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劇場版『ボルテスV』実は42年前にもあった幻の映画企画とその内容 当時の記事を発掘

マグミクス / 2024年10月18日 7時25分

劇場版『ボルテスV』実は42年前にもあった幻の映画企画とその内容 当時の記事を発掘

■放送当時は日本でも人気の高かった『ボルテスV』

 日本のTVアニメながら、フィリピンで国民的人気作品になるまでの支持を集めた『超電磁マシーン ボルテスV』、その人気から生まれたリメイク作品が、このたび2024年10月18日より国内劇場公開されることになった『ボルテスV:レガシー』です。

 フィリピンで大人気だったという話は、よくマスコミにも取り上げられているのでみなさんもご承知のことでしょう。ところが『ボルテスV』の国内人気に関しては意外と語られていません。はたして日本国内での人気はどの程度のものだったのでしょうか。

『ボルテスV』は、前作『超電磁ロボ コン・バトラーV』の人気から、同系統の作品として1977年6月4日から放送が開始されました。5人のパイロットがそれぞれ5機のメカに乗り、合体して巨大ロボとなって、宇宙からの侵略者と戦うというスタイルです。

 企画は東映テレビ事業部で、制作は創映社(日本サンライズ)、放送局はテレビ朝日、スポンサーはポピー(バンダイ)でした。後に長浜忠夫監督が関わった後番組『闘将ダイモス』を含めて、「長浜ロマンロボット3部作」と呼ぶ人も多くいます。

 しかし、同じスタイルといっても『コン・バトラー』と『ボルテスV』は全く同じというわけではありません。なぜなら『ボルテスV』は前作にはなかった要素をいくつか加えていたからです。

 そのひとつが「ストーリー面の重視」でした。ロボットアニメといえば1話完結が基本であり、新キャラクターの登場やメカのパワーアップといった設定に関わるエピソード以外は飛ばして視聴しても話が通じるものでした。ところが『ボルテスV』には縦軸というべき、連続ストーリーものの要素があったのです。

 それが主人公「剛(ごう)健一」たち剛3兄弟の父親「剛健太郎」との再会のドラマと、「『角』を持つ者が絶対である」という思想を持つ「ボアザン星人」の地球征服軍司令官「プリンス・ハイネル」の出生に関わるドラマになります。この善と悪、両側で動いていくドラマ構成が『ボルテスV』の魅力となりました。

 この、大人の鑑賞にも耐えうる作劇が国内でも『ボルテスV』の人気の要となり、後にフィリピンで大ヒットする要因となったのでしょう。もちろん本来のターゲットである子供の人気も高いものでした。

 本作の主役ロボである「ボルテスV」は、見た目自体は前作の主役ロボ「コン・バトラーV」と大きく変わるものではありません。しかし、ボルテスVを唯一無二の存在としたのが主力武器「天空剣」でした。

 なぜなら剣が定番のトドメ技、いわゆる最大の必殺技となるロボットアニメは、それまでの作品にはなかったからです。現在では剣技でのトドメが定番のひとつですが、その元をたどればボルテスVに行き当たるでしょう。ボルテスVがきっかけで、巨大ロボの必殺技は剣が多くなったというわけです。

 ちなみにボルテスVの必殺技「天空剣・Vの字斬り」は、この後のロボットアニメでもたびたび「○○剣・○○斬り」という形で引き継がれていきました。そして、この流れは「スーパー戦隊シリーズ」の巨大ロボにも引き継がれています。

 もっとも、日本国内での『ボルテスV』の人気を確実なものにした要因は、筆者の私見ですが、「ハイネル」というキャラクターにあるかもしれません。それを支えたのは、作品本来のターゲットにいなかった女性層でした。

■幻の『ボルテスV』劇場版とは

『ボルテスV:レガシー』より、手にしているのが「天空剣」。「ROBOT魂〈SIDE SUPER〉VOLTES V」(BANDAI SPIRITS) (C)T & TPI

『ボルテスV』が放送されていた1977年といえば、『宇宙戦艦ヤマト』の劇場版が公開され、アニメブームが始まった時期でもありました。

 こういった背景から中学生や高校生、大学生といった層にもアニメを視聴する人は少なくなかったのです。特に『ボルテスV』に注目した層には女性が多くいました。敵役であるハイネルに魅力を感じたわけです。

 かつては『勇者ライディーン』の「プリンス・シャーキン」、『コン・バトラーV』の「大将軍ガルーダ」、本作の後番組となる『闘将ダイモス』の「リヒテル提督」に本作のハイネルを加えた4人を「美形四天王」と呼ぶ人もいました。ちなみに、これら4人のキャラクターの声は、すべて市川治さんが担当しています。

 私見ですが、このなかでもハイネルの人気は特に高く、女性ファンにとっては今でいう「推しキャラ」といえる存在でした。その人気から当時、ファンのあいだで生まれつつあったアニメ系二次創作同人誌で多く取り上げられるようにもなります。

 このハイネル人気に関する傍証として、当時のアニメブームを支えた「ロマンアルバム」(徳間書店)での扱いが挙げられるでしょう。ロマンアルバムとは、当時としては珍しいアニメムック本シリーズで、その売れ行きも好調でした。このロマンアルバムで、ハイネルは敵役として初めて表紙でセンターを飾っています。

 こうした実績を見ていくと、一般的にはけっして高い認知度のあった作品とはいえなかったかもしれませんが、アニメが好きなファン層には知名度の高い作品だったといえるでしょう。そして、『ボルテスV』には幻の劇場版企画というものもありました。

筆者の蔵書より、「アニメージュ」1982年2月号から8月号

『ボルテスV』の劇場版は、雑誌「アニメージュ」(徳間書店)に情報が掲載されたこともあります。それによると、1982年2月号で制作が発表されており、TV版の再編集ではあるものの、一部に描き起こしのカットも入ると記事にはあります。1982年秋以降に、東映系で全国公開の予定とも記載されていました。

 翌月の3月号ではカラー1ページで紹介されています。この情報は毎月のように更新されていました。4月号では2万人にも及ぶ署名が集まったこと、TVシリーズのメインスタッフの集結、新キャラクターの登場、プロデューサーには飯島敬さんの名前も挙がっています。

 ところが徐々に情報は小出しになっていき、5月号では上映時間は2時間くらいを予定、6月号には公開は12月頃になるかも、7月号には進行ストップ状態、8月号には正式に製作中止と記されていました。

 こういった経緯から、今回の『ボルテスV:レガシー』の劇場公開を、「42年ぶりのリベンジ」ととる人もいるようです。筆者も当時を知るひとりですから、こみ上げてくるものを感じざるを得ません。

 後年、日本国内では大きな動きがないことで存在が埋没していった『ボルテスV』が、この機会にふたたび脚光を浴びることを願っています。

(加々美利治)

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