ウルトラマンを倒した怪獣「ゼットン」 TVの前の子供たちを絶望の淵に叩き込む
マグミクス / 2020年4月9日 7時50分
![写真](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/magmix/magmix_26100_0-small.jpg)
■ウルトラマンを倒した怪獣、ゼットン
1967年4月9日は、『ウルトラマン』最終話「さらばウルトラマン」が放送された日です。地球侵略を目論むゼットン星人の切り札として登場した宇宙恐竜ゼットンは、圧倒的な力でウルトラマンを倒し、TVの前の子供たちを絶望させました。初登場から50年以上が経過した現在でも、「最強怪獣」の代名詞として高い知名度と人気を誇っています。幼少時に見たゼットンの思い出を、ライターの早川清一朗さんが語ります。
* * *
筆者がゼットンの存在を知ったのは、ケイブンシャの『ウルトラマン大百科』だったと思います。凶悪怪獣をスペシウム光線や八つ裂き光輪で倒してきたウルトラマンが唯一敗北し、死に追いやられた最強怪獣として書かれており、強さと美しさを合わせ持つデザインも相まって、強烈な印象を植え付けられた記憶があります。
ただ残念なことに、当時はVHSビデオすらまだ普及しておらず、見たい番組を自由に見ることはできません。再放送だけが望みの綱でしたが、筆者が住んでいた地域では先に『帰ってきたウルトラマン』が始まったので、初めて見たゼットンは二代目でした。ちょっとメタボなフォルムでそれなりに強かった印象がありますが、バット星人と二体がかりでも「新マン」に倒されてしまっているため、絶対的な強さを感じるには至りませんでした。
本物のゼットンを見たい、再放送はまだだろうか。そう願っていた筆者は、ある日新聞のTV欄で、とても興味を引かれる番組を見つけたのです。
昭和50年代から平成の初期あたりの時代には、アニメや特撮の名場面を切り出した特集番組がよく放送されていました。『フランダースの犬』でネロがパトラッシュと共に天に召されるシーンや『みなしごハッチ』でハッチがママと出会うシーンを何度見たかは数え切れません。そういった番組に、今回はゼットンが登場すると書かれていたのです。これはもう見るしかないと、夜が楽しみで仕方がなかった記憶があります。
そうして番組が始まりましたが、『ウルトラマン』そしてゼットンは、番組の最後の方に登場するだろうというのは、子供心にも分かっていました。なので焦らず、次々と登場する特撮ヒーローたちの活躍に目を輝かせながら、その時を待っていました。
■絶対の恐怖と科学の力
『ウルトラ怪獣シリーズ 03 ゼットン』(BANDAI)
番組が終わりに近付き、遂に登場したゼットンは、本に書いてあった通りの圧倒的な強さを見せつけてくれました。科特隊本部に向かおうとするゼットンに対し、ウルトラマンは回転しながらキャッチリングを放ち、ゼットンを拘束しようと試みます。しかしゼットンがゆっくりと振り向いて火球を発射するとウルトラマンは赤い煙に包まれ倒れてしまい、拘束も引きちぎられてしまうのです。火球の温度はなんと一兆度。この温度にはさまざまな検証がなされており、ありえないとされていますが、なにせウルトラマンを倒した怪獣なのです。このくらいの説得力がなければいけないということでしょう。
そこからのゼットンはテレポートでウルトラマンをかく乱し、八つ裂き光輪をバリヤーで跳ね返し、ウルトラマンにのしかかって首を絞め上げます。
辛うじて体勢を立て直したウルトラマンが放った、起死回生のスペシウム光線すらゼットンは吸収してしまい、逆に跳ね返してウルトラマンのカラータイマーに直撃させるのです。
動きが止まったウルトラマンに、ゼットンはとどめの一撃を放ちます。そうして棒立ちとなったウルトラマンの目から光が失われ、最強のヒーローは、最期を迎えるのです。このシーンは、脚本段階では起き上がろうとしたウルトラマンのカラータイマーを、ゼットンが潰し割ることになっていましたが、描写が残酷すぎるという理由で変更になっているそうです。
「ウルトラマンはゼットンに倒される」と知っていた筆者にとっても、それは衝撃的なシーンでした。リアルタイムで見ていた子供たちが受けたショックはどれほどのものだったことか。
元プロレスラーの前田日明氏は、ウルトラマンが倒されたショックで少林寺拳法を習い始め、格闘家としての第一歩を踏み出しています。ゼットンの強さは、人の人生を変えるほどの大きな影響力を持っていたのです。
その後、ゼットンはペンシル爆弾によって倒され地球の危機は救われますが、別の個体が多くの「ウルトラシリーズ」に強力怪獣の象徴として登場し、歴代のウルトラ戦士たちを苦しめてきました。これからもゼットンは、「ウルトラシリーズ」の歴史を紡ぎ続けるために、欠かせない存在で居続けるのでしょう。
(ライター 早川清一朗)
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