「どうしてこうなる」「タイトルおかしい」 意外すぎた『ウルトラマン80』の最終回
マグミクス / 2024年10月28日 21時25分
■二転三転する設定のなかで迎えた最終回
放送45周年を迎える2025年に初めてのBlu-ray BOXが発売されるなど、『ウルトラマン80』が再び盛り上がりを見せています。
1980年4月から1981年3月まで放送された『ウルトラマン80』は、『ウルトラマンレオ』以来、5年ぶりとなる待望のウルトラシリーズの新作でした。主人公の「矢的猛」が中学校の教師をしながら防衛隊の隊員を務める「ウルトラマン先生」という新機軸が取り入れられ、大きな話題を集めました。
しかし、途中で設定が二転三転し、教師という設定も舞台になっていた中学校も登場しなくなってしまいます。物語はシリアスなSFドラマ、子供との交流をメインとしたドラマ、女性型ウルトラマン「ユリアン」とのドラマと変遷していき、視聴率も低迷するなかで、ついに最終回を迎えました。
●えっ、ウルトラマンが最終回なのに戦わない?
その最終回のタイトルは、「あっ! キリンも象も氷になった!!」という風変わりなものでした。これまでのウルトラシリーズの最終回のタイトル「さらばウルトラマン」「史上最大の侵略」「ウルトラ5つの誓い」などと比べると、明らかにテイストが違います。そもそも、一見しただけでは最終回だと分かりません。
ストーリーも異色のもので、なんと「ウルトラマン80」が一度も戦わずに終わってしまうのです。
九州の南原市に謎の大寒波が襲来し、街がすべて凍りついてしまいます。動物園のキリンも象も、氷になってしまいました(早くもタイトル回収)。原因は怪獣「マーゴドン」です。マーゴドンは暖かい星のエネルギーを吸い取って凍らせてしまう能力を持っており、このままでは地球も滅んでしまうことが分かります。
防衛隊「UGM」の攻撃も、マーゴドンには通用しませんでした。ウルトラマン80に頼るような口ぶりの隊員たちを、「オオヤマキャップ」は一喝します。
「バカモン! ウルトラマン80はもう現れない! 80の助けはいらない! 断固として80の力を借りないで怪獣をやっつける!」
UGMはマーゴドンを鉄球で打ち砕く「ジャイアントボール作戦」を実行に移しますが、あえなく失敗してしまいます。矢的猛と「星涼子」は80とユリアンに変身しようとしますが、オオヤマが矢的を呼び止めて声をかけました。
「これまでウルトラマン80には、ずいぶん助けられた。これまでのお礼を言うよ、ウルトラマン80」
オオヤマキャップは、矢的の正体がウルトラマン80だと気付いていたのです。オオヤマはこれまでの戦いで傷付いた80を案じ、「地球はやっぱり、地球人の手で守らねばならん」とUGMの力だけでマーゴドンを倒すことを誓います。そして、オオヤマの指揮のもと、再びジャイアントボール作戦が決行され、見事マーゴドンを打ち砕きました。
オオヤマは隊員たちの前で矢的の正体がウルトラマン80だと明かし、矢的と涼子を送る「お別れパーティー」を開きます。「これで我々は胸を張って、80とユリアンにさよならが言える」とオオヤマが語ると、矢的は「さよならは終わりではなく、新しい思い出の始まりって言います。じゃあ、みんな、元気で!」とさわやかに別れを告げました。矢的と涼子は地球最後の1日を存分に楽しみ、80とユリアンに変身して地球を去っていきます。
これまでにもウルトラシリーズの最終回では、人類の手で怪獣を倒したことがありました。『ウルトラマン』では「科学特捜隊」が新兵器「ペンシル爆弾」で「ゼットン」を倒しましたし、『ウルトラマンタロウ』では人間に戻った「東光太郎」が「バルキー星人」を倒します。
とはいえ、いずれもウルトラマン、ウルトラマンタロウが登場して戦った後のことです。主人公が一度も変身して戦わない『ウルトラマン80』の最終回は、明らかに異色だったと言えるでしょう。
■『ウルトラマン80』の最終回は失敗作だったのか?
