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『ガンダム』のエースパイロット専用機みたいなのって現実の軍隊にもあるものなの?

マグミクス / 2024年10月1日 6時35分

『ガンダム』のエースパイロット専用機みたいなのって現実の軍隊にもあるものなの?

■飛行機の約120年の歴史を振り返ると…?

 いわゆるロボットアニメにおいて、エースパイロットが搭乗する専用機は、物語を彩る重要な要素のひとつです。高い性能、個性的なデザイン、そしてパイロットとの深い絆――これらの要素が合わさることで、作品の世界観をより豊かにし、視聴者の心を掴みます。

「ガンダム」シリーズにおけるそうしたエース専用機は、大きく分けてふたつのタイプに分類できます。

 ひとつは、「アムロ・レイ」の「ガンダム」をはじめとする主人公やライバルキャラクターが搭乗する高性能機です。これらの機体は、物語のキーとなる戦いで大いに活用され、パイロットの成長とともにその性能を最大限に引き出していきます。

 もうひとつは、「ザクIIS型」のように、既存の量産機をベースに、特定のパイロット向けに性能向上ないしカスタマイズされた機体です。パイロットの個性を反映した装備や塗装が施され、そのパイロットの象徴となっています。

 これらの設定は、いかにもSF的でロマンにあふれていますが、果たして現実世界において、このような「エース専用機」は存在するのでしょうか。

 現代の軍事技術において、エース専用機という概念はほぼ存在しません。戦闘機や戦車は、標準化された設計と大量生産によってコストを抑え、整備や運用の効率を高めることが重視されています。個々のパイロットや兵士に特別な機体を支給することは、コストや運用の面で非現実的です。

 しかし歴史を振り返ると、まったくないというわけでもありません。第一次世界大戦時には、エース専用機が実際に存在しました。その代表例が、連合国軍最高のエースパイロットであるフランス人、ジョルジュ・ギンヌメール(撃墜数53機、戦死時世界トップ)が開発に参画した「スパッドS12」です。

■ロマン砲まで装備したリアル「エース専用機」 だけど…

スパッドS12。自慢の37mm砲は撃つたび煙がコックピットに充満し難儀したという (画像:Air Service, United States Army, Public domain, via Wikimedia Commons)

 S12は、当時の標準的な戦闘機とは一線を画す性能を持っていました。特筆すべきが「37mmモーターカノン」を搭載していた点です。当時の戦闘機の武装において主流であった7.7mm機関銃に比べ、37mmモーターカノンは圧倒的な火力を誇りました。一発でも命中すれば敵機を粉砕する威力を持ち、まさに「ロマン砲」と呼ぶにふさわしいものでした。

 S12を受け取ったギンヌメールは早速、敵機を撃墜しその高火力にベタ惚れします。これを受け量産が決定し、特別なエースたちに優先して配備されました。

 しかし、S12には致命的な欠点もありました。7.7mm機関銃は前方に多数の弾丸をばらまくことができた一方、37mm砲は手動で弾丸を装填せねばならず単発ずつしか撃てないため、命中弾を与えることが困難だったのです。加えて、その重量と射撃時の反動は機体の操縦性に大きな影響を与えました。

 そのためS12は特別に優れたエースパイロットにのみ配られましたが、実際の運用は困難を極め、一部の天才的パイロット、例えば後にギンヌメールを超える75機を撃墜したルネ・フォンクなどしか扱うことができませんでした。

 多くの場合S12は不評であり、量産は十数機で終わったと見られます。なおS12とほぼ同型で7.7mm機関銃を搭載した「スパッドS7」と、その性能向上型「スパッドS13」は合計して1万機以上が生産されており、第一次世界大戦で最も成功を収めた戦闘機のひとつとなっています。

 S12は、その強力な性能と同時に、扱いの難しさや実用性の低さという側面もあわせ持っています。これは、「ガンダム」シリーズにおける「エース専用機」の設定にも通じるものがあるのではないでしょうか。また、実戦において本当に重要であったのは、扱いやすい量産機であったという点も注目に値します。

(関賢太郎)

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