改めて振り返っても酷すぎる「ガンダム」シリーズの清々しい程に裏切ってくれた三悪女
マグミクス / 2024年10月13日 21時25分
■「おかしいですよカテジナさん!」
「機動戦士ガンダム」シリーズには、しばしば主人公を裏切る行動に出る女性が登場します。そうしたなかでも、何も考えず裏切った女性、よくわからないままなぜか裏切った女性、憧れと恋を混同して裏切ってしまった少女の3人を見ていきましょう。
●カテジナ・ルース 『機動戦士Vガンダム』
「ガンダム」シリーズ最高最悪の裏切り女性といえば、真っ先に名前を挙げられるのが『機動戦士Vガンダム』の「カテジナ・ルース」でしょう。主人公である「ウッソ・エヴィン」とは文通友達であり、当初は憧れのお姉さんでもありましたが、ザンスカール帝国の軍隊である「ベスパ」による攻撃で故郷のウーイッグが破壊され、自らの道を歩み始めます。
偶然、出会ったザンスカールの「クロノクル・アシャー」に惹(ひ)かれ、ウッソたちの元を離れたカテジナは、その後ウッソと再会するたびに、しばしば「おかしいですよカテジナさん!」と言われるほどの支離滅裂な行動を見せるようになります。
特に第34話から展開された「地球クリーン作戦」執行により、自ら人を殺めてからの行動は凶悪を極めるようになりました。第36話でウッソの母親である「ミューラ・ミゲル」が人質となった展開では、救出に来たウッソを執拗に妨害し、結果としてミューラの不慮の事故死を呼び込んでしまいます。
第46話では精神崩壊の兆候を見せた状態で再登場し、「おかしくなっているんですか?」と問うてきた「シャクティ・カリン」に対して 「とうにおかしくなっている!」と、もう引き返せないところまで来てしまったことを肯定する発言をしています。
その後のカテジナは、部下の女性に裸同然の姿でウッソの「V2ガンダム」を襲わせる、ウッソを守るシュラク隊のモビルスーツを次々と撃墜するなど、凶悪な大暴れを見せました。最後の戦いの際にはウッソの恋心まで利用して勝利をつかもうとしたカテジナですが、V2ガンダムを信じたウッソの前に敗れ、光のなかに姿を消してしまいます。
死んだかと思われたカテジナを待っていたのは、死をも上回る過酷な結末でした。地球へと辿りついたカテジナは、自分の心や視力など、何もかも失い故郷のウーイッグを目指し、旅を続けることになったのです。道中、シャクティに出会ったことに気付いたのか気付いていないのか、真相は未だ不明のままです。
■なぜ最後に笑顔なのか
ハサウェイ(左)の運命も大きく変えたクェス。『閃光のハサウェイ』場面写真配布キャンペーン「ノア家のアルバム」より (C)創通・サンライズ
●ニナ・パープルトン 『機動戦士ガンダム0083』
「ラストシーンに笑顔で登場する」……アニメでは別に珍しいシーンではありませんが、OVA『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』の「ニナ・パープルトン」ほど「え? あなたは笑顔でいられる立場なの!?」といいたくなるヒロインも珍しいでしょう。
彼女が悪女といわれるのはなぜでしょうか。それはニナが、かつての彼氏である「アナベル・ガトー」をかばい、主人公「コウ・ウラキ」に銃を向けたことが一番の理由でしょう。「試作型ガンダム1号機」「同2号機」の開発に関わっていたニナは、戦闘データの確保、管理を理由にコウの乗艦する連邦軍艦「アルビオン」に乗り込んでいました。1号機に乗り必死に戦うコウとは同じメカマニアということもあり、いつしか惹かれ合うようになるものの、かつてニナがガトーと交際していたことが発覚します。
しかもガトーたち「デラーズ・フリート」が企図したコロニー落としの最終局面において、落下するコロニー内でガトーを射殺しようとしたコウを止めるため、ニナはコウに銃を向けたのです。このときコウが受けた精神的なダメージはかなりのものでしょう。
その後はガトーについていこうとしますが気絶させられ、ジオン関係者によってアクシズが派遣した艦隊に収容されました。戦局が大方決したところで、連邦軍の圧力を受けたアクシズ艦隊は、ニナがガトーたちの到着(撤退)を待って欲しいと泣き叫ぶも現場からの離脱を決定、そしてニナは地球側へと送り返されました。
戦闘を生き延びたコウは、やがて北米オークリー基地へと赴任します。ニナもコウの元へと向かい、ふたりは再会を果たしました。ニナとコウが顔を合わせたのは、上述したニナが銃を向けて以来のことです。なんでそこで笑顔になれるのか。ニナという女性が悪女とされるのは致し方がないことでしょう。
●クェス・パラヤ 『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』
『逆襲のシャア』に登場した「クェス・パラヤ」は、元々軍人ではないため、本来「裏切った」女性と断定することはできません。しかしながら「シャア・アズナブル」への憧れと恋を混同してホイホイついていってパイロットとなり、扇動されるままに父親の「アデナウアー・パラヤ」を(そうとは知らずとはいえ)殺してしまったことはあまりにも思慮が浅いといわざるをえません。
また、実生活では得られなかった「理想の父親像」として、異性の大人に「大人らしい分別と正しさ」を勝手に求めるきらいがあり、「アムロ・レイ」を一方的に見限り、シャアからは辟易される身勝手さは彼女の死の遠因ともなりました。
同世代の少年、青年たちとは仲良くなるものの男性としての興味はなく、友人関係にとどまっていましたが、もしクェスが「ハサウェイ・ノア」の淡い恋心を受け入れていたら、「チェーン・アギ」はじめロンド・ベルの兵士たちも何人かは死なずに済み、アムロもフィン・ファンネルを消耗することなくシャアと戦えていたでしょう。感情的な行動が、作品全体に影響を及ぼしたという点では、クェスの裏切りは非常に大きな要素だったといえるのかもしれません。
(早川清一朗)
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