『ウルトラマン』「見た目そっくり」な怪獣ピグモンとガラモン でも微妙にデザイン違う?
マグミクス / 2024年10月10日 7時35分
■日本の、Kawaii Kaiju!
かわいくもあり、恐ろしくもある――日本の怪獣を端的に表現するならば、こんな感じでしょう。たとえば「エイリアン」シリーズに登場する地球外生命体「ゼノモーフ」も、まがまがしさと美しさという相反する要素を併せ持った素晴らしいビジュアルの持ち主ではあるものの、グロテスクなデザインであることを否定する方はいらっしゃらないはずです。
『遊星からの物体X』の物体こと「ドッグ・シング」然り、「プレデター」シリーズの異星人「ヤウージャ」然り、海外モンスターのメインストリームがグロカッコいい路線であることは間違いありません。
もっとも『グレムリン』の大ヒット直後は、『まんちぃず』や「クリッター」シリーズのようなグロカワ系のモンスター映画もたくさん作られたのですが、こちらは一過性のブームで終わってしまいました。
一方、日本の怪獣デザインは、あまりグロテスクな方向に舵を切ることがありません。もちろん、何事にも例外はあるので、それこそ『エイリアン』や『遊星からの物体X』の影響下にある怪獣も少なからず存在するのですが、どこか愛嬌が感じられるルックスのほうが主流といっていいと思います。
また、愛らしさのみに振り切った怪獣も珍しくなく、その代表格として「友好珍獣ピグモン」が挙げられるのではないでしょうか。人間の子供程度の背丈(設定身長は1m)で、ピョンピョンと小さく飛び跳ねるさまも非常にキュートな1体です。
さらに友好珍獣なる肩書きが示すように、どういうわけかピグモンは人間に味方します。翻訳機を介せば会話することも可能というぐらい知能が高く、遭難した人間と遭遇した際は、その命を長らえさせるために食料や水の調達すらしていました。
また、凶悪な怪獣が迫ってくれば、危険を顧みず囮役を買って出ることも珍しくありません。いわゆる自己犠牲の精神まで持ち合わせているのです。彼(彼女?)に命を救われた人間が「怪獣のなかにもこんな善良なやつを作った神を……僕は信じるようになりました」と語るくらいですから、まさに生まれついてのベビーフェイスといえましょう。
さて、ピグモンのデビュー作である『ウルトラマン』第8話「怪獣無法地帯」は、どくろ怪獣レッドキング、有翼怪獣チャンドラー、地底怪獣マグラー、怪奇植物スフラン、そしてピグモンと5大怪獣が登場する大サービス巨編でありました。もっとも番組の予算も無尽蔵ではないため、完全新規造形だったのはレッドキング(と着ぐるみではないスフラン)のみで、残りの怪獣たちは既存の着ぐるみを改造することでコストカットを図っています。
そう、ピグモンも例外ではありません。ピグモンの元になったのは、前作『ウルトラQ』の代表選手ともいえる隕石怪獣ガラモンの着ぐるみでした。といっても、ガラモンとピグモンにデザイン的な違いはほとんどありません。怪獣ファンでもなければ、両者のフィギュアを並べても違いが分からないことでしょう。ただ、せっかくピグモンを取り上げるのですから、ここではちょっとだけ詳しく解説してみたいと思います。
■ 意外と違う!? ピグモンとガラモン
確かにそっくりはそっくりなんだけど……(著者撮影)
ガラモンは元々、龍の顔をした多角獣を想定して脚本が書かれていたものの、デザイナーの成田亨さんは「魚のコチか何かの正面のアップ写真がありましたが、その口が面白かったので、まず口を描き、犬のような鼻と人間の様な眼をつけ」たと語っています。その発想のジャンプ、まさに天才の仕事ですね。また、ガラモンは侵略者が送り込んできたロボット怪獣なのですが、一見するとそうは見えない点も名獣の名獣たるゆえんでしょう。
そしてガラモンの中には、高橋実(稔)さんという低身長の俳優が入っていました。ガラモン最大の見せ場としてダム破壊のシーンがあるのですが、このときのダムのミニチュアセットの制作費を抑えるため、ガラモンを小さく作る必要があったからだと伝えられています。結果、デザイン画では5等身だったガラモンは、ほぼほぼ3等身の寸詰まったスタイルとなり、その大きさも約1mという非常に小ぶりな着ぐるみになりました。このあたりの見てくれのかわいらしさが、マスコット怪獣として再登板される決め手になったであろうことは想像に難くありません。
なお、ピグモンのスーツアクターは、高橋さんではなく、子役の藤田修治さんに交代と相成りました。その理由は病気だったとも、体力的な問題だったともいわれていますが、いずれにせよ藤田さんは高橋さんよりも身長が少し高く、ガラモンの着ぐるみは首(にあたる部分)や足などを延長されます。
また、撮影とイベント展示で抜け落ちたトゲが修理され、再塗装もなされているため、よくよく見ればガラモンとピグモンの区別はつくわけですね。とはいえ、非常にそっくりです。
しかし、どうしてピグモンとガラモンが似ているのか、劇中で説明されたことはありません。ちなみに前述のマグラーは透明怪獣ネロンガの、さらにネロンガは地底怪獣パゴスの着ぐるみを改造したもので、マグラーもまたウラン怪獣ガボラに改造されています。
もっというとパゴスは、東宝から借り受けた地底怪獣バラゴンの着ぐるみが元になっており、最新作『ウルトラマンアーク』にて「ネロンガ、ガボラ、パゴス、マグラー……この4種類の怪獣は、祖先が共通であると考えられている」と解説されるくだりが登場しました。まあ、一種の楽屋落ちなんですが、こんなふうにピグモンとガラモンの知られざる関係性が明かされる日もやってくるかもしれませんね。
【著者プロフィール】
ガイガン山崎
“ 暴力系エンタメ” 専門ライター、怪獣造形集団「我が家工房」主宰。怪獣映画&変身ヒーロー番組を中心に、洋画、海外ドラマ、アニメ、漫画、アメコミ、プラモデルなどに関する原稿のライティングを手掛ける。なお、暴力系エンタメとは、劇中で発生したトラブルの一切を功夫、銃撃、巨大ロボット、変身といった暴力的な手段で解決する作品群を指す。
(ガイガン山崎)
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