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楳図かずおさんが残した忘れられない言葉 「人間は死んだらどうなるの?」

マグミクス / 2024年11月5日 20時10分

楳図かずおさんが残した忘れられない言葉 「人間は死んだらどうなるの?」

■斬新なアイデアと緻密な絵柄で人気漫画家に

 人気漫画家の楳図かずおさんが、2024年10月28日に亡くなりました。享年88歳。葬儀はすでに関係者で済ませ、お別れの会が後日行われるそうです。

 1936年生まれの楳図さんは、奈良県の豊かな自然のなかで育ち、人間が闇夜やヘビなどに感じる根源的恐怖をモチーフにした数々の恐怖マンガで、子供たちを夢中にさせました。美しく、優しい母親が実は「へび女」だったという『ママがこわい』など、それまでの怪談噺とは異なる心理的な怖さがありました。『おろち』などの美少女を主人公にした作品も忘れられません。

 恐怖マンガだけでなく、ギャグマンガ『まことちゃん』も1970年代に大ヒットさせ、まことちゃんの決めゼリフ「ぐわし!」は流行語になりました。

 また、スケールの大きなSFマンガも、楳図作品の魅力でした。小学生たちが学校ごと人類滅亡後の未来にタイムスリップしてしまう『漂流教室』は、まさに衝撃作でした。『わたしは真悟』の主人公である悟と真鈴が東京タワーの頂上で奇跡を起こす瞬間は、マンガ史に残る名シーンでしょう。

■好奇心旺盛だった少年時代

 楳図作品は多くのクリエイターたちの創作意欲を大いに刺激し、映像化された作品も少なくありません。『楳図かずお恐怖劇場』(2005年)や楳図さん自身が脚本・監督を手がけた『マザー』(2014年)などが劇場公開される際に、吉祥寺にあった楳図さんの仕事場や赤と白のストライプデザインで評判だった「まことちゃんハウス」でインタビューする機会がありました。幼年期の思い出や漫画家になるために上京した際のエピソードは、とても興味深いものがありました。

 ひときわ印象に残っているのは、子供の頃に不思議に感じたことを大人たちに質問していたという逸話です。

「宇宙の果てはどうなっているの?」
「人間は死んだら、どうなるの?」

 子供なら誰もが思い浮かべるそんな疑問を、周囲の大人に尋ねたところ、きちんと答えてくれる人はいなかったそうです。大人になってからも楳図さんは宇宙の果てや死後の世界に関心を持ち続け、そうした想いを漫画にしたのが『14歳』だったそうです。

■「自分自身が科学者や神様になる」

衝撃の結末が描かれる、楳図かずお氏の『14歳(フォーティーン)』1巻(小学館)

 地球が終わりのときを迎え、人類は選ばれた子供たちを宇宙船「チララノザウルス号」に乗せ、人類の未来を託します。宇宙を流浪した「チラノザウルス号」は、物語の最後に驚愕のエンディングを迎えることになります。

 楳図さんいわく「子供の頃の疑問に大人たちが答えてくれなかったので、それなら自分が描くマンガの世界で自分自身が科学者や神様となって、その答えを導き出してやろうと思った」そうです。楳図さんにとって最後の長編マンガとなった『14歳』は、子供の頃の自分自身に、大人になった楳図さんがありったけの知識と想像力で答えてあげた作品だったわけです。

「宇宙の果てがどうなっているのかについては『14歳』でまぁ描けたと思っていますが、人間が死んだらどうなるのかまでは描けなかった」とも語っていました。楳図さんは持ち前の旺盛な好奇心と巧みなペン遣いで、天国の様子をスケッチしているところなのかもしれません。

 楳図さんの冥福を、心からお祈りします。

(長野辰次)

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