ウルトラマンの「体の模様」意外と描きづらッ 「元ネタ」を知ると衝撃?
マグミクス / 2024年10月28日 7時25分
■ウルトラマンの赤いラインのモデルは、今も宇宙にあるのです
今より60年近く前の、1966年に放送開始された『ウルトラマン』の衝撃は、決して映画のような怪獣バトルがTVで視聴できるようになったから、だけではありません。なんといってもタイトルそのまま、「ウルトラマン」という圧倒的なヒーローが出現したからに他ならないでしょう。
今でこそ巨大ヒーローのスタンダードとして揺るぎない地位、パブリックイメージを獲得した初代ウルトラマンですが、そのデザインはなんともストイックで奇妙な美しさが漂っています。メタリックな銀色の下地に、流れるような赤いラインが特徴的であることは誰もが知っていますが、いざフリーハンドでその模様を再現してみようとすると、これが意外と難しいはずです。
単に筋肉のラインを強調しているようで腕、肩、胸部にかけて挟み込むように走る赤のうねりは、意外と複雑です。そもそも、「巨大な宇宙人のヒーロー」という参考モデルがほぼ存在しない時代に、いかにして次世代の古典ともいうべき、新しいスタンダードを生み出すことができたのでしょうか。
デザインを担当されたのは、彫刻家の成田亨さんでした。成田さんは主役のウルトラマンのみならず初期のウルトラ怪獣、メカ全般のビジュアルデザインを担当された芸術家です。
このウルトラマンが私たちの知る姿になるまでにも、紆余曲折を経るわけですが、その過程において成田さんはウルトラマンの身体に関して、「肌なのか服なのか分からないようにしてしまう」というコンセプトを打ち出しました。下地の銀色自体は、宇宙ロケットからの非常にシンプルな連想でもたらされたものです。それに加えて肌とも服ともつかないシンプルな美を追求した結果、たどり着いたのが……「火星の模様」でした。
ウルトラマンの肩や胸にかけて、すっと入ったあの独特の「赤いライン」は火星の模様、言ってしまえばウルトラマンには火星が描かれていたのです。もちろん火星は古くからSFにおいて重要なモチーフではありますし、実際『ウルトラマン』劇中においてもスペシウム光線のエネルギー源である物質「スペシウム」は、火星に存在しているという設定でした。
とはいえ、そんな火星の「模様」を新しいヒーローのデザインに落とし込んでしまう発想の柔軟性、そして実際にラインを引いたときの圧倒的な美的感覚はまさに天才の仕事としか言いようがありません。
なお、成田さんが1960年代にどういった資料や、火星のどの部分の模様を参考にしたのかは不明ですが、試しに火星の模様を検索して調べてみたところ……これがなかなかどうして、分かるような、分からないような……よくぞここからあのデザインを抽出できるものだと、文字通り「宇宙レベル」の創造性に脱帽してしまいます。
※主要参考文献:成田亨『特撮と怪獣: わが造形美術』(フィルムアート社)
(片野)
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