリーズのおもちゃのバズの元ネタの映画」という体裁のスピンオフなのです。
しかし、実際に映画本編を見終わった人からは、「1995年の映画らしくない」「その設定は必要だったの?」と違和感を覚える声が続出し、なかには「この内容でアンディがバズのおもちゃを欲しくなるだろうか?」「欲しくなるのはかわいい相棒のネコのソックスのおもちゃのほうでは?」「そもそもこの映画でグッズが販売されるのか」といった意見もありました。
●ヒーローのアンチテーゼのような物語
そのような意見が出る理由のひとつは、ヒーローのアンチテーゼともいえる物語にあります。
本作の「バズ」は優秀なスペースレンジャーではあるものの、正義感と責任感が強すぎるがあまり他人に頼るのが苦手で、その結果として独善的な性格にもなっていました。それは「有害な男らしさ」のような印象もあり、意図的に「イヤな面もあった青年の成長の物語」として作られていているのです。
しかし、1995年にその批判精神が込められたファミリー向け映画は多くはないでしょうし、少なくとも当時の子供が素直に全てを肯定できて、憧れるヒーロー像ではないでしょう。
●同性愛の描写には意義はあるが、当時の時代背景にはそぐわない
もうひとつの理由は、「レズビアンのカップル」が当たり前のように登場することです。その描写は公開当時に物議を醸し、14か国での上映中止が決定してしまいました。
その「当たり前に描かれる」同性愛そのものは、序盤の驚きの展開とリンクしていますし、彼女たちの人生そのものを祝福するような、それでいて尊くも切ない、感情を揺さぶる展開が待ち受けているので、個人的には肯定したいです。
しかし、同性愛差別はもちろん、人種差別も今よりも苛烈だった1995年の映画という体裁にしてしまったため、「当時の映画で同性愛者を、しかも黒人女性をこれほどまでにポジティブに描くファミリー向けのSF映画があるだろうか」と、「歴史改変」の問題を感じてしまいました。
●『トイ・ストーリー』シリーズのバズとは別人
そうした「1995年の映画なのに時代を先取りしすぎ」な問題だけでなく、『トイ・ストーリー』シリーズでのバズを知っている人からは、そもそも「別人」であることが気になる方もいるでしょう。
もちろん、『トイ・ストーリー』シリーズのおもちゃのバズと、その元ネタの映画におけるスペースレンジャーのバズが、別人であるというのは自明なことです。しかし、前述した性格はもちろん顔つきも異なりますし、声優も字幕版ではティム・アレンさんからクリス・エヴァンスさんへ、吹き替え版では所ジョージさんから鈴木亮平さんへとバトンタッチされています。
設定だけでなく、意図的とはいえ見た目や声までも変えてしまったことから、「こんなのバズじゃない」と、悪い意味での違和感を覚えた方がいるのも致し方ないでしょう。
●それでも肯定したい理由
それでも、筆者個人は本作が大好きです。序盤で過酷な現実をこれでもかと見せつけ、後半からは「ポンコツな仲間」とのストレートなSF冒険物語となり、終盤では驚きの事実を見せることなどから、「ある一定の価値観に固執する危険性」を提示することが多いピクサーが、今回はさらに「帰る場所がなくなる恐ろしさ」を描きったことに、迫力と必然性を感じたのです。
その上で、映画でのバズも、欠点や過ちをしっかり認めることも含めて愛すべきキャラクターですし、年代の設定のことを置いておけば、アンディがこの映画が好きなことも、十分に分かる気がします。
さらに、『トイ・シリーズ』のバズの決めゼリフ「無限の彼方へ、さあ行くぞ!」に、さらなる深みと広がりを与えてくれていて、なるほどスピンオフとして本作を作る意義も存分に感じることができました。
その上で、1995年に作られた映画という設定がやはりノイズになってしまうのは残念なのですが、それだけで本作を否定してしまうのもあまりにもったいないとも思います。興行的には上手くいかなかった作品でもありますが、再評価されることを願っています。
(ヒナタカ)
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