『仮面ライダーストロンガー』 初の変身ヒロイン、「中の人」にショック!?
マグミクス / 2020年4月5日 9時50分
■第一期昭和ライダー、有終の美を飾る
1975年4月5日、仮面ライダーシリーズ第5作『仮面ライダーストロンガー』(以下、ストロンガー)の第一話「おれは電気人間ストロンガー!!」が放送されました。第一期昭和ライダー最終作となった本作は、ヒーローものの原点に立ち返ることを目的に制作され、電気人間と言う視覚的効果に訴える設定や、ライダーシリーズ初の変身ヒロインである電波人間タックルの登場など、さまざまなアイデアが投入された意欲作となりました。タックルのアクション時はスーツアクターが男性だったことを知りショックを受けた経験を持つ、ライターの早川清一朗さんが語ります。
* * *
『ストロンガー』の存在を最初に知ったのは、ケイブンシャの『仮面ライダー大百科』だったと思います。カブトムシをモデルとした大きな角のインパクトや、胸に輝く巨大な「S」の字など、他のライダーとは全く違う存在感を発揮していたのを覚えています。
実際に見ることができたのは大人になってからなのですが、主人公・城茂役の荒木茂氏の颯爽たる雰囲気と、ライダーシリーズ初の変身ヒロインである電波人間タックルのスカートの丈の短さが強く印象に残りました。アクションシーンは男性が演じているということには全く気付きませんでしたが……。荒木氏は2012年に63歳で、タックル役の岡田京子さんは1986年に27歳の若さで亡くなっているのが残念でたまりません。この場を借りてご冥福をお祈りいたします。
さて『ストロンガー』を見ていて強く感じたのは、その「分かりやすさ」でした。主人公は好青年で美人のヒロインがサポートし、力の源は電気。チャージアップでは胸のSが回転するのでパワーアップがひと目で分かります。オープニングは水木一郎氏が歌い上げ、映像ではストロンガーと戦闘員のバイク対決が繰り広げられます。
このような分かりやすいヒーロー路線が指向された理由は、『仮面ライダー』シリーズの視聴率低下でした。ヒーローものの原点に立ち返ろうとしたのです。初代『仮面ライダー』の時代は安定して20%を叩き出し、時には30%越えも果たしていましたが、徐々に視聴率は低下していました。とはいえ前作『仮面ライダーアマゾン』の平均視聴率は関東で15.7%、関西で17.7%と、現在の常識からすればかなりの高視聴率にしか見えません。『仮面ライダー』に寄せられていた期待がどれほど高かったのかが伺えます。
■最初で最後、栄光の7人ライダー
『仮面ライダーストロンガー』DVD Vol.4(東映ビデオ)
『仮面ライダー』の生みの親である東映の平山亨プロデューサーは、視聴率の回復を狙うため、『ストロンガー』の企画の際にさまざまなテコ入れを考えていました。当初は5人の仮面ライダーを登場させる案を提示しましたが、これは毎日放送により却下されてしまいます。 ちなみにこのときの「5人の仮面ライダー」の案は別の企画に転用され、『秘密戦隊ゴレンジャー』の原型となりました。また、「私たちも仮面ライダーごっこがしたい」という女の子たちの要望を取り入れ、電波人間タックルが誕生することとなりました。
さまざまなアイデアを盛り込みスタートした『仮面ライダーストロンガー』は、百目タイタンやブラックシャドウなど、印象的な敵幹部が次々と登場し、盛り上がりを見せます。また初期の敵であるブラックサタン壊滅後に登場したデルザー軍団は、超電子ダイナモを埋め込まれる前のストロンガーの力が通用しないほどの強さを誇りました。村枝賢一氏の漫画『仮面ライダーSPIRITS』でもデルザー軍団の強さは別格扱いとなっており、その破壊的な戦闘力はライダーたちを苦しめています。
しかしこれらの要素も視聴率アップにはつながらず、当初52話が予定されていたにも関わらず39話に短縮され、『仮面ライダー』シリーズも一旦終了することとなってしまいます。
『ストロンガー』の最終回には一号、二号、V3、ライダーマン、X、アマゾンと過去のライダーすべてが、オリジナルキャストで集結します。多忙を極める人気俳優をそろえるのは大変な苦労があったそうで、全員が集まって撮影できたのはわずか1日だけだったそうです。
38話の次回予告では「仮面ライダー 最終回」とアナウンスされ、『ストロンガー』の終わりがひとつの区切りであることが強調されていました。
それでも4年後の1980年には『仮面ライダー(新)』として蘇ったライダーは、現在でも放送され続けています。
誰かが必要としたとき、ライダーは必ず蘇るのです。
(ライター 早川清一朗)
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