マーベルの新たな大作『エターナルズ』の重要テーマ? 人間の「多様性」に要注目
マグミクス / 2020年4月7日 19時10分
■障害や人種の多様性を映像に盛り込む
マーベルスタジオ制作の映画『エターナルズ』は、MCUの過去作「アベンジャーズ」ともつながるとされる大作映画です。新型コロナウイルスの影響で2020年11月の公開予定が2021年に延期となりましたが、人類の守護者の役割を担う複数のヒーローたちで結成されたチーム「エターナルズ」を描く大作として話題になっています。
メインの舞台となるのは、『アベンジャーズ:エンドゲーム』(2019年)後の現実世界。アンジェリーナ・ジョリーの出演も注目されていますが、この映画では、マーベルが長年かけてヒーローとともに表現してきた「多様性」というテーマも見逃せない要素となりそうです。
「インフィニティ・サーガ」と呼ばれるマーベルの作品群では、トニー・スターク、キャプテン・アメリカ、ソーのいわゆる「ビッグ3」が目立っていました。その一方で、マーベル作品では女性をメインとした作品や、黒人ヒーロー、新スパイダーマンのような子供のヒーローを描き、多様性を見せています。
マーベルスタジオは2018年からハリウッドの大作映画において、出演者やテーマの多様性を確保する取り組みを続けていますが、『エターナルズ』では、どのような多様性が表現されるのでしょうか。
ひとつ目は、聴覚障害を持ったキャラクター「マッカリ」。原作では男性キャラとして描かれていますが、MCU版では女性が演じることが決まっています。マッカリは超人的スピードが特徴の科学者であり、エターナルズの基礎能力である飛行やエネルギー光線などの能力を失ってしまう代わりに、誰よりも早いスピードを手に入れているというキャラクターです。演じるローレン・リドロフも先天的な聴覚障害を持っており、映画では手話での会話が見られるでしょう。
マーベルは過去に、聴覚障害のキャラクターをコミックで生み出しています。ある難聴の少年を勇気づけるために、マーベルは“ブルーイヤー”というヒーローをデザイン。アイアンマンとともにヒーローチーム“サウンドエフェクツ”を結成するコミック作品も刊行されています。
■ボリウッド俳優が登場、伝統のダンスシーンも?
マーベルが『エターナルズ』で表現する多様性のふたつ目は、「ボリウッド」。キンゴというメインキャラクターのひとりを演じるのはインド人俳優のクメイル・ナンジアニです。キンゴは、表の顔は「ボリウッド映画のスター」という設定のヒーローとして描かれます。
キンゴというキャラクターは、原作では侍の武術を扱う日本の映画スターという設定。今回の『エターナルズ』では日本の設定がインドに変わり、ボリウッドの文化が取り上げられます。
ナイジアニも「リハーサルにいたのがすべて南アジア人だった…それを見た瞬間、感動したよ」「今まで僕たちみたいな人種が(MCUの作品には)1人もいなかったのに、ワンシーンだけでこんなにいるってね」と語るなど、マーベル作品で表現されるインドに驚いていました。
映画では、ボリウッド映画伝統のダンスシーンが入っていることも明らかにされているので、注目したいところです。
■コミックで描かれたLGBTQヒーローが映画にも登場
ブライアン・タイリー・ヘンリー演じるLGBTQヒーロー『ファストス』 (C)MARVEL ENTERTAINMENT
そして、3つ目は『LGBTQ要素』。『エターナルズ』にゲイのキャラクターが登場することは2019年8月、マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長が明かしており、そのキャラクターがブライアン・タイリー・ヘンリー演じる「ファストス」であることがわかっています。男性パートナーとの間には子供もいる設定で、劇中にはファストスとパートナーのキスシーンを入れるといいます。
ファストスは発明家、建築家、兵器製造者、技術者と、さまざまな顔を持ち、超人的なパワー、念動力やテレポートなども行うスーパーヒーローですが、戦闘を好まないという特徴をもったキャラクターです。映画では彼のキスシーンの撮影で多くのスタッフが涙したともいわれており、性的マイノリティの表現には注目です。
アメコミにおいては、性の多様性を描くことはそれほど珍しくなく、昔から登場しているキャラクターをLGBTQに変更したパターンもあります。映画『X-MEN』にも登場した氷の能力をもったミュータント「アイスマン」も、のちにゲイと判明し、それを自覚したことで今まで生きてきた自分と未来の自分と向き合う……という展開も描かれています。
2022年に公開予定の映画『ソー:ラブ・アンド・サンダー(原題)』では、女性戦士・ヴァルキリーがバイセクシャルであるという設定が描かれると明らかにされています。今後のMCU(同一の世界観のもと製作されるマーベルヒーローの映像作品群)でも、セクシャルマイノリティのキャラクターが多く登場する可能性が広がっていくでしょう。
(大野なおと)
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