アーケード→ファミコン移植でガッカリ…変わり過ぎて「唖然」としたレトロゲーム・3選
マグミクス / 2024年10月9日 18時25分
■『源平討魔伝』のファミコン版に心を躍らせ、驚いたあの日
昭和末期や平成初期のアーケードゲームやPCゲームは、機器の性能を活かしたハイスペックな作品が多く、性能的に及ばないファミコンでは完全移植が難しく、いかに工夫して移植するかが腕の見せどころでした。
例えば、アーケードゲームを移植したファミコン版の『ゼビウス』は、巨大な浮遊要塞「アンドアジェネシス」が登場すると、スクロールが一時的に止まります。アーケード版の「アンドアジェネシス」は浮遊していますが、ファミコン版だと地上に設置された要塞のようにも見え、受ける印象は大きく異なります。
このほかにも、フィールド上に描かれていた「ナスカの地上絵」がカットされたり、ゲームバランス上の調整なども行われていたりしますが、全体的な再現度は非常に高く、ファミコン時代の好移植の例としてしばしば名前が挙がります。
『ゼビウス』のような秀逸な移植もある一方で、原作のゲームと比べると驚くほど一変してしまったファミコンソフトも少なくありません。
●美しくてキャラが大きい! 驚きの連続だったアーケード版『源平討魔伝』
1986年に登場したアーケードゲーム『源平討魔伝』は、手応えのあるアクション性に加え、舞台となる鎌倉時代をセンス豊かなデザインと緻密なグラフィックで美しく描き上げ、見る者を皆惹きつけるほどの魅力を放っていました。
ゲームデザインは全般的にアクションが中心で、その見せ方も凝っていました。当時のアクションゲームで主流だったサイドビューと、迷路のようなフィールドを駆け巡るトップビューが状況によって切り替わり、道中のプレイにメリハリを与えます。
そして、「弁慶」や「義経」といったボスと戦う際は、各キャラクターを大きく表示させた「BIGモード」で表現しました。自機である「平景清」の場合、縦画面比で1/3ほどの身の丈に。体躯に恵まれている「弁慶」となると、縦画面比で半分を占めるほどの巨体で描かれます。
ここまで大きなキャラクターを動かすだけでも珍しいのに、『源平討魔伝』は美しく描く点にも注力しており、ひと目見たら誰もが忘れられない作品として記憶に刻まれました。『ゼビウス』の「アンドアジェネシス」で画面いっぱいのボスを表現したナムコ(現:バンダイナムコエンターテインメント)が、この『源平討魔伝』でも卓越した表現と技術を見せてくれたのです。
●ファミコンに上陸した『源平討魔伝』に当時のキッズが驚愕
そんな『源平討魔伝』がファミコンゲームになる、という発表は、当時のファミコンキッズに衝撃と歓喜を与えます。あの美しいビジュアルや、巨大な「BIGモード」を家でも楽しめる……まるで夢のような光景を想像し、ファミコン版の発売を心待ちにしました。
しかし、ファミコン版『源平討魔伝』は、ボードゲームにRPGの戦闘を組み合わせたようなゲームになっていたのです。アーケード版のようなアクションゲームではなく、見た目からゲーム性まで何もかも違います。もちろん、「BIGモード」もありません。
『源平討魔伝』の美しいグラフィックや巨大なキャラクターを再現するには、ファミコンの性能では足りないものが多過ぎる……冷静に考えれば当たり前の話ですが、一度夢を見てしまうと、叶うのではと希望を持ち、盲信してしまうもの。その結果、アーケード版とは何もかも違うファミコン版に、別の意味で衝撃を受ける結果になってしまいました。
正確に判断するなら、ファミコン版『源平討魔伝』は移植ではなく、派生作や外伝的な作品だと考えることができます。しかし当時は、派生作などの展開はまだそれほど一般的ではなく、なじみが薄かったのも悲劇を招いた一因でしょう。
ここまで内容が違うなら、タイトルを多少でも変えれば受ける印象も違ったはず。なぜ、全く同じ『源平討魔伝』で発売してしまったのか……様変わりしたゲームの内容よりも、タイトルが同一だった点が最も残念な部分かもしれません。
■驚きの移植作は、『源平討魔伝』だけじゃない!
当時、多くのゲームユーザーが『ザナドゥ』に憧れていた。画像は、『EGGコンソール ザナドゥ PC-8801mkIISR』
●ホラーでスプラッターなゲームが、ファミコンでは「わんぱく」に!?
