本当に無理? 日本人が「配信でジブリを観られる」日が来る可能性は
マグミクス / 2024年9月20日 21時55分
■『火垂るの墓』が世界で大反響となるも
2024年9月16日より、高畑勲監督作品『火垂るの墓』が世界190以上の国と地域でNetflix独占配信開始されました。1988年に『となりのトトロ』と同時上映された本作は、野坂昭如さんの同題小説が原作です。太平洋戦争末期を舞台に、空襲で母親と家を失った幼い兄妹が、親戚の叔母の家も出て、ふたりで必死に生きていこうとする姿を克明に描いた名作として知られています。
このニュースが伝えられると、『火垂るの墓』はX(旧:Twitter)でトレンド入りしました。戦争の悲惨さを訴えたこの作品を、海外の人はどのように受け止めるのだろう、と話題になったのです。国外のレビューサイトもにぎわい、海外での反響を伝えるネットニュースも出ています。
そして、改めて「なぜスタジオジブリ作品は日本では配信されないのか」「いつか日本でも配信される日は来るのか」という意見が見られるようになりました。確かに考えてみると奇妙なことです。Netflixの配信対象となる地域に、なぜ本国の日本は含まれていないのでしょうか。
いくつか理由は考えられますが、そのなかのひとつとして挙げられるのが、製作委員会に日本テレビやディズニーといった企業が含まれていることでしょう。製作委員会とは、複数の企業が出資を受け持つ方式のことです。1社あたりの負担を抑制するリスクヘッジになると同時に、各企業の強みを活かして、作品の発信力を高めることが可能となります。もちろん、作品の収益や権利も製作委員会で分け合います。映像作品製作において、日本では非常にスタンダードなスキームといえるでしょう。
日本テレビはHulu(フールー)、ディズニーはDisney+(ディズニープラス)という動画配信サービスをそれぞれ展開しています。つまり、Netflixにジブリ作品の国内配信権を渡してしまうと、思い切り自社サービスと競合してしまうことになるのです。特に日本テレビは、2023年10月6日付でスタジオジブリを子会社化しました。今回の『火垂るの墓』海外配信のように、グローバルビジネスを加速させていくことは大いに考えられますが、国内の配信には慎重な姿勢を崩さないことでしょう。
では、今後もジブリ作品は国内の配信サービスで鑑賞することはできないのでしょうか。予測は難しいですが、いくつかの条件が重なれば可能性は出てくるものと思われます。
そのひとつが、TVの視聴率です。ジブリ作品は、日本テレビが「金曜ロードショー」の枠で独占放送しています。さすがに現在ではかつての30%を超えるような高視聴率は望めないものの、それでもコンスタントに2ケタの視聴率をマークしていて、相変わらずキラーコンテンツとしての実力を発揮しています。
国内のサブスク配信が始まってしまうと、TVの視聴率が低下してしまう、おそらく、日本テレビ側はそういった懸念していることでしょう。
では、本当にすでに配信されている作品は視聴率は伸びていないのでしょうか。最近のアニメ映画作品に絞って、「金曜ロードショー」の視聴率をチェックしてみましょう。
2024年9月6日 『ベイマックス』(9.1%) 配信:Disney+ほか
2024年8月16日 『映画 聲の形』(6.6%) 配信:Prime Videoほか
2024年8月2日 『トイ・ストーリー2』(5.4%) 配信:Disney+ほか
2024年7月26日 『トイ・ストーリー』(5.8%) 配信:Disney+ほか
2024年7月19日 『リメンバー・ミー』(4.6%) 配信:Disney+ほか
2024年4月5日 『すずめの戸締まり』(12.7%) 配信:Netflixほか
※2024年9月20日時点でのデータ、視聴率はビデオリサーチ平均世帯視聴率
4月5日放送の 『すずめの戸締まり』が12.7%を記録していますが、同作は4月6日からNetflixの独占配信がスタートしているので、厳密にはこの時点ではまだ「未配信作品」でした。そうなると他の作品は視聴率がすべて1ケタで、確かにあまり高い数字とは言えません。また、配信されていないことが、Blu-rayやDVDの売上に貢献しているという考え方もあります。
逆に言うと、TVでの視聴率や円盤の売上が頭打ちになる、もしくは視聴率や売上にはさほど影響しないという判断をするのであれば、HuluやDisney+での国内配信に舵を切る可能性もあるでしょう。個人的には、ジブリ美術館で公開されている短編映画や、特典動画などもたくさん付加して、「ジブリ+」のような新規サービスを立ち上げて欲しいものです。あまり過度な期待はせず、気長に待ちたいと思います。
(竹島ルイ)
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