「ガンダム」が大地に立つまで連邦軍はどうザクと戦っていたの? 8か月半の艱難辛苦
マグミクス / 2024年10月16日 6時35分
■「ザクII」に対する兵器は戦車のみ?
1979年放送のTVアニメ『機動戦士ガンダム』で描かれた「一年戦争」では、「ジオン公国軍」と「地球連邦軍」の激しい戦いが繰り広げられ、最終的には「ガンダム」に搭乗する主人公「アムロ・レイ」などの活躍により、連邦軍が勝利して幕を閉じました。
本編では、ガンダムがジオン軍の「モビルスーツ」(以下、MS)を次々と倒し、連邦軍に戦況が傾いていく様子が描かれていますが、しかし実のところその「描かれた期間」は、一年戦争全体の、終盤の3分の1にすぎません。そもそも連邦軍はガンダムなどのMSを実戦に投入するまで、どのようにしてジオン軍のMSと渡り合っていたのでしょうか。
MSがない状況でジオン軍と対峙した様子は、OVA『機動戦士ガンダム MS IGLOO2 重力戦線』(以下、『重力戦線』)で描かれています。
U.C.0079年1月3日、ジオン公国は地球連邦政府に宣戦布告しました。緒戦の戦闘は宇宙空間の艦隊戦が主流で、ジオン軍は開戦初期に艦載兵器として「ザクII」を実戦に投入し、対MSを想定していない連邦軍は大打撃を受けます。
同年3月、ジオン軍は第1次地球降下作戦を実施しました。その様子は『重力戦線』の第1話「あの死神を撃て!」に描かれており、MSなど大重量の輸送を目的とする垂直離着陸往還機「HLV」や「投下カプセル」が地上へ降下しています。そしてジオン軍は、ひとり乗りホバークラフトマシン「ワッパ」や大型戦車「マゼラ・アタック」、空挺戦車に加え、MS「ザクII」による強襲を決行し、初めて見る巨大人型兵器に圧倒された連邦軍の歩兵たちは、なすすべもなく退却したのでした。
ザクに対し連邦軍が唯一、対抗できる兵器といえば「61式戦車」くらいでした。とはいえその砲撃はたやすくかわされ、「ザク・マシンガン」や「ザク・バズーカ」によって次々と返り討ちにされます。戦車とMSが戦えば、MSに軍配があがることは容易に想像できるでしょう。そして、MSを駆使したジオン公国地球制圧軍は、地球上の勢力図を拡げていきました。
61式戦車以外だと、歩兵用の携行兵器である対MS重誘導弾「リジーナ」くらいしかザクへの有効な攻撃手段がなかった連邦軍は、では一方的にやられっぱなしだったのかというと、決してそんなことはありません。
同じく『重力戦線』の第1話では、地球降下作戦が実施されて1か月ほど経った後、「対MS特技兵小隊」が登場し、指揮官であり、第1分隊長の「バーバリー中尉」が対MS戦闘の再開を命じられます。そして、ザクと対峙した際、次々と仲間たちを失い、ただひとりになったバーバリーは、ワナである石切り場の穴にザク1機を落として、その頭部に大砲を撃ち込み、見事にザクの撃破に成功したのです。
その後、隠れていたザクに襲われて戦死するも、ラストに「MS通算撃破記録 13」というテロップが表示されました。恐らく個人と小隊を合わせた戦果と考えられますが、それでも劣勢の状態を踏まえれば、十分な成績といえるのではないでしょうか。
■戦車だけでもチームワークで主力MSを撃破
「MG 1/100 MS-06J ザク Ver.2.0 ホワイトオーガー」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ
『重力戦線』の第2話「陸の王者、前へ!」では、61式戦車によってザクを撃破する様子が描かれています。
連邦軍第44機械化混成連隊第301戦車中隊第1小隊の指揮官である「ハーマン・ヤンデル中尉」は、地上戦で華々しい戦果を挙げた「エルマー・スネル大尉」が搭乗する「ザクII ホワイトオーガー」と交戦した際、目くらましのスモークで錯乱させ、最後に背後から不意打ちをして、振り返り際に最後の一撃を加えたことでホワイトオーガーの撃破に成功しています。
同戦車部隊は2機のザク討伐に成功しているものの、もちろん代償は大きく、戦車部隊は壊滅し、ホワイトオーガーを倒したヤンデルも直後に歩兵によるミサイルで戦死しました。
ここまでを振り返ると、連邦軍は多くの損害を出している一方、巧みな作戦や戦術で61式戦車などを駆使し、何とかザクに抵抗していたことがうかがえます。
ちなみに、OVA『機動戦士ガンダム MS IGLOO 1年戦争秘録』では、鹵獲(ろかく)したジオン軍のザクIIを主力装備にした特殊部隊「セモベンテ隊」の活躍が描かれています。セモベンテ隊はザクだけでなく、61式戦車も編制に組み込んでいました。やはり、鹵獲できるザクの数にも限界があるようで、その不足を補うために61式戦車をあてがっていたようです。
また、ガンプラシリーズのひとつである「U.C.HARD GRAPH」の公式サイトでは、61式戦車について「ジオン軍モビルスーツを相手に撃破される姿ばかりが語られる61式戦車だが、実際には1年戦争の戦場に於いて、地球連邦軍が対抗でき、また、信頼できる唯一の兵器」「絶大な破壊力を誇る2連装155ミリ滑腔砲は、ジオン軍モビルスーツを一撃で仕留める性能を秘めていた」(表記ママ)と説明されています。
このように、MSを実戦に投入するまでの連邦軍は、おもに戦車でザクと対峙しており、当初は圧倒的な戦力差で退いていたものの、経験や戦訓の蓄積などによって、何とか対抗できるようになっていったようです。連邦軍のMSが戦線に投入され、オデッサ作戦で勝ったのちは、地球上での形勢は見事に逆転しています。
そう考えると、ガンダムなどのMSばかりに目を奪われがちですが、地上戦で踏ん張るために欠かせなかった「61式戦車」の功績も、決して忘れてはいけないでしょう。
(LUIS FIELD)
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