さきほどの『源平討魔伝』のように、ゲーム性まで変化する作品はかなり珍しい部類です。しかし、ゲームジャンルは同じでも、見た目が一変するファミコン版は数多くあります。そのなかでもかなり極端なのが、『スプラッターハウス』です。
アーケード版の『スプラッターハウス』は、ホラー映画さながらの不気味な館を舞台に、奇妙なマスクを身に着けた主人公が恋人の救出に向かう、横スクロールのアクションゲームです。
その不気味さはビジュアルにも反映されており、全体的にグロテスクな雰囲気でまとまっています。主人公の攻撃も、敵の首を跳ねたり壁に叩きつけたりと、スプラッターな描写が多く、かなりの過激さでした。
この圧巻のビジュアルが、ファミコン版でどうなるのか。好奇心と期待が高まりましたが、実際に発売されたファミコン版は『スプラッターハウス わんぱくグラフィティ』とタイトルがかわいらしく変化し、その内容もポップでキュートな仕上がりとなりました。
リアル寄りのホラー描写はすっかり影を潜め、キャラクターは丸みを帯びた二頭身に。主人公のマスク顔も目が大きく描かれており、どこか愛らしさすら感じます。
ファミコンの性能限界や、アーケード版の描写が過激過ぎた影響かと思われますが、基本的なゲームの流れや横スクロールアクションなどは共通するものの、見た目は完全にコミカルな方向に。よくよく見れば、恐ろしげな世界観は維持していますが、ビジュアルのインパクトがほぼ真逆なので、そのギャップに驚愕するのも無理はありません。
ちなみに、アーケード版『スプラッターハウス』は『アーケードアーカイブス スプラッターハウス』として、『スプラッターハウス わんぱくグラフィティ』は『ナムコットコレクション』のDLCとして、どちらもNintendo Switchでプレイ可能です。興味が沸いた人は、ぜひ現行機で見比べてください。
●当時のPCゲームへの憧れから、衝撃の作品と出会うこと
当時の子供たちは、ファミコンのゲーム体験を心から楽しんでいました。しかし一部ユーザーは、ファミコンに満足しながらも、当時のPCゲームをうらやましく眺めていた人もいます。
当時のPCは「マイコン」と呼ばれ、いま以上に高嶺の花な存在でした。マイコンのゲームはグラフィックが美しいものも多く、ゲーム雑誌の記事に目を奪われるも、実際に遊ぶ機会はないまま指をくわえていた……という経験を持つ人も少なくない時代でした
そんな折に、マイコンゲームの代表的存在だった『ザナドゥ』がファミコンに移植されるという話が持ち上がります。「憧れていた名作が、ファミコンで遊べるなんて!」と、続報や発売を心待ちにしたものです。
しかし、実際に制作されたのは『ファザナドゥ』というゲームでした。『ザナドゥ』の名を冠しているものの、その前に『ファ』という新たな言葉が付け加えられています。これはファミコンの「ファ」を取り入れたものらしく、そのアレンジに一抹の不安がつきまといます。
そして不安は、残念ながら現実のものとなりました。『ザナドゥ』の鮮やかなグラフィックは再現されておらず、パズル的な要素も除外。冒険の舞台も「迷宮探索」から「世界樹を巡る」という形に変わり、『ザナドゥ』と共通する部分を見つける方が難しいレベルにまで一変しました。
購入したユーザーの多くは『ザナドゥ』への憧れがあったため、その反動で『ファザナドゥ』に厳しい評価を下す人も続出します。気持ちを考えれば無理のない話ですが、実は『ザナドゥ』と切り離してゲーム単体として見れば、『ファザナドゥ』の完成度は決して悪いものではなく、良作と受け止める人もいました。
『ザナドゥ』がなければおそらく作られず、しかし『ザナドゥ』と比較されて正しく評価されなかった『ファザナドゥ』。ニュートラルに判断するのが、非常に難しい作品でした。
* * *
アーケードやPCのゲームをファミコンで遊びたい。そんなユーザーの願いを、創意工夫や努力で乗り越えようとし、さまざまな作品が生まれました。見事な成功例もあれば、大きく様変わりしたゲームもあり、ユーザーはもちろんメーカーも翻弄された時代だったといえるでしょう。
いまでは、アーケードやPCの作品も、かなり忠実に移植できるようになりました。少なくとも、当時のように「見た目やゲーム性がまるで違う!」といった事態はそうそう起こりません。
良い時代になったと考えるべきですが、こうして振り返ると当時の「トンデモ移植」も味わいがあったなと、身勝手な感傷を感じる部分もあります。時には、こうして当時を思い出すのも一興です。
『アーケードアーカイブス 源平討魔伝』:
(C)1986 BANDAI NAMCO Entertainment Inc.Arcade Archives Series Produced by HAMSTER Co.
『EGGコンソール ザナドゥ PC-8801mkIISR』:
(C) Nihon Falcom Corporation. All rights reserved.(C) D4Enterprise Co.,Ltd. / (C) MSX Licensing Corporation.
(臥待)
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