『ウルトラマン80』Blu-ray BOX(円谷プロダクション)
●最終回は「どうしてこうなった」のか
このような最終回になったのには、理由があります。実は初期段階の設定では、太陽系の外惑星を滅亡させたほどの超怪獣であるマーゴドンが、南太平洋やアフリカ大陸を凍結させてしまう描写があったそうです。しかし、製作上の都合で規模が縮小され、舞台が南原市限定になってしまいました。アフリカのサバンナを凍らせるから、「キリンも象も氷になった!」というタイトルがついていたのでしょう。
さらに当初は前後編の予定でしたが、放送日程の都合で1話に短縮されることになってしまいます。予定されていた最終回のタイトルは、「UGMの地球平和宣言」でした。
『君はウルトラマン80を愛しているか』(タツミムック)で、最終回の脚本を書いた石堂淑朗氏は、ストーリーはプロデューサーで最終回を監督した満田かずほ氏(かずほは禾に斉)のアイデアだと明かし、「プロデューサーの野村清さんとTBS近くのおでん屋さんの2階で『もうお終いだから金もねえや』って、安いおでん食ったっていう、それだけ覚えてる」と話しています。
野村プロデューサーがこぼした通り、ほかのスタッフも『ウルトラマン80』の予算は苦しかったと認めています(もともと前作の『ザ☆ウルトラマン』は、予算の都合で実写ではなくアニメになったという経緯があります)。最終回でウルトラマン80が変身して戦わなかったのは、予算不足だったせいという可能性もあるわけです。
その上で、満田監督は「最終回は悲壮な終わり方ではなく、とりあえず視聴者には、数年経ったらまたウルトラマンに会えるんだっていう期待感をもってほしかった」「当時はこれで終わりだという気持ちが薄かったというのが正直なところです。そういう意味では、僕たちの考えが甘かったというのはありましたね」と語っています(前掲書より)。この後、国内でのウルトラシリーズは、1996年の『ウルトラマンティガ』まで制作されることはありませんでした。
●ウルトラシリーズのテーマを継承、発展させた名作
風変わりなタイトルをネタにされがちな『ウルトラマン80』の最終回ですが、けっして内容が劣っていたわけではありません。
メインテーマに据えられたウルトラマンに頼り切ってしまう人類の依存心は、これまでのウルトラシリーズのなかで何度となく描かれてきました。『ウルトラセブン』の最終回で、「モロボシ・ダン」の正体が「ウルトラセブン」だと知った「キリヤマ隊長」は、「地球は我々人類、自らの手で守り抜かねばならないんだ!」と叫んで出撃します。『帰ってきたウルトラマン』の最終回に登場した「ウルトラ5つの誓い」には、「他人の力を頼りにしないこと」が含まれていました。
これらのテーマを発展させたのが、『ウルトラマン80』の最終回だったと言えるでしょう。矢的猛の奮闘によって、オオヤマキャップをはじめUGMの面々は自立の大切さを学びます。まさに「遠くの星から来た男が 愛と勇気を教えてくれる」という、主題歌の歌詞どおりです。
また、矢的が発した「広い意味では地球人も宇宙人です!」というセリフや、ウルトラマン80のこれまでの活躍を称えて矢的と涼子を円満に送り出す「お別れパーティー」に顕著に表れているように、宇宙人と地球人の友愛というウルトラシリーズにおける大きなテーマも、十分描かれていたように思います。
『ウルトラマン80』の最終回は、異色作ではありますが、実は優れた内容であり、名作と呼んでも差し支えないものだったと言えるでしょう。最後に、「ウルトラマン80」をはじめ素晴らしい主題歌の数々を作曲し、歌唱した元TALIZMANの木村昇さんに心から哀悼の意を表します。
(大山くまお)
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