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おしゃべり機能付き「ガンダム」でも第18話だけ…なぜその前後で沈黙していたの?

マグミクス / 2024年10月17日 6時35分

おしゃべり機能付き「ガンダム」でも第18話だけ…なぜその前後で沈黙していたの?

■実は喋ることができた「ガンダム」

「ガンダム」は喋れます。ここでいう「ガンダム」とは、「アムロ・レイ」が乗っていた「RX-78-2」のことです。『機動戦士ガンダム』TVシリーズ全46話の中で1度だけ、第18話「灼熱のアッザム・リーダー」で声を出しました。

 敵である「アッザム」から4000度の高温攻撃を受けた際、ガンダムは「パイロット及び回路保護の為、全エネルギーの98%を放出中」「攻撃エネルギー低下」と喋って状況を伝えています。

 この時、エネルギーを放出したおかげでガンダムは動けず、アムロは攻撃に移れませんでした。単に警告を音声で伝えるだけでなく、周囲の状況を判断して行動する、高度な機能を有していることがわかります。

 しかしこの後ガンダムは、最終話で撃墜されたときも、ずっとだんまりでした。喋れるガンダムが喋らなかったわけです。

 高温の時にだけ例外的に喋るかというと、そういうわけでもないようです。第5話「大気圏突入」では、ザクが溶けるほどの高温を切り抜けていますが、ガンダムは無言でした。なお、ロケットも打ち上げる宇宙開発のプロ、JAXA(宇宙航空研究開発機構)によれば、減速せずに大気圏へ再突入した際、表面温度は3000度にも達するそうです。

 同じ高温下の状況でも、第5話で喋らず、第18話で喋ったのはなぜでしょうか?

■格好いいセリフを叫ぶ、だからこそ恥ずかしい?

ガンダムを喋らせた敵メカ「アッザム」。「1/550 ジオン軍重機動砲座アッザム」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

 第5話の後、第18話の前に起こったことといえば、マチルダ隊による補給が挙げられます。

 第9話「翔べ!ガンダム」や第14話「時間よ、とまれ」では、連邦軍から物資と人員が運ばれてきました。この時にガンダムのコンピューターがバージョンアップされたか、マチルダ隊のスタッフがアムロに教えるかして、音声警告が使えるようになったのではないでしょうか。

 では、第18話のあとにガンダムが喋らなくなったのはなぜなのか……「アムロが喋る機能をOFFにした」というのがシンプルな答えでしょう。

 モノが喋ると、そこには人格があるように感じられます。アムロは戦闘中も「そこっ!」とか「やらせるか!」とかいった、カッコイイ「ひとりごと」を頻繁に発しています。もしかするとアムロは、ガンダムの音声機能を確認したのち、そのガンダムにひとりごとを聞かれているような感覚を覚えたのではないでしょうか。

 誰にでも経験があると思いますが、ひとりごとを聞かれると、とても恥ずかしいものです。アムロはナイーブなので、ガンダムにカッコイイセリフを聞かれることがないよう、つまりアムロ自身がガンダムに人格を感じないよう、喋る機能を切っても何の不思議もありません。

 さらにいうなら、現代のスマホさえ音声で入力できるのですから、ずっと未来である宇宙世紀、喋るガンダムのコクピットに音声入力機能があっても不思議ではないでしょう。アムロが「やらせるか!」と口にしたセリフをガンダムが音声入力と誤解し、「何をやらせないのですか? 具体的にお願いします」などと返され、恥ずかしい思いをした、なんてこともあったのかもしれません。

「ガンダム」の世界では、「ミノフスキー粒子」によってレーダーや、これに関連する自動化システムが使えなくなっています。そのためか、「ホワイトベース」の面々や、一年戦争の外伝に登場した人びとも、頻繁に会話をしながら戦っています。こうしたなかで音声出力/入力のシステムは使いにくいものとして受け取られたため、ガンダムも「ジム」も「陸戦型ガンダム」も喋らないのではないでしょうか。

 見た目に厳ついガンダムですが、喋ったときの声は意外にも高く可愛らしく、聞きようによっては女の子を連想させるものでした。ここまでのお話の流れは一旦忘れ、実は最初から音声警告機能がついていたとしたら……つまりアッザムは、大気圏再突入も無言で耐え抜いた「ガンダムちゃん」に声を上げさせたわけで、その責めは『機動戦士ガンダム』でもっとも激しいものだったといえるでしょう。

 ある意味、最強の敵だったといえるのかも知れません。

(箭本進一)

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