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『帰ってきたウルトラマン』のゼットンは初代の「使い回し」? 丸くなったデザインの謎

マグミクス / 2024年9月21日 6時35分

『帰ってきたウルトラマン』のゼットンは初代の「使い回し」? 丸くなったデザインの謎

■初代ゼットンの「使い回し」は本当か?

「彼」を許容できるかどうか、それが特撮ファンにおける愛の試練です。

「彼」とはもちろん『帰ってきたウルトラマン』の最終話「ウルトラ5つの誓い」で登場した「ゼットン(二代目)」のことです。放送から半世紀以上が経過してなお、その試練の真っ只中にいるという、特撮ファンも多いのではないでしょうか。

 初代『ウルトラマン』最終話において、初登場の「宇宙恐竜ゼットン」の存在感は圧倒的でした。だからこそ『帰ってきたウルトラマン』の再登場は、ドラマとしても非常に美しい流れだったのです。ただ、流れは美しいのですが、いかんせん姿が美しくありませんでした。

 このときのゼットンは、何というべきか、「肝臓の病気」を心配するくらい肥えてしまっていたのです。体型だけでなく、ツノはだらりと垂れ下がり、皮膚はハリがなくボロボロになっています。胸部の発光部分も無理やり嵌め込んだかのようで、余計に不健康に見えたのでした。

 もちろん、その丸みを帯びた姿にかわいらしさを感じる人も少なくないようですし、実際かわいいのですが、どうしても初代の洗練された面影を求めてしまいます。

 また、その変わり果てた姿から、「初代のゼットンの着ぐるみをそのまま使い回して撮影している」といううわさは根強く残っています。あるいは、「アトラクション用の着ぐるみをそのまま流用している」とも言われてきました。

 酷い言い方に見えるかもしれませんが、これらのうわさの背景にあるのは「まさか新たに造ってあんな仕上がりになるわけがない」という、「円谷プロへの信頼」でしょう。筆者も長らく「使い回し」説を素直に信じていました。どうにか納得したかったのです。

 また、「使い回し」説は決して荒唐無稽な話ではありません。着ぐるみを改造して新たな怪獣にすることは、ウルトラシリーズではたびたび行われてきました。

 さらに『帰ってきたウルトラマン』第3話「恐怖の怪獣魔境」に登場したデットンは、『ウルトラマン』第22話「地上破壊工作」に登場したテレスドンによく似ています。それもそのはずで、デットンの着ぐるみは、テレスドンの着ぐるみが劣化したものをほぼそのまま使用していました。

 つまり、同じ怪獣と思えぬほどに、「変化してしまっていた」のです。そうした前例もあるのなら、「ゼットン使い回し」説が一定の説得力を帯びるのも無理からぬことでしょう。

 では、実際に使い回しだったかといえば……これが違ったのです。結論を先にいえばゼットン(二代目)の着ぐるみは使い回しではなく、新たに造られています。では世界最高峰の技術力を誇っていた円谷プロにいったい、何が起きていたのでしょうか。

 まず大前提として初代ゼットンをデザインされた成田亨さんも、初代ゼットンの着ぐるみ造形を担当された高山良策さんも、『帰ってきたウルトラマン』最終話の時点ではウルトラシリーズから離れています。

 では当時、「造形」技術が現場に不足していたのかといえば、そんなことはありません。高山さんから造形を引き継いだのは初代『ゴジラ』や、後のウルトラシリーズを担当する開米栄三さん(開米プロダクション)であり、当然ながらその技術力は歴史が証明しています。何か、意図があるに違いありません。

 このゼットンの着ぐるみの変化について、開米栄三さんは書籍『語れ! ウルトラ怪獣』のなかで、スーツアクターさんがアクションを演じやすいよう、素材を見直し「軽量化」したという旨を語っています。実際、アクターさんからは好評だったとのことです。

 あのゼットン(二代目)の着ぐるみには、1954年の『ゴジラ』に始まる、怪獣特撮の現場を知悉した開米さんの職人ならではの創意工夫が込められていたのです。特撮はどこまでも「現場」であり、「人」なのです。気が付けば、もうあのゼットン(二代目)には愛さずにはいられません。

(片野)

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