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人類滅亡か靴下か! 『ガンパレード・マーチ』は本当のガチで「何でもアリ」でした

マグミクス / 2024年9月28日 6時35分

人類滅亡か靴下か! 『ガンパレード・マーチ』は本当のガチで「何でもアリ」でした

■ずっと家に引きこもって人類が滅びてもOK! 底抜けな自由度の高さ

 これまで数々の「自由度が高いゲーム」が登場したなか、本当の意味で「何でもあり」を実現したのは『ガンパレ』こと『ガンパレード・マーチ』をおいて他にはないでしょう。世界を救う英雄の物語から、情念ドロドロの昼ドラ的な展開まで、たった1本のゲームで遊べてしまうのです。

 初代PlayStation(PS1)用の『ガンパレ』が発売されたのは2000年9月28日、PlayStation2が発売された約半年後のことです。すでにPS1の末期であり、しかも発売前の宣伝もほとんどなく、無名のゲームとしてデビューしたのでした。

 が、ゲーム誌『電撃PlayStation』が猛プッシュし、それをきっかけに口コミで広まり……というお話は、また別の機会とさせて頂きます。ともあれ、ただ「この面白さを他人に伝えたい」という情熱がほとばしるほどの傑作だったのです。

 謎の生命体「幻獣」が現れた架空の20世紀末、人類は滅亡の危機にさらされていました。日本でも幻獣が九州に上陸したなか、本州防衛のために熊本を要塞化し、少年少女を学徒兵として強制招集することになります。主人公はそうした学徒兵のひとりとして戦いに身を投じるのでした……要は「捨てごま」というわけです。

 そのような絶望のドン底から始まりますが、要は学園ものゲームです。主人公の「速水厚志」は第62高等戦車学校の5121小隊に配属され、3月4日から5月10日まで学徒兵として過ごすことになります。その内容は勉学に励んだり、クラスメートと交流したり、戦車技能の訓練をしたり、ちょっとキナ臭い学園生活といったところです。

 が、初日以外は学校に行かず、学業も訓練も交流もせずに、最終日まで家に引きこもることもできます。もちろん人類は滅びますが、誰も「厚志くん、士魂号(人型戦車=二足歩行ロボット)に乗りなさい!」と無理強いしたりしません。

 さて速水は戦車兵として配属されますが、この役職に縛られることはありません。転属願いを陳情して小隊の司令となり、部下に命令して勝利に導くもよし、整備兵となり、損傷した兵器を修理するバックアップに徹するもよし。「幻獣と戦うゲーム」のはずが、ほとんど自ら戦場に行くことなく、ひたすら仲間の戦果を待つだけのプレイもできてしまいます。

 そのような戦いなんて知ったことかと、ひたすら特定のキャラを追っかけ回したり、恋愛に明け暮れて二股や三股をかけたり、譲れないものを賭けて拳と拳で語り合ったりと、同じゲームと思えないほど多様な展開があり、プレイヤーの数だけ異なるドラマが生まれるのです。

■凝ったシナリオと高い自由度を両立させる難しさ

2014年発売のラノベより、ヒロインの速水厚志(左)とヒーローの芝村舞(誤植ではない)。きむらじゅんこさんはゲームのキャラクターデザイナー。『ガンパレード・マーチ 2K 5121小隊帰還』著:榊涼介/イラスト:きむらじゅんこ(KADOKAWA)

 その一方、『ガンパレ』は「シナリオ」も凝りに凝っています。そのひとつが、速水以外のプレイ可能キャラが解禁される2周目以降で主人公に「中村光弘」を選んだ場合に遊べる「ソックスハンター」です。

 中村は、あまりの臭さにアイテムとして使用すると気絶する「ソックス」に魅せられ、クラスメート全員分を集めるため奮闘します。このプレイが大変なのは、戦闘でキャラが死んでしまうと、二度と靴下を回収できなくなることです。そしてひとりずつの好みに応じた「手作り弁当」や「ぬいぐるみ」といったアイテムと靴下を「交換」したり、殴り合って奪ったりしていくのです。イロモノイベントと思いきや、まっとうに話術などのスキルを磨き、ケンカに勝てるよう鍛え、そしてだれも死なないよう幻獣相手の戦闘にも勝利し続けるといった、実はかなりまっとうなプレイが要求され、大変な手間がかかります。

 これらイベントには声優さんのボイスも付き、愛憎や陰謀、裏切りが渦巻き、そして専用エンディング……その後もゲームは続き、本編(メインシナリオ)への影響は一切ナシ。ここまで作り込むの、頭おかしいです(褒め言葉)。

 が、シナリオとは「○○の条件を満たす」の塊であり、自由度とはすこぶる相性が悪いものです。特にガンパレでは全てのNPC(プレイヤーが操作しないキャラ)はAIで動いており、主人公の魅力を上げすぎると複数のキャラに惚れられて修羅場が起こったり、あるキャラは刺し殺しに来たりもします。

 そうして縺(もつ)れまくった人間関係こそ楽しいものの、予想不能な事態が多いためか、本作では進行不能な「シナリオバグ」(重要な局面で、特定の条件を満たした場合)が起こることが知られています。自由度と凝ったシナリオ、あちらを立てればこちらが立たずなんでしょうね。

 そのようなふたつを両立させようとしたのが、2003年に発売された『新世紀エヴァンゲリオン2』でした。どちらのタイトルもゲームのシステム設計が芝村裕吏氏で、開発スタジオがアルファシステムであり、同じようなゲームシステムから「事実上の続編」という見方もあるようです。

 おなじみ「シンジ」「レイ」「アスカ」など原作キャラでプレイ可能であり、それぞれに固有のシナリオはあります。が、本作の最大の特徴は「庵野AI」です。各話のなかでプレイヤーが取った行動により、次の話で起こるイベント等が変わってくるという、庵野秀明監督がアニメ版の制作で実際にやった「ライブ感覚」を取り込んでしまったのです。

 それによりプレイヤーは、この世界で好き勝手に暮らすAIキャラとの交流を楽しみつつ、変幻自在なシナリオも味わえるというしくみです。もっとも、AIキャラの行動は『ガンパレ』に輪を掛けて自由奔放であり、また「水分を摂るとトイレが近くなる」など体調管理要素もあって(そしてそれはAIにもあり、機嫌が変わるなどする)、プレイに慣れるまでは大変です。

『ガンパレ』と『エヴァ2』ともに、PlayStation4やPlayStation5など現行ゲーム機ではプレイできません。それぞれ復刻するには高いハードルを超える必要がありそうですが、どちらも唯一無二だけに、いつの日か実現することを祈りたいところです。

『高機動幻想ガンパレード・マーチ』:(C)2000 Sony Computer Entertainment Inc. All rights reserved.

(多根清史)

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