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モンキー・パンチ氏一周忌 定時制高校入学のハプニングが作品の土壌を作った?

マグミクス / 2020年4月11日 7時50分

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■手塚治虫に憧れて

 2019年4月11日、漫画家のモンキー・パンチ氏が81歳で亡くなりました。代表作『ルパン三世』をはじめとして多くの青年マンガを手掛ける傍ら、大学で教鞭をとり後進の育成にあたり、日本漫画家協会でも理事や参与を務めるなど、マンガ業界の発展にも力を尽くしました。また1980年代からパソコンでの作品執筆に取り組んでおり、デジタル作画の先駆者としても知られています。子供の頃からアニメ『ルパン三世』に親しんできたライターの早川清一朗さんが、モンキー・パンチ氏を追悼します。

* * *

「モンキー・パンチ」という名前を知ったのは、アニメ『ルパン三世』の原作者としてのクレジットでした。とはいえ子供の頃は外国人の名前だと思い込んでおり、日本人だと知ったのは、だいぶ後のことになります。

 モンキー・パンチ氏の本名は加藤一彦さん。1937年5月26日、北海道厚岸群浜中町に生まれました。漁師だった父親の仕事の関係で一旦は愛媛県に移住するものの、小学校三年時に再び浜中町に戻っています。中学生の頃には手塚治虫先生に憧れ漫画家になりたいと考えており、マンガ雑誌に4コママンガを投稿して初めての原稿料をもらうなど、早くも才能を発揮し始めていました。中学卒業後は地元の霧多布高校の普通科に入学するのですが、同校の夜間部の学生が足りず廃校を免れるために突然定時制へと切り替えられてしまうハプニングに見舞われてしまいます。

 昼間が暇になってしまった加藤氏は、釧路赤十字病院・浜中診療所で道下俊一医師の元、レントゲン助手のアルバイトを始めます。こうして小さな漁村から釧路という市街地に頻繁に出かけるようになった加藤氏は映画館に通いつめ、アメリカ映画と文化を知らず知らずのうちにどん欲に吸収し続けることになります。学校側の都合がもたらした偶然が、後のモンキー・パンチを生み出す土壌となっていることに、運命のいたずらを強く感じさせられるエピソードです。

■上京後、貸本漫画家としてデビュー

『ルパン三世傑作集』(双葉社)

 19歳の時に漫画家になるため上京した加藤氏は、職を転々としながら作品を執筆、1959年に貸本劇画『死を予告する鍵』でデビューを果たします。当時のペンネームは本名を少し変えた「加東一彦」「かとう一彦」を始めとして、「ムタ永二」「霧多永二」など複数の名前を使い分けていました。この時期にアメリカのマンガ雑誌「MAD」の影響を受け、作風がアメコミ風のものとなっていますが、手掛けた貸本の中には『サスケ』『カムイ伝』で知られる白戸三平氏のような作風の作品も存在しており、試行錯誤の跡が伺えます。

 その後、後を追って上京してきた弟の輝彦氏と共に貸本漫画家として活動する傍ら、『タイガーマスク』や『0戦はやと』を代表作に持つ辻なおき先生の元でアシスタントを務めるなど旺盛な活動を続けていた加藤氏は、1966年に双葉社の「漫画ストーリー」に『プレイボーイ入門』が掲載され、商業雑誌デビューを果たします(このときのペンネームはムタ永二)。

 そうして1967年、双葉社で創刊された「漫画アクション」で遂に『ルパン三世』の連載が始まります。編集長の清水文人氏の命令でペンネームを「モンキー・パンチ」に改名したのもこの頃で、すぐに変えるつもりが作品のヒットにより変えられなくなり、以後使用し続けることになってしまいます。

『ルパン三世』は1971年に初めてアニメ化され、2018年に至るまで5度のTVアニメ化を果たします。中でも1977年から1980年にかけて放送された第2シリーズは特に人気が高く、繰り返し再放送されています。また劇場版やTVスペシャル版なども多数制作され、国民的作品としての地位を不動のものとし、モンキー・パンチの名を世に知らしめました。

 2003年、66歳の時に東京工科大学大学院メディア学研究科メディア学専攻に入学するなど勉強熱心だった氏は、2005年には大手前大学人文科学部メディア・芸術学科マンガ・アニメーションコース教授に就任し、後進の育成にあたります。

 デジタル作画を嗜好した最初期の人物でもあり、晩年にはアップルのMacintosh(Mac)とワコムの液晶ペンタブレットで作画を行うなど、意欲的な活動を続けていました。2003年にはデジタルマンガ協会の発起人となり、2012年まで会長を務めています。

 表現と技術の最先端を絶えず走り続けたモンキー・パンチ氏がマンガ界にもたらした功績は、計り知れないものがあります。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

※参考文献:『追悼、モンキー・パンチ ある漫画家の60年間の軌跡』(双葉社)

(ライター 早川清一朗)

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