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任天堂はスイッチ後継機への移行、SIEは独占タイトルの充実…ゲームメーカー2強「異なる課題」

マグミクス / 2024年11月9日 11時10分

任天堂はスイッチ後継機への移行、SIEは独占タイトルの充実…ゲームメーカー2強「異なる課題」

■スイッチ後継機に立ちはだかる、ふたつの課題

 家庭用ゲーム機の展開は時代とともに変化し、今日までさまざまな動きを見せてきました。特に任天堂とソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)は、国内を代表する家庭用ゲーム機のメーカーとして、互いに切磋琢磨を続けています。

 任天堂は「Nintendo Switch」(以下、スイッチ)の後継機に関する発表が随時行われており、一方のSIEは「PlayStation 5」(以下、PS5)のハイエンドモデル「PlayStation 5 Pro」(以下、PS5 Pro)が2024年11月7日に発売されたばかりで、どちらも最新ハードに関する動向に注目が集まっています。

 二大巨頭として比較されることも多い両社ですが、ゲームハード戦略において、それぞれがいま向き合うべき課題は意外なほど異なっています。任天堂とSIEの前に立つ異なる壁は、それぞれどのような様相を呈しているのでしょうか。

●「スイッチ」で大きく飛躍した任天堂

 スイッチの活躍が7年以上も続いたいま、任天堂が向き合う大きな壁のひとつは、まさにそのスイッチに他なりません。現行のゲーム機が人気を集め過ぎると、次世代への移行の障害となる場合もあり、スイッチの前世代機「WiiU」はまさにその典型例でした。

 2006年に発売され一大ブームとなった「Wii」は1億163万台の販売実績を持ち、その記録はスイッチに次いでいます。しかし、WiiユーザーをWii Uへ移行させる狙いはどうにもハマらず、2012年発売のWii Uの販売台数は1356万台止まりという結果に。任天堂が独占タイトルを投入しても、人気ハードからの切り替えは至難の業でした。

 スイッチから後継機への移行が、任天堂にとって大きな課題となるでしょう。いまが好調だからこそ、乗り越えるべき壁も高く立ちはだかります。Wii Uの二の舞は絶対に避けねばなりません。

●「安くて低性能」「高いけど高性能」どちらでも不満が出るのは必須?

 スイッチ後継機における価格設定が、任天堂がまず重要視すべき課題です。2017年発売当初の価格は29980円(税抜き)でした。スイッチが普及した背景には、買いやすい低価格路線という理由もあります。ユーザー心理として、後継機の価格も可能な限り抑えて欲しいと願う声が多いのも当然でしょう。

 一方で、スイッチの性能面に不満を感じている人も多く、後継機はできるだけ高い性能を求める声もあります。しかし、性能が向上すれば価格が上がるのは必然。ゲーマー層なら値上げも受け入れられやすいものの、カジュアル層やファミリー層からの支持は失うかもしれません。

 後継機の価格を、スイッチと同程度の3万円ほどに抑えられるのか。多少の値上がりをやむなしとして4万円付近に収めるか。円安や世界的な値上げ傾向を踏まえ、5万円台やそれ以上に踏み込むのか。任天堂がどの路線を選んでも、いずれかの層から不満が出る可能性があります。

 ただし、ライバル機PS5の値上げ、約12万円という価格設定のハイエンドモデルPS5 Proの登場により、価格の高騰を実感している人も多いため、スイッチ後継機が多少高くなっても理解を得られやすいかもしれません。

■スイッチと全く異なる課題を持つPS5

2023年頃にようやく供給が追いつき、誰でも買えるようになったPS5。それから2年近くが立ち、いまは購入意欲をいかに後押しするかが課題だ。

●「PS5」は性能とコストのバランスが優秀

 一方のSIEは、2020年発売のPS5が高まる需要に供給が追い付かず、2年ほど入手難が続きました。この機会損失は痛手で、普及に大きな足止めがかかります。また、転売目的と疑われるオークションサイトへの出品が相次ぎ、消費者心理に悪影響を与えた点も、SIEにとっての逆風でした。

 そうした苦難を乗り越え、2023年頃からPS5本体を予約や抽選なしで購入できる状況になりました。円安の影響を受けて段階的な値上げも行われたものの、現状の価格でも同程度の性能を持つゲーミングPCと比べて価格は抑えめで、コストパフォーマンスの良さは、いまも変わることはありません。

 またPCとの比較でいえば、拡張性や多機能性で敵わない点はあるものの、統一規格の強みで安定性が保証されています。PCは個々人で環境が細かく変わるため、推奨スペックを満たしていても、エラーやトラブルの可能性は家庭用ゲーム機と比べて高めです。

●購買意欲に結びつく「独占タイトル」の確保が急務

 安定した流通、ゲーミングPCと比べて良好なコスパ、高性能と安定性の適度なバランスと、PS5の強みも明確となりました。そんなPS5とSIEが向き合うべき課題はいくつかありますが、ユーザー視点で最も求められているもののひとつは、独占タイトルの充実です。

 これまでSIEも、自社販売の作品も含めた独占タイトルの確保に注力してきました。直近では、『Rise of the Ronin』や『アストロボット』など効果を上げたタイトルもありますし、世界的な大ヒット作も生まれました。しかし、長く愛され続けるシリーズ展開として見た場合、任天堂ほどうまくいっているとは残念ながらいえません。

 2025年には、『Ghost of Yotei』や『Death Stranding 2 On The Beach』が、PS5専用ソフトとして登場します。後日PCなどに展開する可能性もありますが、こうした完全独占または時限独占のラインナップを充実させていき、「このゲームをPS5で遊びたい」とユーザーに思わせることができるかどうかが、大きな分かれ目となるでしょう。

* * *

 いまも人気の高いスイッチから後継機に向け、ユーザーをうまく移行できるのか。また、「性能」と「低価格」という両立の難しい要望に、どのような答えを出すのか。好調な任天堂だからこそ、次に乗り越える壁は高いものになっています。

 PS5が発売されてからまだ4年ほどなので、SIEはまだしばらくPS5を主軸に戦うことになるでしょう。ようやく普及は進んだものの、独占タイトルの弱さは否めず、いかに層を厚くするかが大きな課題です。

(臥待)

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