『ヤッターマン』詫びない懲りない諦めないドロンボー一味の迎えたちょっと切ない結末
マグミクス / 2024年11月17日 21時5分
■タイムボカン」シリーズの中でも随一の人気作
1977年から79年にかけて放送されたTVアニメ『ヤッターマン』は、「タイムボカン」シリーズの第2作として制作され、2年で全108話が放送される大ヒット作品となりました。その後は「タイムボカン」シリーズ中で唯一リメイクや劇場化が行われるなど、絶大的な人気を長く保ち続けています。
『ヤッターマン』の何が心を引き付けるのでしょうか。
まず子供たちに受けたのが、ヒーローが男女ペアだったことでしょう。おもちゃ屋の息子である「ガンちゃん」とガールフレンドの「アイちゃん」がともに「ヤッターマン」へ変身して悪と戦う姿は、男の子にとっても女の子にとっても極めて魅力的な存在となりました。
当時のアニメでは女性の活躍も目立つようになってきてはいましたが、まだサポート要員的な役柄にとどまることも多く、完全に対等なヒーローペアはそれほど多くはありませんでした。家にTVが1台しかない家も多く、子供の数も今よりずっと多かった時代、男女ともに楽しめる作品は貴重だったのではないでしょうか。
次に地球のどこかにあるお宝を探して駆けまわる冒険譚は、子供心をくすぐる魅力を備えていました。ストーリー的にも世界の七不思議や児童文学のパロディなど、なんとなく知っている親しみのある題材だったのも見逃せないポイントでしょう。
そして「ヤッターワン」「ヤッターキング」をはじめとする多種多様なメカが毎週のようにお茶の間を賑わせてくれていたのも大きいでしょう。特にヤッターワンが敵のメカと相打ちになり、「これからどうなるんだろう?」と不安を感じていた子供にとって、翌週登場したヤッターキングの強さと迫力は忘れがたいものがあるのではないでしょうか。
また、メカの素を食べたときにどんなメカが出てくるのか、今週は搭載している小型のヤッターメカのどれが出てくるのかなど、ランダムな楽しみがあり大きな魅力となっていたのも重要です。
もちろん、ヤッターマンたちの敵となる悪党、「ドロンボー一味」の魅力も見逃せません。スタイル抜群で頭脳明晰な女ボス「ドロンジョ」、頭脳担当の「ボヤッキー」、パワー担当の「トンズラー」と、前作『タイムボカン』のフォーマットを踏襲してはいるものの、人気や知名度で言えばドロンボー一味の方が上といえるでしょう。悪事を働いているのにどこか真面目で、何度負けても決してくじけず仲間と共に何度でも立ち上がるその姿に心ひかれた方も多いのではないでしょうか。
■ヤッターマンの最終回、覚えていますか?
2008年のリメイク版も、ドクロベエとドロンジョ様たちドロンボー一味はオリジナルキャストが務めた。「ヤッターマン7」DVD(松竹)
さて、そのような『ヤッターマン』の最終回となる第108話「アワテルローの戦いだコロン」は、序盤から不穏な空気が立ち込めています。ドロンボー一味の三悪がいつものようにインチキ商売の準備をしていたところ、ドロンジョが、毎回謎の人物「ドクロベー」から「ドクロストーン」目当ての無理な指令を押し付けられてはヤッターマンにやっつけられる生活が嫌になった、新しい人生を生きるんだわ、とボヤキ始めます。
とりあえず来週からはボヤッキーがボスになることにして、いつも通りにインチキ商売で稼いだ金でメカを作り、ドクロベーからの指令に従い、ブランス国の皇帝、チビレオンの持つ辞書を手に入れるため、アワテルローの草原に出発したのでした。
すったもんだの挙句、三悪はドクロストーンはアワテルロー博物館の地下にあることを知ります。そこにヤッターマンが駆け付け、これが最後とばかりに大量の「メカの素」を使用、次々と現れるメカの前に、三悪のメカは簡単に破壊されてしまいました。
ボロボロになりながらもかろうじて博物館にたどり着き、三悪はドクロストーンを発見するも、ここで重大な事実が発覚します。実はドクロベーは宇宙人であり、ドクロストーンは彼の体の一部だったのです。最後のドクロストーンを見つけ、完全体となったドクロベーは宇宙へと帰ってしまい、三悪は置き去りにされてしまいました。
目的を失った三悪はそれぞれに別れを告げ、どこかへと立ち去って行きました。子供心にも、少々ビターなエンドだったと思えます。もっとも、三悪のたどる3つに分かれたはずの道はすぐにひとつになっていたので、もしかしたら再び合流したのかもしれません。
余談ではありますが、2008年に放送されたリメイク版の最終回では、旧作同様、3つに分かれた道をそれぞれが進んでいくものの、最終的にはこの3人が分かちがたい絆で結ばれていることがはっきりと示されています。
すでにドロンジョ様役の小原乃梨子さん、ボヤッキー役の八奈見乗児さん、トンズラー役のたてかべ和也さんの全員が鬼籍に入られてしまったのは残念極まりありませんが、もし旧作の最終回に寂しさを感じたことがあるならば、ぜひリメイク版の最終回を一度、観ていただければと思います。
(早川清一朗)
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