放送開始した特撮『GARO -VERSUS ROAD-』 不透明な世界で「生き残りと選択」に向き合うドラマ
マグミクス / 2020年4月9日 16時20分
■バーチャルゲームの世界が舞台、新たな「GARO」の物語
大人のための特撮ドラマとして、2005年にTV放映が始まった「牙狼 GARO」シリーズの15周年を記念し、新しいTVシリーズ『GARO VERSUS ROAD』(以後、『VS ROAD』)が4月2日(木)からスタートしました。
特撮界の第一人者である雨宮慶太監督が生み出した深夜ドラマ『牙狼 GARO』は、黄金の鎧と魔戒最高騎士の称号「牙狼」を受け継ぐ冴島鋼牙が闇に潜む魔物たち「ホラー」と戦うダークファンタジーとして人気を呼びました。その後、さまざまな続編やスピンオフ作品が生まれ、鋼牙の跡を継ぐ雷牙を主人公にした映画『GARO 月虹ノ旅人』も2019年に劇場公開され、2020年3月にDVDも発売されています。『月虹ノ旅人』は鋼牙、雷牙に加え、鋼牙の先代にあたる大牙も登場。三世代の「牙狼」が揃い踏みしました。
シリーズの集大成的な内容だった『月虹ノ旅人』で冴島家の物語がひと区切りついたこともあり、『VS ROAD』はまったく新しいシリーズとなり、バーチャルゲームの世界を舞台にした、より身近な物語となっています。
■勝ち残った者には、「牙狼」の称号が与えられる
ドラマ『GARO -VERSUS ROAD-』主人公の久遠世那(松大航也)
新シリーズの主人公となるのは、ごく普通の大学生である世那(松大航也)です。ボクシングを習っているので格闘能力はかなり高いものの、冴島家の鋼牙や雷牙のような特別な家柄というわけではありません。そんな世那のところに、街で噂になっている、謎めいたVRグラスが届きました。世那がVRグラスを掛けてみたことから、物語の幕が開きます。
世那が気づくと、そこは今までいた世界とは別の異空間でした。他にも100人ものプレイヤーが集まり、ざわついています。100人のなかには世那の幼なじみで、ゲーマーの翔李(清水尚弥)もいました。戸惑っている世那たちの頭上に現れたのは、黄金色に輝く「牙狼」の鎧です。ゲームの案内人を名乗る美女・朱伽(桃月なしこ)によると「勝ち続けた者は、望むものは何でも手に入る」「最後に残った1人は、牙狼の称号が得られる」とのことです。
戦う相手は、100人いるプレイヤーだけではありません。不気味な鬼のような姿をした魔物・ホラーも襲ってきます。ゲームのはずなのに、リアルに痛みも感じられます。プレイヤー同士でのルール無用の抗争も始まり、参加者数はどんどん減っていくことになります。
■波紋を起こした『バトル・ロワイアル』『龍騎』を彷彿?
世那の友人で、ゲーム世界での戦いに参加することになる星合翔李(清水尚弥)
現実世界では気弱な翔李ですが、ゲームの世界では気が強くなり、いきなり南米の格闘技カポエラを披露してみせます。ボクシングを習っている世那は、普段は人を傷つけないように気をつけているものの、ゲームの世界だと分かり、本気モードになります。翔李を襲っていたチンピラを打撃技だけでなく、プロレス技も使って倒します。人数がひとり減りました。このゲームの世界では、通常よりもパワーがぐんと増大するようです。
主人公たちが生き残りを賭けて、最後の1人になるまで戦い続けるという設定は、深作欣二監督の映画『バトル・ロワイアル』(2000年)を思わせます。また、特撮ドラマ好きな人なら、2002年にテレビ放映された『仮面ライダー龍騎』(テレビ朝日系)を思い浮かべるのではないでしょうか。
少年少女たちが武器を手に殺し合うという『バトル・ロワイアル』は、その壮絶な内容が国会でも取り沙汰された問題作でした。ニューヨークで起きた「9.11」同時多発テロの後に制作された『仮面ライダー龍騎』も、13人いるライダー同士が戦うという斬新な設定が大きな波紋を呼びました。正義のヒーローが悪を倒すという勧善懲悪の物語ではなく、勝ち残った者がヒーローになるというリアルな考え方を、受け入れられない人も多かったのです。
■不透明な現代社会を投影した世界観
今回、雨宮監督は同作の原案のみにとどまっており、メインディレクターとして綾部真弥監督の名前がクレジットされています。綾部監督はこれまでに映画『人狼 インフェルノ』(2018年)など、心理サスペンス「人狼ゲーム」シリーズの監督・脚本を手掛けてきました。また、女子高生たちが血まみれになる園子温監督の不条理映画『リアル鬼ごっこ』(2015年)や、犯罪サスペンスの傑作『ヒメアノ~ル』(2016年)などに助監督として参加しています。これまでの「牙狼」シリーズとはずいぶん異なる、過激な展開となりそうです。
ゲームの案内人である美女・朱伽とは、何者なのか? このゲームは誰が、何の目的で主宰しているのか? 第1話の終わりに、世那たちの戦いを眺めていた赤い髪の女性・アザミ(日南響子)は物語にどう関係していくのか? 回が進むにつれ、謎はますます深まっていくのではないでしょうか。
現実の世界も、目には見えない新型コロナウイルスの影響で、街の様子は瞬く間に変わってしまいました。東京五輪が延期になるなど、将来が予測できない不透明な状況となっています。ごく普通の大学生である『VS ROAD』の主人公・世那は、これからどんな選択をし、どうサバイバルしていくことになるのでしょうか。戦うこと、生きることの意味を問いかける、目が離せないドラマになりそうです。
※ドラマ『GARO -VERSUS ROAD-』は、TOKYO MXで毎週木曜22:00~、BS日テレで毎週木曜 25:00放送中。バンダイチャンネル、Huluなどでも配信されます。
(C) 2020「VERSUS ROAD」雨宮慶太/東北新社
(長野辰次)
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