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シリーズの原点『タイムボカン』が確立した偉大なる「フォーマット」とその「最終回」

マグミクス / 2024年10月12日 8時25分

シリーズの原点『タイムボカン』が確立した偉大なる「フォーマット」とその「最終回」

■『タイムボカン』の人気がシリーズ化を呼び込んだ

 1975年から76年にかけて放送されたTVアニメ『タイムボカン』は、主人公である「丹平(たんぺい)」と「淳子」のふたりが、歴史上の物語やおとぎ話をモチーフとした世界で大冒険を繰り広げる物語です。当初は2クール(半年)の放送予定でしたが、人気の高さからまず2クール、さらに1クールと延長を重ね、最終的には全61話が放送されています。その好評ぶりから、のちにコンセプトを共有した作品群が「タイムボカンシリーズ」として制作され、多くの名作が世に送り出されることとなりました。

 同シリーズは、1970年半ばから80年代半ばにかけて、TVアニメにおいて偉大な功績を残した作品群です。もっとも有名な作品としては、シリーズ第2弾『ヤッターマン』の名前が挙がるでしょうか。ほかの作品も実に多種多彩であり、当時の子供たちを楽しませてくれていました。

 その原点たるシリーズ第1作の『タイムボカン』は、主人公の少年少女が「メカブトン」や「ドタバッタン」「クワガッタン」などのメカに乗ってタイムトラベルに出かけるというSF色の濃い設定ながらも、ギャグテイストを加え親しみやすい作風となっているのが特徴です。また、後にシリーズ恒例となる「三悪人」のフォーマットや、富山敬氏によるナレーション(シリーズ第6作の『逆転イッパツマン』では主人公の「豪速九」役を務めたため、これを除く)も本作で確立されています。

 主題歌を始めとする音楽方面を担当したのは、これがアニメ作品初挑戦となった山本正之氏です。山本氏は以降のシリーズでも数々のアニソン制作に携わり、大いに足跡を残していきます。キャラクターデザインの天野喜孝氏は、後に『ファイナルファンタジー』シリーズでもキャラクターデザインやイメージイラストを手掛けるなど、芸術方面でさまざまな成功を収めました。後世で活躍する多くのクリエイターに飛躍のきっかけを与えた作品としても、『タイムボカン』の存在感は大きなものといえるでしょう。

 なお、『タイムボカン』は多くのシリーズ作品を輩出しただけではなく、2016年から17年にかけてリメイク作品も制作されています。配信も行われているので、興味のある方はご覧になってみてはいかがでしょうか。

■最終回で「ダイナモンド」を発見したが……?

おなじみ悪玉トリオの原点。「タイムボカン Vol.9 ダイナモンドが…だペッチャ」DVD(ジェネオンエンタテインメント/現:NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン)

 さて、その『タイムボカン』の最終回はどのようなストーリーだったのか、覚えておいででしょうか。

 最終回となる第61話「ダイナモンドを発見だペッチャ」は、あるハプニングからスタートします。第60話でシンドバッドの世界を冒険した丹平たちはその帰路、「ドタバッタン」のタイム電池が限界を迎えてしまい、どことも分からない時代へと不時着してしまいました。

 丹平たちが研究所へ戻っていないことに気付いた「マージョ」たち悪玉トリオは、丹平たちが世界最高級の宝石である「ダイナモンド」を発見したと考え、ドタバッタンに仕掛けておいた誘導メカを使い、後を追い出発します。

 しかしマージョたちがたどり着いたのは、なんと現代。しかも丹平たちの家とマージョたちの家のちょうど中間の位置にある、遊園地のなかだったのです。

 遊園地の森のなかで、マージョたちは大量のダイナモンドを発見するも、その場にはすでに丹平たちも辿りついていました。マージョは丹平たちを押しのけダイナモンドを運び出そうとすると、なんとダイナモンドはマージョの手のなかで、石ころになってしまうのです。

 実はダイナモンドは宇宙からもたらされた隕石で、地球の空気に触れると輝きを失う性質を持っていました。そうとは知らずダイナモンド探しに全財産を使い果たしてしまったマージョは泣き崩れ、怒り狂います。

 怒りのあまり、丹平たちに最後の戦いを挑んだマージョたちは、ドタバッタンを追い詰めるも敗北してしまいました。屋敷も半壊します。その日の夜、マージョたちはいずこともなく去って行ったのでした。

 子供の頃は素直に主人公側を応援していたものですが、大人になって改めて『タイムボカン』を観ると、マージョはじめ「グロッキー」「ワルサー」のトリオが夢を追いかけ、そして敗れる姿に感情移入してしまいました。しかも、姿こそ消したものの一度戻ってきてリベンジを宣言しています。

「歴史」や「物語」について多くの学びを得ることのできる『タイムボカン』は、一方で、悪玉トリオの敗れても決してあきらめない姿勢こそが、最高の学びだったのではないでしょうか。

(早川清一朗)

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