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『Gのレコンギスタ』の10年 富野監督は何を描きたかったのか…真の完成は劇場版です

マグミクス / 2024年10月20日 7時25分

『Gのレコンギスタ』の10年 富野監督は何を描きたかったのか…真の完成は劇場版です

■ガンダム35周年プロジェクトのひとつとして送り出された『Gレコ』

「ガンダム」シリーズのひとつ『ガンダム Gのレコンギスタ』がTV放送開始されてから、2024年10月でちょうど10周年となりました。

 富野由悠季監督が『∀ガンダム』から15年ぶりに送り出したTVシリーズの「ガンダム」作品であり、「機動戦士ガンダム35周年プロジェクト」(2014年発表)的にはアニメ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN I 青い瞳のキャスバル』(2015年)と並ぶものです。同時期に『ガンダムビルドファイターズトライ』もTV放送され、人びとはガンダム三昧の日々に恐怖……ではなく狂喜しました。

 その始まりは、雑誌「ガンダムエース」2010年12月号(KADOKAWA)に富野監督が寄稿した小説、『はじめたいキャピタルGの物語』です。世界設定やキャラクターもほぼそのままであり、アニメ放送まで足かけ5年がかりだったことになります。

 物語の舞台は、唯一のエネルギー源「フォトン・バッテリー」が宇宙から無料でもたらされる「リギルド・センチュリー(略称はRC)」という時代です。それを運ぶ軌道エレベーター「キャピタル・タワー」に宇宙海賊と謎の機体にして主役メカ「G-セルフ」が襲来し、主人公「ベルリ・ゼナム」が自衛組織「キャピタル・ガード」の候補生として迎え撃ちます。

 見事にGセルフを鹵獲したベルリは、海賊部隊の少女「アイーダ・スルガン」と出会い、成り行きから海賊の戦艦「メガファウナ」に乗り込み、宇宙と地球との争いに巻き込まれていく……というあらすじです。

 地球上では大陸国家である「アメリア」(かつての北米大陸に相当)と「ゴンドワン」(ほぼ欧州地域)が10年以上も大陸間戦争を繰り広げています。かたや宇宙では月の裏側に「トワサンガ」というスペースコロニー国家(かつてのジオン公国/サイド3)があり、さらに金星方面には「ビーナス・グロゥブ」というすごい技術を持つスペースコロニー群があります。

 宇宙側は地球にフォトン・バッテリーを無償で提供しており、そのかたわらで、トワサンガには「ドレット軍」、ビーナス・グロゥブにはジット団という反地球的な過激派がいます。いずれも独自に地球奪還作戦「レコンギスタ」を企んでおり、それぞれ地球側の不穏分子に進んだ(過去の技術だが、地球では失われている)技術によるモビルスーツや戦艦を提供して、戦乱を悪化させていく……という図式です。

 そのような社会情勢を背景に、本作はベルリとアイーダが「デカい船に乗って地球から月、金星へと旅する」というロードピクチャー的な作りとなっています。「宇宙から地球に軍事的に里帰りしたい一部のスペースノイドが、地球の武装組織と手を組んで混乱が広がる」という意味では、『∀ガンダム』の構図を踏襲しつつ、勢力の数が増えたぶんだけややこしくなっていました。

■「子供に見てもらうため」のはずが、大人にも理解できない難解さに

ヒロインのアイーダ。「劇場版『Gのレコンギスタ IV 激闘に叫ぶ愛』Blu-rayパーフェクトパック」(バンダイナムコフィルムワークス)より (C)創通・サンライズ

 これだけ複雑な「ガンダム」作品を、富野監督はどういうつもりで作り、何を伝えたかったのでしょうか。かつてメディアの取材に対し富野監督は「子供に観てもらうため」「ガンダム(シリーズ第一作)よりも残る作品」を目指したとハッキリ述べています。それは「根本的にガンダム離れをしなければならない」、つまりガンダムのブランドが通じる40代に向けて作ると先細りになるという危機感も後押ししたようです(MANTANWEB「富野由悠季監督:『Gのレコンギスタ』を子供向けに作った理由 スマホ時代に警鐘」2019年11月23日)。

 深夜枠であったことはさておき、放送後に子供どころか大人から挙がっていた声は「情報量が多すぎる」「説明不足で、話が頭に入ってこない」というものでした。子供に観てもらう以前に、大人でもついて行けなかったのです。

 一例をあげれば「キャピタル・ガード」は自衛組織、「キャピタル・アーミィ」は同じ国家内にある別組織で、しかもアーミィは裏でゴンドワンから支援を受けています。その説明は劇中ではほとんどなく、混乱を誘うのも無理はありません。

 富野監督が子供向けを意識していたのは、実はベルリとアイーダが宇宙の名家「レイハントン家」に生まれた姉弟であり、G-セルフも基本的にはふたりだけが動かせる(生体認証)という、昔ながらの「選ばれた血筋」設定をしていたことでもうかがえます。肉親が残してくれたスーパーロボットという、『マジンガーZ』みたいな分かりやすさですね。

 しかし、主役のふたりを取り巻く状況があまりに複雑であり、それを説明するのも全26話という短さ(「ガンダム」シリーズ作品としては短い)では舌っ足らずで終わってしまいました。G-セルフが『ドラゴンボール』みたいな動きをするロボット作画はすごかったのですが、お話の理解を助けてくれなかったのです。

■劇場版5部作こそ『Gレコ』真の完成形!

デザインは『ストリートファイターII』で知られるあきまん氏。「HG 1/144 ガンダムベース限定 G-セルフ(パーフェクトパック装備型)(劇場版『Gのレコンギスタ』Ver.)」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

 そうした「伝わらなさ」を誰よりも認識したのが、ほかならぬ富野監督でした。「映画でいうところの0号、試作品になってしまった」との反省を込めて、2019年からは劇場版5部作を相次いで送り出しました。

 単なる編集版ではなく、新作カットを追加して再構築したものです。「TV版で決定的に欠けていた部分を手直ししてますね」とご本人も言っており(週プレNEWS「ガンダム40周年。富野由悠季監督が劇場版『Gのレコンギスタ』を語る『“脱ガンダム”のつもりが、“ガンダムの呪縛”に囚われていた』」2019年11月29日)戦いのあいまにひと言ふた言足すばかりか、幕間でじっくり状況を説明するシーンまで加えられています。

 ベルリのライバルである「マスク」こと「ルイン」も、TV版ではことあるごとに「自分は『クンタラ』出身」だからと嫉妬心や敵がい心を語っていたものの、「クンタラ」が何かは言及していません。そこは劇場版でも長々と説明はしないものの、ベルリはエリートの血筋、自分は虐げられた人々(被差別階級)の末えいだと、負の感情を「伝わるように」口にしています。

 ほかGセルフの最凶兵器「フォトン・トルピード」が艦隊を一瞬で殲滅できる(光子に変換し、バッテリー補充も出来る)恐ろしさがきっちり描写され、マスクとベルリがスペースコロニーを背景に超高速バトルを会話付きで繰り広げるなど、物語を充実させつつ、「ロボットアニメ」としての満足度も爆発的に跳ね上がっています。

 おそらく『Gのレコンギスタ』をTVシリーズだけしか観ていない人たちは、「ワケの分からない消化不良アニメ」として記憶していることでしょう。富野監督が本当に伝えたかったことを受け取るためにも、絶対に劇場版5部作を観るべき! お子さんがおられるなら、家族で鑑賞することをお勧めします。

(多根清史)

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